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冤罪令嬢と青い死神の逆襲  作者: 崖淵


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第58話 青アザ

玄関が大きく開きアレイレ軍曹以下、ライデン辺境伯軍の兵たちが勢いよく邸内に飛び込んでくる。そしてフランティエ隊長ジャンが崩れ落ち血の海に沈む。


一騎打ちを見守っていた兵たちも多く、歓喜に沸くライデン辺境伯軍とうなだれるフランティエ兵、その差は対照的だった。だがまだ戦っている兵たちもいる。


「フランティエの兵士たちよ!お前たちの隊長は倒された。武器を捨てて大人しく投降しろ!」


私は一際大きな声でそう叫ぶと、フランティエの兵たちはつぎつぎに剣を投げ捨てて、降伏の意を表した。そこをライデン兵たちが縄で縛っていく。一方で邸内に侵入してきたフランティエ兵はとても強かったので、我が軍の兵で傷ついた者は多い。彼らの応急処置や荒れた邸内の片付けをアレイレ軍曹に頼むと、軍曹はテキパキと次々に部下に指示をしていった。


ふぅ、なんとか終わったか。

私は抜き身の剣をぴっと一振りして血糊を払うと、鞘にしまった。


そして2階の廊下入口の吹き抜け部分から、まだ先程の戦闘の興奮から冷めやらぬのか、こちらを呆然と見たままのソフィエ様に向かって合掌し一礼する。するとソフィエ様は階段を勢いよく駆け下りてくるなり、私に飛びついてきたので、そのまま抱きしめた。


「すごい、すごい!ディルク、さすがだわ!」


お互いに鎧を着込んでいるので、ガチャガチャと金属鎧同士がぶつかってあまり色っぽい雰囲気ではないが、ソフィエ様が喜んでいるのはとても嬉しいものだ。しかし、ここは人目が多いな。


「ソフィエ様、部下たちも見ております。まずはお部屋に移動しましょう。この邸内の様子では侍女たちにも働いてもらわなければなりませんし。」


そういって戦場となったために惨状と化した辺りを見回す。


「ええ、そうね」


と我を忘れて私に抱きついていたのに気付いたのか、少し顔を赤くしている。それをアレイレ軍曹以下兵たちが微笑ましく見守っているのに気付き、余計にいたたまれなくなったのか、「みんなもよく戦ってくれたわ、ありがとう。ディルク、先に執務室で待ってるわね。ちゃんと報告に来ること!」と言うとそそくさと階段を上がっていってしまった。


そんなソフィエ様を見送ると、ともに戦い傷ついた兵たちに声をかける。結構な傷がある兵たちもちらほらいるが、どちらかというと勝利に興奮している様子に見える。


「ディルク様、すげえ戦いだった」


「はは、ありがとう。相手は強敵だったが、お前たちの戦いも勇敢だったぞ。誇りに思うぞ」


そういって健闘を称え合う。

そしてガレキと化した家具の残骸の搬出や割れた花瓶の破片の片付け、捕虜の扱いなどに指示出しをしているアレイレ軍曹のところに向かうと


「アレイレ軍曹、あとは頼んだぞ」


「はっ、お任せください」


私はソフィエ様への報告のためにまだ先程の激戦の余波が残る大階段を上がり執務室に向かった。

執務室に入るとソフィエ様は不在で侍女が出迎えてくれた。現在、奥の部屋で身に着けてもらっていた真紅の金属鎧を脱いでいるところだという。


今までは興奮していたせいかどうということもなかったが、この部屋の落ち着いた雰囲気に触れたせいか、かなりの疲労を感じたのでソファーに座らせてもらい待つことにした。侍女たちがお茶を淹れてくれたので、それを飲むとやっと一息つけた。

数分後、金属鎧を脱いでさっぱりとしたソフィエ様が奥の部屋から出てきた。


「ああ、ディルク待たせてしまったわね。さっきの敵兵たちは相当に強かったように見えたけど、ディルクから見てどうだったの?」


「そうですね。後ほど降伏した兵たちから所属などの情報を聞くつもりですが、精鋭部隊であることは間違いないでしょう。我らの兵たちも鍛えており、オラニエ王国内であれば有数の精鋭と言っても過言ではないですが、それよりも全体的に強かったですね」


「やっぱりそうよね。それにあの隊長よ。あの隊長はその中でも桁違いに強かったわ。精鋭兵たちなら、もしかしたら私でも何とか戦えたかもしれないけど、あの隊長は私では絶対に勝てない相手だと思うの。その敵の隊長とディルクとの戦いはすごかったわ。あなたたちにも見せてあげたかったわ。そんな強敵をも圧倒してしまうほどディルクってばすごい強かったのよ」


それを聞いた侍女たちは、キャーキャーとソフィエ様と騒いでいる。こういうのを見るとやはり女性だなと思う。


「ええ、かなりの強敵でした。今まで私が戦ってきた相手の中でも一二を争うくらいの強敵でした。しかも、こちらには地の利があり、装備の差がありました。それが無くても勝つ自信はありますが、より苦戦したのは間違いないですね」


「というかさすがのディルクも疲れた様子ね。そうよ、貴方も鎧を脱いだらどうかしら」


「そうですね。普段ならば遠慮させていただくところですが、今日はお言葉に甘えさせていただきます。どなたかお手伝いをお願いしてもいいですか?」


と私は部屋の侍女たちにそう言った。


「「「はい!はい!」」」と侍女たちが次々に手を挙げてくれたが、そんなに大勢は必要ないので、思わず苦笑してしまう。


「あなたたちいいわ、私がやるわ。だってディルクは私のために戦ってくれたんだもの。リネケも手伝ってくれる?」


「はい、かしこまりました」


「ソフィエ様、さすがにそれは少し申し訳ないというか、恥ずかしいというか」


と言ったが、ソフィエ様が私の言葉を聞き入れてくれる様子はなかった。とはいえ、鎧を脱ぎたい気分なのは事実なので、さしたる抵抗もしないでいるとリネケさんと一緒に嬉々として私の鎧を脱がしていく。


――!


ソフィエ様の手が私の胸のあたりに触れた時に走った痛みに、思わずビクンと反応してしまった。それに気付いたソフィエ様が私の服をめくると、そこには目立つ青アザができていた。


「ちょっと、ディルク。これは?」


「刺突剣の攻撃を受けた場所ですね。たとえ金属鎧で刃を防げても、その衝撃全てを防ぐことはできませんから、このように打撃痕が残ることもありますよ」


強敵が相手であのような刺突剣で強く突かれれば、金属鎧のお陰で刃こそ通していないが、そこが打ち身になったり青アザができたりはするものだ。この鎧のお陰で私は生きて、相手は死んだのだ。青アザくらいは甘受すべきだろう。


「痛いのよね?でもこの傷が私たちを守ってくれたのね」


私の胸に顔をぴたりとくっつけると、青アザを愛おしそうにそーっと撫でるソフィエ様。その甘い雰囲気に当てられたのか侍女たちが顔を赤くしながら、でもにやにやと見つめてきている。


ソフィエ様をたしなめるべきだったかもしれないが、私も疲れていて身体がソフィエ様の癒しを求めていたので、そのままでいいかとしばらくされるがままにしていた。

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