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冤罪令嬢と青い死神の逆襲  作者: 崖淵


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第51話 不穏なナムール

第二王子は王都へ帰還した。それに合わせるようにしてソフィエ様もナムールへ戻ってきた。最前線の領主代理の座を長らく空けておくわけにはいかないからな。


後日、辺境伯はフランティエの使者に対して、正式にソフィエ様への婚姻の申し出に対して、断る旨を伝えたそうだ。フランティエの使者はその場で居丈高に


「このようなフランティエ王の慈悲深い破格の申し出を断るとは!後悔めされるなよ」


と言い放ち、かなり怒っていたらしい。

使者はナムール経由でフランティエに帰国したはずだが、帰りにソフィエ様への挨拶はなかった。怒り心頭ということなのだろう。

向こうからすれば、傷物の娘に対しバツイチとはいえ直系の王子を提案したにも関わらず、拒否された。傷物の格下の娘にその王子がバカにされたという話になる。


とはいえ、既にフランティエとオラニエは交戦中であり、

「よろしい、ならば戦争だ」と言われても「既に戦争中ですよね?」という話だ。

まぁ北部主体の戦争が南部もその標的になりうるという話だが。

ただ、大軍をもって攻めることは難しいので、ナムールの森に潜むフランティエの特殊部隊がゲリラ的活動を仕掛けてくるということになるだろう。それはそれで厄介だが。


北部の戦地にライデン辺境伯として援軍を派兵することが決まったのだから、北部に行く前に後顧の憂いを断つべく、これからはナムールの周辺に展開しているフランティエの特殊部隊をできるだけ多く削っておく必要がある。

とはいえ、既に北部で交戦中でフランティエは敵国というか交戦国とはいえ、ここでこちらから手を出していいかは悩ましいところだ。こちらから手を出して、わざわざ恨みを買いたくない。既に北部で戦地になっている住民からすれば業腹かもしれないが、南部の辺境伯領が戦火に塗れるのが避けられるのなら、避けたいのが正直なところだからだ。


しかし、そんな心配は杞憂だった。

今までは傍観していただけだったフランティエの特殊部隊と思われる兵たちが、ナムールの近隣の村を攻撃し始めたからだ。我々がエーヘン伯領でやったのと違い、彼らフランティエの部隊は、村ごと焼き払って村人を虐殺した。


ナムール近隣の村々はその惨劇と残虐さに震えあがった。

ナムールに近隣の村は多い。しかもどの村も森の中にある。フランティエの部隊が森の中を隠れて移動しながら襲撃しやすい村ばかりということになる。

地の利はこちらにあるが、ここ数か月間、森の中に潜んでいたフランティエ軍はここらの地形を調べていたのだろう。

襲撃があった以降、何度か他の村でもフランティエ軍が目撃されたり、軽く攻撃を仕掛けられたりしたことはあったが、村にはある程度の兵を配置していたので、それを知ったフランティエ軍は村を襲撃することを諦めたのか、あっさりと退いていったようだ。しかしそれを追撃したり、ひっそりと追跡したりしたが、なかなか本隊の潜伏先を見つけることはかなわなかった。


近隣の村を警備する部隊とは別に、ナムール駐留部隊の本隊は森の中にあるであろうフランティエ軍の根拠地を探した。

ナムール周辺の村ではフランティエ軍と小競り合いを繰り返しながらも、その後は目立った被害は出ていない。しかしそんな膠着状態は、今度は街道上に商人の一行が惨たらしく殺された死体で発見されることで破られた。


村に駐留する兵を隠してフランティエ軍の主力の襲撃を誘引するような仕掛けもしてみたが、フランティエ軍はそれに引っ掛かることがないままに、街道を行き交う商人たちが定期的に襲撃されていった。


王都方面に向かう積み荷と商人、王都から来る商人。ライデン辺境伯領にとっても、北部にとっても重要な流通だ。重要性とそこから生まれる利益の大きさで多少の襲撃では商人の往来が減ることはなかったが、このまま続けばどうなるかは分からない。ライデン辺境伯領が経済的に締め付けられることになるかもしれないし、放置したまま北部へ援軍を出せば、その間に辺境伯領が火の海に沈むかもしれない。

引き続き付近の森を捜索しているが、このままでは状況は悪化するばかりだという意見も多く出た。


そこでフランティエ軍を撃滅するべく、ソフィエ様から特大の罠を仕掛けようという提案がなされた。

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