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冤罪令嬢と青い死神の逆襲  作者: 崖淵


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82/82

第82話 エピローグ

今日は私とソフィエの結婚式である。

この二人の結婚式はオラニエの王宮を使用することになった、王族でもないのに。先日まで行われていた戦争の英雄である私の結婚を国威高揚に使いたいということで、王宮は使わせてやるし費用も出してやるから、宣伝に使われろということのようだ。わずらわしいが、仕方ない。あとで説明する褒賞とセットのようだから。


それで先程まで謁見の間を使って結婚式をしていた。そして国民へ披露するため、これから王宮のテラスに移動する。

私の隣には自慢のマリンブルーの髪をまとめ、純白のウェディングドレスを着た花嫁ソフィエが私の腕をとり、ともにゆっくりとテラスへと進んでいる。いまさら説明するまでもないのだが、私の花嫁ソフィエはとても美しく、列席者はみなその美しさにため息をついていた。それらの反応は私を十分に満足させたが、同時に独り占めしたいという感情を抑えるのに苦労した。

一方で私はマリンブルーのシャツにダークブルーのタキシードという完全にソフィエカラーと言った格好だ。ソフィエに言わせると、それはソフィエカラーではなく青い死神の色らしいが、青い死神の由来を考えれば同じようなものだと思う。

そして私たちの後ろには、先程から男泣きしている辺境伯閣下とそれを見て苦笑する辺境伯夫人であるアメリア様がついてきている。

王宮テラス前までくると、一旦この行列の歩みは止まった。美しい妻の顔を窺うと、ソフィエは私の腕をとったままにっこりとほほ笑んだ。



生かしたまま前王太子ヘンドリックを捕らえたことは大きかったのだろう。あの後ヘンドリックは王都に連行され、文武百官が居並ぶ中で国王に断罪された。国王はクーデター時に命からがら議会から逃げ出す羽目になったが、大いにその留飲を下げたようだ。その後ヘンドリックは王宮前広場で公開処刑となった。

その最期は鼻水を垂らしながら泣きわめき、とても醜いものだったらしい。国王に弓を引き、国を売った愚か者として、その首は今もなお王都で晒されている。

王都民にとっても、この戦争は物価高を引き起こし、難民を王都に押し寄せさせることになり治安を悪化させた。そのためこの戦争の原因となった前王太子には思うところがあったようで、晒された首に対して石を投げつける市民が結構いたようだ。


戦争の方は、その後オラニエ王国軍は、ブリティッシュ王国軍とくつわを並べてリーレを包囲。

一か月後、リーレは無血開城した。フランティエは南でブランデリック帝国とも戦っており、あくまでも本命はそちらなのでブリティッシュ王国も参戦した今、北は諦めてくれたようだ。

ブリティッシュとしても特に兵の損失がなく望んだ局面が訪れたことで、当初どおりの報酬で手を打ってもらえたようだ。


そして戦後処理だが、驚いたことに私こと騎士ディルクは、その活躍により伯爵位と大都市リーレを賜わうことになった。

とてもありえないことではあるが、フランティエ侵攻という現実に起きた脅威の前に、フランティエが畏怖するライデンの青い死神をフランティエとの最前線に置きたかったのが第一要因だろう。私が生きている間はフランティエもオラニエ侵攻を躊躇するだろうと。

そしてリーレは北に目を向ければ、ブリティッシュ王国唯一の大陸拠点であるククレカレーの都市がすぐそこにある。このフランティエ戦役においてブリティッシュ王国の参戦は非常に大きな役割を果たした。そしてブリティッシュ参戦を促した試金石は私ということになっており、ブリティッシュと仲が良いのもこのリーレ防衛には一役買うであろうことも期待されている。


フランティエとの戦いで、私が圧倒的な戦功を挙げたのは誰もが認めるところだ。その上、謀反人である前王太子まで捕縛している。これだけの戦功があればこの褒賞も当然……と言いたいところだが、それでも一介の騎士が一気に伯爵位を賜るのは異例なことだ。むしろあり得ないと言ってもいい。

しかしここで忘れてはならないのが、前王太子ヘンドリックが婚約破棄で迷惑をかけた辺境伯令嬢ソフィエへのお詫びが、王家より謝罪こそ行われたものの戦争によって延びてまだ済んでいなかったことである。

私が伯爵になることにより、大貴族の第一夫人は難しいとされていたソフィエが伯爵の第一夫人となることができる。この点がなければ、私が伯爵位になることはなかったかもしれない。

大貴族である伯爵位と大都市リーレが与えられることに対して、やっかみの声が無いわけではなかったが、フランティエの最前線という地政学上の問題点を考えると、反対の声は思ったより大きくなかった。

噂通りの強兵っぷりを見せたフランティエの最前線、その矢面に立って防衛する。そんなのは普通に考えれば誰だってゴメンだからだ。


あとは結果的に謀反人となった前王太子を支持しフランティエ侵攻を許すことになったデルフト公爵家は、リーレ失陥後の戦争で非協力的であったことや、決定的な証拠こそ出なかったものの謀反人ヘンドリックがフランティエに走るのを陰ながら支援していたとの証言もあり、リーレの没収と侯爵位への降格が言い渡された。




儀仗兵がテラスの扉を開けたのを合図に、ソフィエとともにざわめきが聞こえてくる白亜の王宮のテラスに出る。すると、雲一つない青天の空に一斉に白い鳩が放たれた。私たちの姿が観衆の視界に入るようになると、爆発的な喝采と拍手が起こった。

前方を見れば、十万人以上と言われている観衆が集まっており、口々に私たちの結婚を祝福してくれているようだ。私たちは観衆の祝福に応え、手を振るとまた一段と大きな拍手が起きた。

その後、右に国王、左に先日皇太子となった第二王子に挟まれ、国王によるスピーチが始まる。


「えー、見てのとおりオラニエの英雄が今日、めでたく結婚した。今回あのフランティエ軍を寄せ付けなかったように、これからも彼ら英雄たちが最前線でオラニエ王国を守ってくれるだろう。我々も枕を高くして眠れるというものだ……」


国王のスピーチはまだ続いている。

すると横からつんつんと腕のあたりをつつかれた。その犯人を見ると純白のウェディングドレスに包まれた私の妻となるソフィエが、いたずらっぽく笑っている。

後ろを見ればライデン辺境伯閣下やアメリア夫人。その後ろには私の父親代わりであるティボー将軍もいる。将軍にも泣かれてしまった。私の亡くなった両親にいい報告ができると。結婚の準備で忙しかったが、一晩酒にも付き合った。そこでの話は一生の思い出になるだろう。

ちなみにこの期に及んでは、辺境伯閣下も結婚を認めてくれたし、私の伯爵の叙爵をとても喜んでくれた。そして息子が一人増えたとも。そして今後も関係が途絶えるわけでもなく、領地は離れているが寄親という関係でもある。いきなり領地持ち大貴族になってしまったわけだから、統治方法のノウハウを教えてもらえたらと思っている。


「……最後に我が国が誇る英雄にもう一度盛大な拍手を!」


国王のスピーチが終わったようだ。広場がまたもや万雷の拍手で包まれる。私もソフィエも手を振ってそれに応えた。次は皇太子殿下のスピーチのようだ。


「では、ここでこのオラニエの騎士とも言えるディルク卿とその美しい花嫁の初々しいキスは見たくないか?」


と皇太子殿下が台本にない無茶ぶりをしてきた。他人のキスなんてみたいもんかね。だが見れば観客は先程よりも盛り上がっているように見える。ここで拒否したら空気も盛り下がるし、皇太子殿下の立場もあるだろう。仕方ないかと困ったようにソフィエを見ると、ソフィエは目をつぶってこちらにかわいらしい唇を気持ち突き出していた。私の花嫁は何のためらいもなく、既に準備万端で待ち構えておられた。


私は意を決して、ソフィエの唇に自らの唇を重ねた。


その瞬間、広場の観衆の感情が爆発して大盛り上がりとなった。周囲からも拍手が起こっている。観衆へのサービスはこの程度でいいかと唇を離そうとするが、ソフィエが手を回して私の頭をがっちりと固定して離してくれない。

まいったな。

私は新妻に任せるままにキスを続けることにした。






その後、リーレ伯爵ディルクはオラニエの守護として、死ぬまでフランティエに攻められることはなかった。一度、ブリティッシュの都市ククレカレーがフランティエに攻められた時があったが、リーレ伯は躊躇なく自ら援軍を率いて散々にフランティエ軍を破り、ライデンの青い死神ならぬオラニエの青い死神の名を改めてフランティエ軍に刻み込むことになった。


そして統治者としても、その美しい妻ソフィエと協力してよく統治した。その際にはブリティッシュとの良好な関係を生かして、交易で大きな利益を生んだようだ。

そしてその資金を惜しげもなく注ぎ込み、フランティエ戦役でだいぶ荒れたリーレを戦前以上に繁栄させ、オラニエのみならず大陸でも有数の大都市に成長させた。


リーレ伯爵夫妻は、とても仲の良い夫婦として知られており、側室はいないが沢山の子宝に恵まれた。この二人の英雄的な活躍はオラニエ国内でも人気で後世に子孫の一人によって伝記が書かれるのだが、二人が老衰で亡くなった時、その周りには沢山の子や孫に囲まれて、最期の最期まで幸せだったとそこには記されている。



Fin

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