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冤罪令嬢と青い死神の逆襲  作者: 崖淵


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第79話 復讐者

前王太子の取り巻きたちと戦いながら、前王太子本人を追うクラーラたち。


クラーラの集団は王国兵からするとよくわからない集団だった。薄暗い時間帯だったのも幸いだったかもしれない。クラーラ自身は指名手配されているとはいえ、逃げる前王太子ほどメジャーな情報ではなく、末端の兵までが知っているわけではなかった。そして、逃げる前王太子をいち早く攻撃しているこのクラーラの集団は、少なくとも現時点で王国軍の敵ではなく、協力的な義勇兵あたりになんとなく思われていたので、その行動を邪魔する者もいなかった。


そして今は真っ先に逃げた前王太子を追っているところだった。バラバラに戦って結果的に行く手を塞ぐ前王太子の一味。しかし周辺の王国兵が騒ぎを聞きつけてわらわらと集まってくる現状では、前王太子が真っ先に逃げた今、指揮系統も無くまさに多勢に無勢といったところで、そこかしこで前王太子一味が討ち取られ、捕らえられていた。そのあたりは特に気にもせず王太子だけを追っていたクラーラだったが、たまたま地に伏した男の傍を通ったときにその顔を見た。それはよく見知った顔だった。


「側近筆頭のマールテン!」


思わずクラーラは声をあげた。

最終的にはこの男の讒言により王太子の側を追われたのだ。

こいつも憎き敵の一人!

その叫びにより、マールテンはクラーラに気付くとあっという顔をした。


「マールテン、いいザマね!私の恨みを食らって死になさい!」


クラーラは近くの味方の剣を奪うようにして掴むとそのままマールテンの頭に振り下ろした。クラーラは剣の心得がないため、スパッと剣で敵を斬るような真似は到底できない。しかし無防備な頭部に全力で剣を叩きつけられたマールテンは、もはや生きてはいなかった。


そんなとき、マールテンを取り押さえていた王国軍兵士が恨めしそうにクラーラを見た。


「何よ、文句ある?」


褒美が期待できる名のある敵をせっかく生け捕りにできたと思ったオラニエ兵士だったが、それを横から現れていきなり殺されてしまったことにクラーラに文句を言いたくなったのだ。しかし戦場に不自然ないかにも貴族令嬢といった格好のクラーラを見て、さらに取り巻きと思われる腕っぷしが強くて血の気の多そうな男たちを見て、クラーラに文句を言うことを止めた。

何も言わない兵士を一瞥すると


「フン、行くわよ」


クラーラは取り巻きに声を掛けて先を急ぐ。

ひょんなところで、深い恨みをもつ敵を倒したクラーラは気分よく前王太子を追う。前王太子にはもっとたっぷりと分からせてやりたいと思いながら。しかし、前王太子の行方を捜すとかなりの先を王太子は群がる敵兵を寄せ付けず進んでいる。

クラーラは逃げられてしまうと焦り、大きな声をあげる!


「追うのよ!あいつを捕らえて!あの白マントを!絶対に逃がさないで!」


クラーラを慕ってここまでついてきた部下たちは、それに応えて追いかける。クラーラも遅れまいとついていく。

いくら王太子の剣がすごくても、戦いながら進むよりそのまま追いかける方が早いのは自明だ。

どこからともなく次々と現れる王国兵が王太子に戦いを挑んでいるので、すぐに逃げられるわけではない。しばらくすると追い付いたので、王国兵が戦うのを見守りながらチャンスを窺う。

しかし隙が無いまま、辺りの王国兵は全滅してしまったのだろうか、クラーラ一行だけになってしまった。

このままでは逃げられてしまうとクラーラは部下たちに攻撃を指示するが、クラーラの取り巻きは王太子に軽くあしらわれて、次々に斬られて地面に伏していく。クラーラも何か手助けをと思い、そこらに落ちている石を拾って投げつけるが、明後日の方向に飛んでいった。するとあっという間に取り巻きは全滅してクラーラのみになってしまった。前王太子と距離を取りながら対面するが、勝ち目がなく歯噛みするしかない。


「くぅぅ」


「なんだ、来ないのか?この前からご大層なことを言ってくれていたじゃないか。王太子自ら、いや、オラニエ王自ら相手してやろうと言うんだ。来いよ、王の剣にかかって死ぬ栄誉を与えてやる」


クラーラと王太子の距離は二十歩程。走れば数秒で距離を詰められるだろうが、リーレとは逆方向なので、できればそちらに動きたくない王太子はクラーラを挑発した。

しかしクラーラが来ないので、王太子が一歩踏み出すとクラーラは額に汗をにじませながら一歩下がった。

こうなると話が違ってくる。20歩程度の距離は数秒で接近できるが、それはクラーラが動かなかった場合だ。リーレの反対方向に走って逃げるクラーラにトドメを刺すのは体力的にも逆方向的にもやりたくない。


「ちっ」


王太子は内心で一つ舌打ちすると、手でしっしっとクラーラに対して野良犬を振り払うような仕草をした。それから見下ろすようなまるで慈悲を与えてやったとばかりの表情を浮かべてクラーラを一瞥すると、もう下賤の者に用はないとばかりに背を向けてリーレの方向に歩き出した。

放置されたことに気付いたクラーラはそこらに落ちている石を拾い、その背に向かって石を投げた。当然当たらなかったが、投石に気付いた王太子が振り向いたところで大きな声で罵った。


「あらあら、こんな女に好き放題言われてそのまま行っちゃうの?今のあなた……逆賊ヘンドリックは、王どころか王太子ですらないじゃないの。自分を一度正しく見つめ直したら?今のあなたはそのマントのように、元々は高貴な白色だったかもしれないけど、今は泥に塗れて汚らしい存在なのよ」


思わずカチンと来てクラーラの方に走り出しそうになったヘンドリックだが、煮えくり返る怒りを一旦抑えて、リーレの方角をじっと見た。遠くに土煙があがるのが見える。まだ距離はあり、到着まではしばらくかかるだろうが、フランティエ軍は確実にこちらに向かってきている。

それならばこの生意気な女に王の裁きを下すのもよいかと思い始めた。


だが、走って逃げられるのは面白くない。

先程からの意趣返しとばかりに、そこら辺の石を拾ってクラーラに投げつけた。


「ギャッ」


それは矢のように飛びクラーラの顔面に命中した。

顔から流れる血と耐え難い痛みでその場にうずくまるクラーラ。


「まったく手こずらせやがって。王に働いた無礼、死して償うがいい」


そう言いながらゆっくりとヘンドリックは近付いていく。

それに気付いたクラーラは、顔を押さえながらヘンドリックから距離をとろうと後ずさって逃げようとする。

ヘンドリックを道連れにできるなら、命を賭けてもいいと思った。でもこんなんじゃ死ねない。だが実際に差し迫った命の危機に慌てて、恐怖で身体を上手く動かせない。


笑みを浮かべながら、わざと恐怖心を煽るようにヘンドリックはゆっくりと近付く。これまでの無礼をまとめてお返ししてやるとばかりに。


クラーラまであと数歩。そんなとき、ヘンドリックの耳に馬蹄の響きが聞こえた。

それはフランティエの援軍にしては早過ぎるものだった。

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