表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】加護なしの第八王女は、前世が社畜だったので王宮生活がイージーモードにしか見えない  作者: 茨木野


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/64

58.



 城下町の広場には、野次馬の人だかりができていた。

 その中心では、恰幅のいい商人が若い青年の胸ぐらを掴み、顔を真っ赤にして怒鳴り散らしている。


「この魔法薬は最高級品だぞ。ぶつかって落としたのだから、金貨十枚払えっ」

「そ、そんな。あなたが急に飛び出してきたんじゃないですか」


 青年が青ざめた顔で抗議するが、悪徳商人は聞く耳を持たずに凄む。

 その騒ぎの中心へ、巨大な影が音もなく割って入った。


「騒々しいな」


 ギデオンが低くドスを効かせた声を放つと、その圧倒的な威圧感に周囲が静まり返る。

 商人はギデオンを見上げて一瞬怯んだが、すぐに強気な態度を取り繕った。


「なんだ、お前はっ。すっこんでろっ」


 商人の罵声を無視し、ギデオンは足元に散らばった割れたガラス瓶を拾い上げる。

 そして、こぼれた液体の匂いを嗅ぎ、鼻で笑った。


「ふん。これが最高級品だと。笑わせるな」

「な、なんだと」


「本物の一級品は、もっと鼻を突く強烈な刺激臭がし、深い剣傷すら一瞬で塞ぐ。俺は最前線で幾度も死にかけて、本物を嫌というほど浴びて飲んできた。歴戦の戦士の嗅覚をごまかせると思うなよ」


 ギデオンはただの大きな男ではなく、最前線に立ち続ける皇帝である。

 書面のデータではなく、実体験による圧倒的な説得力がその言葉には宿っていた。


「これはただの薬草を水で薄めた粗悪品だ。詐欺の疑いがあるな」

「ひぃっ」


 顔面蒼白になる商人の前に、騒ぎを聞きつけた街の衛兵が駆けつけてくる。

 ギデオンは懐から皇帝の紋章が刻まれた身分証をチラリと見せ、冷たく言い放った。


「こ奴を連行して調べろ」

「は、ははっ」


 商人は泣き叫びながら連行され、助けられた青年は何度も頭を下げて去っていく。

 いつもならミシェルが法律とデータで論破する役目だが、今回はまったく出番がなかった。


 ギデオンはこれ見よがしにドヤ顔を浮かべ、ミシェルの元へと戻ってくる。


「ふん。どうだ」


 褒められたそうに胸を張るギデオンを見上げ、ミシェルは少しだけ目を丸くした。

 そして、素直に感心したように口角を上げる。


「なんだ。ただの大きな子供かと思っていましたが、頼れるところもあるんですね」


 ミシェルから初めて送られたデレの言葉に、ギデオンは最高潮にウキウキと目を輝かせた。


「ふははっ。そうだろう、そうだろう。さあ、もっと俺に惚れていいぞ」


 調子に乗ったギデオンが、大きな腕を広げてミシェルに抱きつこうとする。

 しかし、ミシェルはスッと無表情でその体を躱し、氷のような目を向けた。


「前言撤回します。やはりただの大きな子供でした。帰りますよ」

「えっ」


 ミシェルはスタスタと、またいつもの速足で先へ歩き出してしまう。

 木箱の陰から覗き見していた尾行トリオは、深くため息を吐いた。


「せっかく上がった好感度が、一瞬で元通りですぅ」


 ティルが長い耳をパタパタと揺らし、一人取り残された哀れな皇帝に同情するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
(´・ω・)どっちもどっちやな… (´・ω・)↓の人も書いているけど、あんまり繰り返すとウザくなるので程々にお願いいたしたいです。
〉初めて送られたデレの言葉 そんな言葉どこに? おい、衛兵 地の文に詐欺の疑いがあるぞ 連行して調べろ!
最近皇帝のバカさが、バカワイイよりもウザいにシフトしつつあります。 一歩進んで二歩下がっていたら一生前には進みませんが、作者様は一体この2人をどうするつもりなんでしょう?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ