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冤罪令嬢と青い死神の逆襲  作者: 崖淵


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第57話 一騎打ち

「こいつは俺がやる!」


そういって前に出て斬りかかってきたフランティエの士官らしき人物とそのまま斬り結ぶ。何回か斬り合うと、明らかにこいつが今までで一番の強敵だと分かる。

だが敵は高低差を嫌ったのか、そのまま戦うことをよしとせず階段下のホールフロアまで下がったので、前線を押し返す意味でも自分もそこまで下りていく。


――ジャリ、ジャリ


フロアに降り立つと、あたりに散らばった割れた花瓶の破片が私の軍靴で砕かれる。時間が惜しいのだろう。私がフロアに降り立つと、敵の隊長らしき人物はまたもやすぐに斬りかかってきた。


――キン!キン!


そのまま数合斬り結ぶが容易に決着がつきそうにない。

援軍が来るまでに決着をつけたい敵の隊長は余計にそう思ったのだろう。それまでは丈夫さ重視で使っていたであろう幅広の剣を投げ捨てると、真鍮製のガードが黄金色に鈍く輝く、切っ先鋭い細身の刺突剣を腰から引き抜いた。


「オラニエの弱兵の割には、やるじゃねえか。俺の名前はジャン・ル・ブラン。ナムール方面軍の部隊長だ」


「そうか、俺の名前はライデン辺境伯が……」


「いらねえよ。時間もねえし、これから死ぬ奴の名前なんて興味ねえ!これは俺様のとっておきだ、これでも食らいやがれ!」


――ヒュン、ヒュン、カッ!


とっておきという名に恥じぬ非常に鋭い刺突をジャンはいきなり繰り出してきた。

私はそれをなんとか弾いた。こいつは手強い。


剣などの斬撃は線だが、槍もそうだが刺突剣は攻撃が点だ。盾があればまた違うが、そのまま点の攻撃を防ぐのは難しい。だから槍でいえば柄の部分、刺突剣で言えば剣身の部分を弾く必要がある。その部分は線だからだ。

だがそれも相手が達人級ともなると、そう簡単な話ではない。


だが、刺突剣は基本的には戦場のような乱戦では向かない武器だ。

乱戦では常に攻撃というわけにはいかず、防御に回った時は剣身が細いため、折れやすいからだ。逆に1対1では強い武器といえる。


そんな敵の兵たちは自分たちの指揮官ジャンを乱戦に巻き込まないように、こちらの兵を引き離すように戦っている。ちっ、分かっているな。だが私とて1対1で負けるつもりはない。


しかし「ハッ!」とジャンは一つ気合を入れると「こいつを食らって生きていた奴は一人もいねえ」とのたまい、さらに刺突のペースを上げてきた。


――シュッ、シュッ、シュッ!カン!


単純な刺突の連続。それを私は冷静に捌いていく。だが鋭い突きはそれだけで脅威で、こちらに息つく暇を与えず、そして反撃する隙も与えてくれない。


「オラオラオラ!」


時間がないのがわかっているのだろう。さらにジャンはペースをあげて突きを放ってくる。右に左に弾いて凌ぐが、正直に言えば凌いでいるだけとも言える。このラッシュは相手の方が体力的に疲れると思うが、こちらも鋭い刺突の連続を確実に回避し続けなければならないのは精神的に疲労する。

このまま援軍の到着を待ってもいいが、押されっぱなしというのも性に合わない。


視界の端に2階の廊下から両手を合わせて見守るソフィエ様が映る。


何より、惚れた女の前ではカッコつけたいというのが男のサガだ。

永遠に続くかと思われた鋭い突きのラッシュの最後の一撃を、私は剣ではなく自身が纏う青い金属鎧の頑丈ところでわざと受けると、ジャンのほんの一瞬の隙を逃さず、私は反撃に転じた。


「行くぞ!」


相手が細剣なら、こちらも素早く、そして力強く攻撃するだけだ。

両手で持って右斜め上から振り下ろし、続けざまに左右に薙ぎ払う。その手に持つ細身の刺突剣でかろうじて受け流すジャン。まともに受ければ一撃で折れてしまいそうな斬撃をそれでも躱しているのだから、やはり只者ではない。


だがもうお前の出番ターンはない。

私は力強く踏み込み、渾身の力で振り下ろす。私が踏み込んだ分だけジャンは下がりながら、かろうじて私の攻撃を弾く。だが私は逃がさないとばかりに、続けざまに突き、薙ぎ、斬り払う。その最後でとうとう受けきれなくなったのか


――キーン!


一際甲高い音を残して、ジャンの刺突剣は真ん中から折れ、先端が地面に刺さる。

そしてその隙を逃さず私はジャンを袈裟懸けに斬り裂いた。


「ぐあっ、無念……」


――バーン!


それと同時に玄関の扉が開いて、玄関扉を守っていたであろう敵兵が血を噴き出しながら倒れる。そこをアレイレ軍曹や兵士たちが勢いよくホールに入ってくるのが今まさに倒れゆくジャンの向こう側に見えた。


ふぅ、終わったか。

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