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冤罪令嬢と青い死神の逆襲  作者: 崖淵


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第54話 襲撃者

俺の名は、ジャン・ル・ブラン。栄光あるフランティエ軍ナムール方面軍の部隊長だ。

主な任務は、ブランデリック帝国への帰順が噂されるライデン辺境伯に対してプレッシャーをかけることと、逆に懐柔のために本国からくるライデン辺境伯への使者の護衛だ。


そんな注目のライデン辺境伯だが、結果的にブランデリック帝国に降ることはなく、逆にフランティエに帰順することもなかった。結局、オラニエ王国所属のままと決まったようだ。

無駄に騒がせやがって。

とはいえ、フランティエにとっては最悪の結果は免れたと言っていい。


まぁそれはいい。

北部でこの混乱に乗じて大都市リーレを落としている分だけ、戦前に比べてフランティエは得をしているからな。

個人的なことを言えば、北部軍と違って自分が率いているここ南部の部隊に特に戦功がないのが残念だが。


先日、本国より撤収命令が出た。

ライデン辺境伯の帰属先が現状維持と決まった今、この先本国から使者が派遣されることもなくなり、補給線の細いここに居続ける意味も薄くなったのでまぁ仕方ない。当然の命令だ。

ただ、このまま帰っても北部の軍と違い、ここ南部にいた我が部隊には特に戦功がない。現状維持でも意味はあるのだが、華々しい北部の戦果には遠く及ばない。

手ぶらで帰還するのではなく、何か手土産が欲しい。そう思ってしまうのも無理はないだろう。ましてや相手は弱兵のオラニエ王国軍。ここライデン辺境伯の兵士はオラニエ王国の中では強いらしいが、我らがフランティエ軍には及ぶまい。


ちなみに聞いたところによると、フランティエ王とライデン辺境伯の間で行われた外交交渉の中で、オラニエの王太子に婚約破棄された辺境伯の娘を、フランティエ王の第五王子の嫁にという提案をライデン辺境伯は断ったようだ。大国の王族と中小国の辺境伯の娘という大きな身分差があるにもかかわらず、我が王からのありがたい申し出を蹴っとばしたらしい。傷物のくせに生意気な。

先日、その報復の一環としてナムール近辺の村を一つ焼き討ちして、皆殺しにしてやった。その後は警戒が厳しくなり、2回目の焼き討ちができなくなっているが、村が警戒されたのなら、辺境伯領内の街道を通る商人を襲ってやろう。これは現状の戦地である北部への物資輸送を妨げ、友軍への支援にも繋がるはずだ。


そんな商隊への襲撃は何度か成功していたが、一度襲撃に失敗して10人もの部下を失ってしまった。くそっ、ライデンめ。

先日まで本隊がいた陣は既に引き払っており、この地に駐留していた兵たちも既にほとんどが帰国の途についている。現在もここに残る30人ほどの兵は、もれなく意地汚い程に戦功が欲しい連中だけだ。

もちろんそんな筆頭が俺様だけどな。


村も街道もナムール守備隊の警戒が厳しく、次の攻め手を考えていたところで、部下がナムール市内に潜入する伝手を手に入れたらしい。くくっ、市内に敵国の兵を手引きする裏切り者がいるなんてライデンもかわいそうに。そんな裏切り者は最近ナムールに支店を出した人足の派遣会社らしい。まぁそんなのは俺にはどうでもいいことだが。

よし、これを最後の仕事にしよう。第五王子の婚姻話を蹴ったライデン辺境伯の娘とやらを捕獲するなり首を取るなりして、「フランティエ軍ここにあり!」とでっかい花火を打ち上げてやろう。それはさぞ気分がいいだろうし、褒賞も上からたんまり出るに違いない。


首を洗って待ってろよ、辺境伯の娘とやら。

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