山彦
朝露のきらめきに胸をふるわせながら、ホシミはゆっくり森の中を進む。
ぴとぴと、もぞもぞ。
羽はまだふにゃふにゃで、飛ぶのはもう少し先のこと。
森は、生まれて初めて体験する音や匂いであふれていた。
小鳥のさえずり、葉っぱを揺らす風の音、遠くで流れる水の音。
湿った土の匂いに混じって、花や草の香りがふんわり漂う。
ホシミは、ちいさな声で
「きゅ…」と鳴いてみた。
すると、森の奥から、同じ声がポーンと返ってきた。
「きゅ…!」
びっくりして、ホシミの羽がふるえる。
体は小さくても、心はぱちぱち弾けそうだった。
でも、どうしてももう一度、声を返してみたい。
「きゅ…!」
今度は少し強めに、胸いっぱいで鳴いた。
すると、また返ってきた、今度は少し長く、ポーン…ポーン…。
ぴとぴと、もぞもぞ。
びっくりと嬉しさが同時に押し寄せて、ホシミは小さく笑った。
枝に触れ、葉をくぐり、土の上をそろそろ歩く。
風が頬をなでるたび、羽がかすかにふわりと揺れる。
森の匂い、光、音——すべてが新しい発見だった。
ホシミの胸には、まだまだ小さな冒険への好奇心が膨らむ。
でも慎重さも忘れない。
ぴとぴと、もぞもぞ——
まだ小さいけれど、確かにこの世界に、わたしはいる。
森の奥深くから、再び山彦の声が返ってくる。
ホシミは耳をすませ、そっと笑った。
「…もっと、この世界を知りたい」




