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【連載版】加護なしの第八王女は、前世が社畜だったので王宮生活がイージーモードにしか見えない  作者: 茨木野


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38.



 そこからの展開は早かった。

 ミシェルが次々と突きつける致命的な不正の証拠と、ギデオンが放つ圧倒的な魔力の威圧。


 これらによって、現・魔導王派の貴族たちは完全に戦意を喪失した。

 彼らの勢力は瞬く間に削ぎ落とされ、王城は静かな制圧下へと置かれることとなる。


 焦げたオゾンの匂いが立ち込めていた謁見の間で、大賢者ピクシーは細い手首をさすりながら深く息を吐き出した。

 魔封じの冷たい鎖から解放された彼女は、丸眼鏡の奥の紫色の瞳を伏せる。


「助けてもらった恩は返したい。だが……長年教え子たちと過ごしたこの故郷が腐っていくのを、黙って見捨てて出ていくことはできないよ」


 小さな背中には、国と教え子を愛する者としての強い葛藤が滲んでいた。

 ミシェルは感情の読めない声で淡々と告げ、冷たい石の床を見つめる。


「ならば、この国の清浄化を図るべきですね」


 腐ったトップを取り除いた以上、新たな頭を据えるのが最も効率的だ。


「ほかに王族はいないのですか」

「いる。王弟が」


 ピクシーは顔を上げ、すがるような視線を向けた。


「王弟は私の私塾の出身でね。亜人や半魔への差別意識を持たない、立派な青年だ。彼になら、この国を任せられる」

「しかし、現政権に異を唱えたことで反逆者として捕まってしまってね。今は行方知らずなんだ」


「なるほど。ティル、王城の内部資料をすべて集めなさい」

「はいっ。すぐにお持ちしますぅ」


 ティルがパタパタと長い耳を揺らして走り回り、押収した大量の帳簿や書類の束を、豪奢な机の上に次々と積み上げていく。

 カサカサと乾いた羊皮紙の擦れる音と、古いインクの埃っぽい匂いが周囲に漂い始めた。


 ミシェルは瞬きすら惜しむような速度で、膨大な資料に目を通していく。

 隣ではティルが凄まじい勢いで計算魔道具を弾き、各部署の予算の流れから生じる微かな数字の矛盾を洗い出していた。


「見つけました。過去三年間、北の辺境にある放棄されたはずの監視塔へ、定期的に不自然な食料と厳重な警備兵の配置予算が割かれています」


 ミシェルは一つの束を抜き出し、ピクシーの前にことりと置いた。


「王弟の幽閉先はここですね」


 魔法も使わず、ただの紙の束から王弟の正確な居場所を特定してみせた。

 ピクシーは丸眼鏡をずり落ちそうにしながら、目を丸くして驚愕する。


「君は……名探偵かなにかなのかい?」

「いいえ。ただの加護なしの、第八王女ですよ」


 ミシェルが淡々と名乗った、その時だった。

 隣で腕を組んで黙っていたギデオンが、すかさずミシェルの細い肩を力強く抱き寄せた。


「フッ。俺の、女だ」


 最高に得意げなドヤ顔を浮かべ、皇帝が堂々と宣言する。

 緊迫した空気などお構いなしの過保護な振る舞いに、ミシェルは疲れたように深くため息をついた。


「はぁ……」


 呆れ返るミシェルの横で、ギデオンはご満悦な笑みを深めている。

 圧倒的な武力と知力を持ち合わせ、どこまでもマイペースな二人を前にして、ピクシーは呆れたように苦笑いを浮かべるのだった。


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― 新着の感想 ―
帝国だもの、侵略したっていいよね。 相手が悪党なら、国のトップをボコってもかまわないのさ! 現実世界でも相手を「悪の枢軸」と呼んで、原爆を落としたり、毒薬を撒いたりやらかした国があるじゃないですか。 …
やっていることは、内政干渉か侵略なのですが・・・。
ドヤ。
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