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【連載版】加護なしの第八王女は、前世が社畜だったので王宮生活がイージーモードにしか見えない  作者: 茨木野


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33/56

33.

 天蓋付きのふかふかとしたベッドの上。

 薬品の微かな香りが漂う室内で、宮廷医のフローラが呆れたように息を吐いた。


「ちゃんと休まないと、元気になれないわよ」


「……休めと言われても」


 ミシェルは重い体を寝返らせ、ぽつりとこぼす。

 頭の奥には鈍い痛みが居座っており、熱っぽい視界が揺れていた。


「あの人を一人にする方が、よっぽど元気になれません。不安です」

「陛下はバカですから。私がいない間に、勝手に何かされても困るのです」


 トップへの圧倒的な不信感を口にすると、部屋の扉が静かに開いた。


「お前がそう思って不安がると思ってな。ちゃんと側にいてやるぞ」


「はぁ。そう」


 堂々と入室してきたギデオンは、宣言通りベッドの脇に椅子を引き、どっかりと腰を下ろした。

 しかし、彼は本当に何もしない。ただじっと、射抜くような赤い瞳でミシェルを見つめ続けている。


「何をしているのですか」

「お前を見ている」

「何が楽しくてそんなことを」


「お前を見ていると飽きないからな」

「そうですか」


 ミシェルは冷淡に返し、ぷいっと視線を逸らした。

 静寂が落ちる中、彼女の頭は自然と未処理の事務作業へと向かっていく。


(ティルもいるし、事務は大丈夫でしょう。でもやっぱり、人手が足りないですね。大丈夫かな……)


「何を考えている」


 不満げな低い声が降ってきた。

 ミシェルは視線を戻さずに淡々と答える。


「ティルのことを」

「俺のことを考えてくれ」

「はぁ? なんで」


「貴方はそこにいるではないですか」

「お前な……」


 目の前にいるのに別の部下のことを考えるミシェルに対し、皇帝はあからさまにガックリと項垂れて拗ねている。


 やがて、昼食の時間になった。

 ギデオンは一度部屋を出て、しばらくすると自信満々な足取りでお盆を運んできた。


「昼ご飯、作ってきたぞ」


 カチャリとサイドテーブルに置かれた皿を見て、ミシェルの思考が停止する。

 焦げた匂いと謎の酸味が混ざった空気が漂い、そこにはドロドロのボロ布のような、黒い物体が乗っていた。


「なんですこれ。ごみ?」

「ふっ」

「食事もまともにつくれないのですか」


 ミシェルの容赦ない言葉に、ギデオンは不機嫌に眉をひそめた。


「ならいい。捨てる」

「なんで捨てるのですか。もったいない」


 取り上げようとする大きな手を制し、ミシェルはスプーンで黒い物体を掬い、躊躇なく口に運んだ。

 舌に触れた瞬間、強烈な苦味と得体の知れない食感が広がる。


「……ほんとに不味いです」


「ふっ。当然だ。料理なんて作ったことはないからな」

「じゃあなんで作ったんですか」

「お前のために決まってるだろうが」


 ぶっきらぼうな口調の中に滲む不器用な本音に、ミシェルは小さく息を漏らした。

 なんだかんだと言って、彼は彼なりに看病をしようとしてくれているらしい。


「早く元気になってくれ」

「ええ。国のために」


「俺のために、だ」

「えっ」


 真っ直ぐに求められ、ミシェルは小さく目を丸くした。

 胸の奥にポカポカとした温かい感情が広がり、強張っていた全身の力がふっと抜けていく。


「なんだか、眠くなる」


 ミシェルは静かに目を閉じ、今度こそ安心して深い眠りに落ちていくのだった。

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― 新着の感想 ―
安静にしないから一服(睡眠薬)盛ったのか。 悪徳役人ならこれがチャンスだと思うだろうね。
スヤァ
アレ?!(・◇・;) ?皇帝陛下・・ 最初ゎ何か凄~く出来る感じでしたょね? ーー最初から読んでみたーー >『「俺は、できる奴が大好きだ」』 ↑↑↑やっぱり出来る感じ?ですょね? >『「『剣の…
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