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冤罪令嬢と青い死神の逆襲  作者: 崖淵


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第77話 リーレへの最後の一歩

王都から北の海までもう少しといったあたりまで北上した後、海岸沿いにブリティッシュ領ククレカレー手前まで西進した。

ここからはリーレを目指して南下を始める。

まだ見えてこないが、あの空の下にはリーレの城壁があり、私がオラニエ王になる道に続いているのだ。


しかし、ここまで予想以上に接敵してこなかった。フランティエ相手に健闘したと聞いていたが、オラニエ王国軍も大したことないな。まぁ私の才覚のなせるわざではあるがな。くくく……この才能がフランティエに渡ってしまう不幸をもう少しでオラニエ軍は身をもって知ることになるのだ。

ふっ、私が王になったあかつきには、軍も鍛え直してやらんとな。


とはいえ、さすがにここから先はリーレが近い。薄くても防衛線の一枚くらいはあるだろう。少なくなったがまだ五十人程は手勢がいる。薄い防衛線であれば、勢いに任せて突破できるだろうし、小競り合いが見えれば私の到着に気付いたフランティエ軍が援軍を出すだろう。もっともフランティエ軍も神出鬼没の私がこちらから来るとは予見できていない可能性もあるがな。はっはっは。

とはいえ、そのくらいはフランティエ軍に期待してもいいだろう。


偵察から戻ってきた者がマールテンに報告をしているのを横で聞いている。


「殿下、お聞きいただいていたと思いますが、この先は哨戒部隊がいるようです。いかがいたしましょうか」


「ここまで来ればリーレは目と鼻の先だ。完全に西側に回らない限りは、さすがにどこを通ろうとしても、哨戒部隊はいるだろう。ブリティッシュが部隊を出していたのが本当に余計だったがまぁ仕方ない。報告を聞く限りでは警戒密度はそう高くないようだ。今までのようにはいかないが、こちらも哨戒部隊を避けて行動すれば、ここの防衛戦の突破はそれほど難しくないはずだ。最低限の警戒はしていても、恐らく我らがここからリーレに入るとは思っていないのだろう」


「はっ、殿下の神算鬼謀には誠に恐れ入りまする」


「ふっ、私ほどの才能がフランティエ軍に渡ってしまうとは、オラニエも愚かだよな。せいぜい1か月後にフランティエの陣頭に立って指揮する私の軍略を前にして後悔するといい」


そしてオラニエ軍の哨戒地域と行動パターンを見極めて、その隙を縫うように我らは進んだ。しかし、哨戒エリアを半分ほど進んだところで、急にオラニエ軍の動きが変わり、警戒が密になった。

すぐに見つかってしまうほどではないが、これでは動きがとれない。


「くっ、なんだこれは。急に警戒がキツクなったぞ。じっとしていれば、見つかりはしないだろうが、ずっとこのままというわけにもいかん」


しばらく様子を見させていたが、この地の厳重な警戒が解かれることはなく、むしろ現在進行形で警戒度が上がっていっているかのようだった。

これはもちろんソフィエの読みを聞いたディルクたちが、この地の警戒度をあげるように早馬で指示をしたからである。


「殿下、どういたしましょうか。これはもう、いちかばちか突破するという手段しかないのではないでしょうか」


「むむ……それしかないか」


警戒はされているものの、まだここにいることは完全にはバレておらず、それを活かして行けるところまで隠れ進み、そこから一気に突破すれば、敵の不意をついて哨戒ラインを突破できるかもしれない。

いや、それに賭けるしかないだろう。時間が経てば経つほど不利になりそうだ。

暗闇に潜んで突破することも考えたが、フランティエ軍の援軍を期待するならある程度明るい方がいいだろう。狙うは払暁ふつぎょう、夜明けの時間帯だ。


「よし、お前たち。明朝出発だ。ここを無事突破し、リーレに到着できれば我は王だ。そしてお前たちは漏れなく大貴族だ」


私は50人ほどにまで減った部下たちを一人一人を見渡すと、各員は力強くうなずいた。


明朝、東の空がうっすらと明るくなり始めたころ、我らは接収していた隠れ家を出た。最後の哨戒網を突破するべく、そろりそろりと慎重に動き始めた。草に残る朝露で足元が濡れる。

狙い通り敵の動きは鈍いようだ。よし、これならこのまま気付かれずに突破できるかもしれない。


「ククク、敵にも知恵者がいたのか、ぎりぎりで私の行動をある程度予測し、対応してきたようだが、いかんせん詰めが甘かったな」


「そうですな、殿下。これならなんとかなりそうだと私も感じます」


私はにやりと笑ってそういうと、荒事が苦手な腹心のマールテンは額の汗を拭うような仕草をみせた。気が早いかもしれないが、まだまだ薄暗い中を気付かれずにひっそりと進む我らは作戦の成功を確信した。




そんな我ら一行をじっと見つめる一団がいることなど、つゆ知らずに……

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