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冤罪令嬢と青い死神の逆襲  作者: 崖淵


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第62話 食事会

北部への援軍であるライデン辺境伯率いる二千余の兵がナムールに到着した。

ここナムールにいるソフィエ様が率いる兵も合流して北部に向かうことになる。


出陣式的なイベントは領都でやっているので、ここナムールでは行わない。

が、最後の領内の拠点であるため、兵を休めるためにここで1泊することになっており、夜は辺境伯とソフィエ様で食事会があったのだが、なぜか私も同席することになった。


「何を言っているの、当たり前でしょう。ディルクは私のパートナーなのよ?」


「でも私が出席すると辺境伯のご機嫌が悪くなりませんかね」


「そんなことになったら、『パパとはもう一緒にご飯食べない』って言うわ」


それはそれは親バカな辺境伯にはとても効きそうな言葉だな、お気の毒だが。


鮮やかな青いカクテルドレスに身を包み、美しいマリンブルーの髪を優雅にアップスタイルにまとめたソフィエ様の手をとって、会場に向かう。自分は黒の軍服だ。ドレス姿のソフィエ様に合うのはこれくらいしかなかった。今度買わないといけないかもしれないな。

そんなことを思いながら、食事会にソフィエ様をエスコートしながら入る。

ソフィエ様の手を取っている私の姿を見たら、きっと辺境伯は嫌な顔をするだろうなと思っていたが、今日はそんなこともなく笑顔で歓迎してくれた。

はてな?


食事会にはティボー将軍も同席しており、話は聞いているのだろう。手を取る私とソフィエ様を目を細めるように見ていた。

食事がゆるやかに始まり、なごやかに会話も交わされる。話題としては、どうしても目下のフランティエとオラニエの北部の戦いが中心になってしまうが。どうやら現在は、リーレから先、小規模な街をいくつか落とされて、さらに少し進んだところで小競り合いをしている状況らしい。


リーレが陥落してからもう1か月以上が経つ。兵の質でも量でも劣るにもかかわらずその程度で済んでいるのは、オラニエ王国が善戦しているのか、フランティエにそれほど攻める気が無いのかはよくわからないな。


案外機嫌が良さそうな辺境伯に対して、私は怪訝な顔をしながら話を聞いていたら辺境伯が灰色のあごひげをしごきながら私に向かってこう言った。


「ディルク、どうした?そんな顔をして」


「いえ、閣下は先日は私の顔を見れば舌打ちといった感じでしたので、今日はどういう風の吹き回しかなと」


「ああ、それか。いや、アメリアに言われたのだよ。『ソフィエが嫁に行くのは確かに寂しいかもしれないけど、同時にディルクというあんなにできた息子ができるなんてあなたは幸せ者なのではないの?』とな」


そこまでいくと二人が既に婚約しているレベルの話になるので、それはまだ早いと思うのだけど、まぁ別れる選択肢は色々な意味でないからまぁいいか。


「ははは、我ながらディルクはどこに出しても恥ずかしくない男ですからな」


義父であるティボー将軍は自らの白髪頭をポンポンと叩きながら、酒が回ったのか少し赤い顔でそう答えている。

ソフィエ様は顔を真っ赤にしている。お酒は飲んでいないので、恐らく結婚式などを想像しているのではないかと思う。


「閣下、ありがとうございます。しかし、そういうことなら気が早いかもしれませんが、私的な場や内心では閣下を義父として思わさせていただきます」


「おお、わしにももう一人息子ができたか。嬉しいのぅ。

だから少し気は早いかもしれないが、父と一つ約束してくれ。カスパルは健在でわしの跡を立派に継いでくれるだろう。そしてさらにはとてもかわいい孫も生まれた。それはとても嬉しい。だが、知っての通り先年私は息子を一人亡くした。いかなる喜びも、この悲しみを癒やしはせぬ」


そこで閣下は一旦話すのをやめると、侍従長に自らの空のグラスに真っ赤なワインを注がせた。

長男である公子カスパルは存命だが、ソフィエ様の一つ上の次男が先年アーヘン伯との小競り合いで亡くなっている。


「子は親より先に死んではならんのだ。もう二度とこの悲しみをわしに味合わせることは許さぬ。いいか、ディルク。わしより先に死ぬこと、ソフィエを悲しませるようなことは絶対に許さんぞ」


「かしこまりました、閣下。いや、義父上」


うむ、それでよいというと辺境伯はうなずくと


「今日はめでたい日だ。わしにすばらしい息子ができたのだ。さぁさぁ乾杯するぞ!」


私はソフィエ様と顔を見合わせるとどちらともなくにっこりと笑い合った。そして今日は義父にとことん付き合おうと、グラスを持ってきてもらい遅くまで4人で酌み交わした。


こうして、ナムールの夜は静かに更けていった。

そして翌朝、酷い二日酔いで馬から落ちそうになったために馬車に押し込まれた辺境伯を先頭に、我々は北部へと出立した。

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