7/9
花火
ホシミは、少しずつ力が弱くなってきた体で山を目指して飛んでいた。
ぴとぴと、もぞもぞ——
羽はもう、朝のように軽くは動かない。
でも、胸の奥には「見たい」という思いがまだ残っていた。
夜の森は静かで、風が肌をなでる。
草の匂い、土の匂い、遠くの花の香りも、昼間よりしっかり感じられる。
空は少しずつ暗くなり、星がちらちらと瞬きはじめた。
そのとき、突然、森の向こうから大きな光と音がやってきた。
パーン、ドーン——
花火の音が空を震わせ、夜空に大きな光の花が咲いた。
ホシミは驚いて羽を広げる。
光がまぶしくて、風が強く吹いて、胸がドキドキする。
でも、その一瞬、一瞬が、体の奥までじんわりと温かかった。
空に咲く光の花を、ホシミは必死に追った。
届きそうで届かないけど、光の温もりが体に残る。
音は胸を揺らし、匂いは夜の森に混ざり、風は羽を軽く揺らす。
ぴとぴと、もぞもぞ——
もう長く飛べないかもしれない。
でも、こんなにきれいな光景を、目に焼き付けられるだけでいい。
ホシミは小さく笑った。
「……きれい、ありがとう」
花火はあっという間に消えてしまう。
でも、その美しさと温もりは、確かに心の中に残った。
空に輝く光と、森の匂い、風の感触——
短い命の中で、ホシミは世界の美しさをまたひとつ知ったのだった。




