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【連載版】加護なしの第八王女は、前世が社畜だったので王宮生活がイージーモードにしか見えない  作者: 茨木野


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40/56

40.


 監視塔の奥深く、重厚な扉の向こうからは下品な笑い声と、脂の乗った肉を焼く匂い、そして安酒の甘ったるい香りが漂っていた。

 看守たちや、ここを任されている兄王派閥の貴族が、豪勢な食事を囲んで宴会を開いているのだ。


 鼓膜を震わせる轟音と共に、ギデオンが分厚い木製の扉を蹴り破った。

 粉々になった扉の残骸が室内に吹き飛び、宴の席は一瞬にして静まり返る。


「なんだ貴様らは。ここは魔導王陛下の直轄地だぞ」


 顔を真っ赤にした貴族が、酒杯を床に叩きつけて立ち上がった。

 ミシェルは静かに足を踏み入れ、部屋に充満する酒の匂いに小さく眉をひそめる。


 彼女は王城から持ち出した資料の束と、部屋の隅の机に無造作に置かれていた帳簿を、氷のような冷たい目で見比べた。


「王弟殿下の食事代として国から下ろされた予算の九割。そして、ここに配置されるはずだった警備兵百名分の給与。すべて貴方たちの懐に入っていますね」

「なっ……」


「さらに、地下で採掘させた魔石を裏ルートで横流ししている。書類の数字を見れば、貴方たちがどれだけ私腹を肥やしているか一目瞭然です」


 ミシェルが兄王派閥の不正と悪事を、データからすべて完璧に言い当てる。

 彼女の冷徹な声が、水を打ったように静まり返った室内によく響いた。


 隠していた悪事をすべて暴露され、貴族と看守たちは顔を醜く歪めて逆上する。


「ええい、黙れっ。ここで殺して口を塞げば証拠は残らん。やれっ」


 貴族の号令と共に、看守たちが一斉に杖や武器を構えた。

 ごうっ、と空気が焼け焦げるような音を立てて、無数の攻撃魔法がミシェルに向けて放たれる。


 熱風が頬を撫でる中、迫り来る魔法の豪雨に対し、ミシェルは一歩も引かず、瞬きすらしない。

 その直前、ギデオンがミシェルの前にふわりと立ち塞がった。


「ふん。遅すぎる」


 ギデオンが面倒くさそうに片手を軽く振るう。

 たったそれだけの動作で、すべての魔法が飴細工のように弾け飛び、凄まじい衝撃波となって看守たちに跳ね返った。


「ぐああっ」


 看守たちは為す術もなく吹き飛ばされ、石造りの壁に叩きつけられて次々と気を失っていく。

 圧倒的な力の差による、文字通りの蹂躙であった。


 あっという間に敵が全滅し、詰め所は再び静寂に包まれる。

 貴族は腰を抜かし、口から泡を吹いて気絶していた。


 ギデオンは振り返り、ミシェルの細い肩を力強く抱き寄せて自慢げに笑う。


「俺が、お前を守ってやる。安心しろ」

「ええ。物理的な防衛に関しては、貴方を信頼していますよ」


 呆れつつも、ミシェルが珍しく素直に言葉の綾で肯定した。

 ギデオンはさらにご満悦な表情を浮かべ、喉の奥でくっくと機嫌良さそうに笑うのだった。


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― 新着の感想 ―
女帝と犬
この皇帝…回を重ねるごとに可愛くなるのはナゼ?(笑)
ひとこと・・・魔法って物理なの?
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