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プロローグ
― 土の中のホシミ ―
土の中は、いつもしっとりしていた。
ひんやりとして、やわらかくて、少しだけ重たい。
ホシミは、土の小さなすきまに、ぴっとりと体を寄せていた。
茶色の体に、細かな土のつぶがついている。
動くたびに、ぴとぴと、もぞもぞ。
それが、ホシミの知っている世界の音だった。
においは、雨のあとみたいなにおい。
つめたくて、あんしんするにおい。
ここは暗くて、何年も変わらない場所。
ホシミは、この暗さがきらいではなかった。
けれど、ときどき。
ほんのときどきだけ、土の上の世界が気になることがあった。
ある夜。
土のすきまから、ちいさな光が見えた。
それは、遠くて、つめたくて、でもやさしい光。
ホシミは、目をこらして、じっと見つめた。
「……ほし」
声に出すと、土がふるえた。
そのひびきが、ホシミの体に戻ってくる。
ぴっとり、ぴっとり。
まだまだ、まだまだ。
ホシミは、土に体をあずけながら、思った。
あの光が、いつか動いたら。
空を走ったら。
それを、近くで見てみたい。
土の上の風の音も、
光のあたたかさも、
まだホシミは知らない。
それでも、胸の奥に、ちいさな願いが生まれた。
「いつか、ながれる星を見たい」
土の中で、時間はゆっくり、ゆっくり積もっていく。
ホシミは今日も、ぴっとりと、夢を抱いて眠る。




