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冤罪令嬢と青い死神の逆襲  作者: 崖淵


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第64話 オラニエの剣

北部まで援軍を率いてきた辺境伯だが、ここで王に拝謁するため軍は一旦ティボー将軍に託し、辺境伯やソフィエ様は王都に向かうことになった。

もちろん私もソフィエ様の護衛として同行する。もっとも私は王に拝謁することはないだろうが。


戦時ということもあり、すぐに謁見は行われた。

そちらには参加しなかったのだが、謁見後の私的な会食にはなぜか参加することになった。


会食場はさすが王家というべきもの立派なもので、シルクの白いテーブルクロスに見事な黄金の燭台。ピカピカに光る銀食器。それに並べられた料理はどれも山海の珍味が並び、一つとして平凡な料理はなく贅を凝らしたものばかりだった。


王と辺境伯が並んで座るという、これはライデン辺境伯への詫びも兼ねているのだろう最大限の配慮がされていた。私は辺境伯に程近いソフィエ様の隣だった。きちんと洗われたとはいえ、くたびれた黒の軍服が場にそぐわない。ううむ、場違い感がある。

ただまぁ私のそんな戸惑いなど誰も気にすることなく、会食は進む。


「辺境伯よ。今回の件は、我が身の不徳の致すところだ。あの痴れ者の振る舞い、わが王家の対応の遅れ――ソフィエ嬢に対して詫びても詫びきれぬ。愚息……もはや息子でもないが、その責任は当然私にある。すまなかった」


と、王は頭を下げた。王が頭を下げるなど異例のことである。謁見の場でそんなことがあったとは聞いていないので、公式の場ではできなかったがゆえに私的な会食の場で頭を下げたのだろう。

辺境伯は王と年齢も近く、私的な親交も深いと聞いている。辺境伯は鷹揚にうなずいていたが、ソフィエ様は恐縮しきりだ。王様に頭を下げられたのだ、当然だろう。


「それよりも王様、前王太子が謀反を起こしたとのこと。御身が狙われたと聞いております。大丈夫だったのでしょうか」


とソフィエ様が気遣うように王に話し掛けた。

その話は聞いている。謀反が起こり、寸でのところで国王陛下の命が危なかったと。こんな状況で国王が斃れたら、オラニエ王国はとんでもないことになっていただろう。ヘンドリックめ、ロクなことをしないやつだ。


「まぁ大丈夫でなかったなら、ここにはいないから大丈夫ではあったのだがな。しかし、わしの命を狙うとはな。本当にわしの目は曇っておったようだ。重ね重ねすまぬと詫びたい」


「いえ、ですが今私はよきパートナーに出会えて幸せなのです。王様にこれ以上謝っていただく必要はないですわ」


と言ってソフィエ様は私の方をちらっと見た。ここでこちらに話を振らないで欲しいのだが。とはいえ、この席に呼ばれたのはそういうことだと分かってはいたので、起立し礼をする。


「よいよい、ここは私的な席だ。そのようにかしこまらなくてもいい。第二王子から聞いたが、非常に武勇に優れる者と聞いている。そうなのか?」


「はい。素晴らしい勇者で、”ライデンの青い死神”という異名がついているのです。その武勇で私も何度も助けてもらいました。その度に何度も胸がときめいてしまいました」


私は身分が低いので、ソフィエ様が代わりに受け答えしてくれているのがせめてもの救いか。ソフィエ様は私のことを過剰に持ち上げてくれているが、これは王様に『現在は幸せで婚約破棄されたことを恨みに思っていないです』ということを言外に伝えているのだ。そのまま額面通りに受け取って良い話ではない。


「つい先日も邸内に誘き寄せたフランティエの凄まじい剣士――私も学園を首席で卒業したので多少の剣の心得はありますが、到底敵わないレベルの敵でした――を、寄せ付けずに完勝したのですから」


「ほほう、それはすごいな。しかもフランティエの名うての剣士を寄せ付けずに倒したとな。それはそれは、これからフランティエとの本格的な戦いを前に非常に幸先がよいことだ。ふむ、今日は気分が良い。ディルクとやら、そちに褒美を与えよう。直答を許す。何か欲しい物はあるか?」


えっ、いきなり?

こういう望みは、大き過ぎてももちろんだめだし、少な過ぎても王様に力がないと見られていることになってダメだ。だから難しいのよな。


「はっ。辺境伯閣下にはソフィエ様を守れるようにとソフィエ様のマリンブルーの髪をモチーフにした青い鎧を拝領いたしました。さすれば王とソフィエ様の敵を容易に打ち倒せるような名剣が欲しく思います」


王はその言葉を聞くと破顔し、パンと一つ膝を叩くと王が身に着けていた腰の剣を外し、私にそれを受けるように促した。それはオラニエ王家の色を表すオレンジ色の鞘に包まれた、王家の刻印が入った名剣だった。


「その言やよし、気に入った。この剣をもってオラニエの敵を倒せ。そしてもしソフィエ嬢の名誉を傷つけるような者が現れたら、わしの名においてこれで斬れ」


私はひざまずいて、その剣を拝領すると立ち上がって腰に差して、拱手しながら宣言した。


「ははっ、かしこまりました。見事オラニエの敵を打ち倒してご覧に入れます。そしてソフィエ様の名誉を回復していただきありがとうございます」


「うむうむ、よき若武者よな。これならフランティエなど恐れるに足らずだな」


王がそう言うと会場からは拍手が沸き起こる。辺境伯もうんうんとうなずいている。


私的な会食の出来事にすぎなかったが、王が自らの腰の剣を賜ったという話は瞬く間に広まり、ソフィエ嬢の名誉は公に回復されたに等しかった。


これは私的な会食であったが、ソフィエ嬢の新たな婚約者に王が自らの腰の剣を賜ったという話は瞬く間に広まり、ソフィエ様の名誉は公に回復されたに等しかった。

婚約破棄の件でソフィエ様を侮辱しようものなら、王から賜った剣で斬られても文句が言えないのは明白であった。


正確にはまだ婚約者ではないが、なかば王の公認を得たようなものだから、もう婚約者みたいなものだろう。

この剣でフランティエもソフィエ様の敵もことごとく倒してみせる!

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