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冤罪令嬢と青い死神の逆襲  作者: 崖淵


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第45話 王太子の決断

王都アントオラニエ 王太子府


「なんだと?明朝の議会に出席しろ、欠席は許さないという王命だと!?」


豪奢な深紅のガウンを羽織り鷹揚に座る王太子が、目の前の王からの使者に対して大きな声でそう問い詰めると、あたりは騒然となった。王からの強い態度の強制招集。それが意味するところは、王太子への厳しい対応――廃嫡などの王太子への処分・厳罰が下ることが濃厚だった。


「はい。これは全てに優先される王命となります。拒否や無視は王命違反で重罪となりますので、ご注意ください。私は確かに王太子に伝えましたので、聞かなかったは通りませぬぞ。」


王命を伝えた使者は少し震える口調でそういうと、王太子の癇癪を恐れたのかそそくさと退散した。


この部屋には王太子の側近や取り巻きが集まっていたが、ついに来るべきものが来たかという空気だった。クラーラを生贄の羊として差し出すも、ライデン辺境伯は拒否したそうだ。そして肝心のクラーラにも逃げられる始末。

そんな中、リーレはフランティエによって陥落。フランティエはそのまま居座っており、戦争がいつ終わるとも言えない状況。一番の味方だったデルフト家ももはや王太子支持を取り下げている。主な味方は王妃の派閥と幼少期から王太子に子弟を仕えさせていた中小の貴族くらいであった。

自分たち側近が謝罪なしで現状を打開できると王太子に大見得を切ったのが悪いとはいえ、もはや王太子が謝罪するしか好転する兆しがなかった。しかし王太子は謝罪という手段を全く認めなかったため、王太子陣営としては打つ手がなく八方塞がりだった。


王都の空気は王太子批判で一色に染まり、彼らは日に日に肩身が狭くなっていた。

さらに王によって王太子が廃嫡されるという噂がここ数日広まっているのは、王太子以外の全ての人間が知っている話だった。


側近筆頭のマールテンは、ゴクリと生ツバを飲み込むと王太子の様子を窺った。見れば王太子は腰を浮かしたまま呆然とした様子で、その額からは汗が一筋落ちた。さすがの王太子もこの状況が尋常ではないことが分からないということはないようだ。

やがて王太子の目に光が戻ると、腰をどかっと下ろし何やら考え始めた。そして


「出席はできぬ。」


しばらくしてそう呟いた。


「しかし、殿下。出ねば重罪となります。」


「出てどうする。謝罪で済めば良いが、恐らく待っているのは廃嫡だぞ!?」


それがわかっているなら、なぜ頑なに謝罪しなかったのだという空気になりかけたが、王太子の次の言葉で全ての空気が変わった。


「……ならば立ち上がり、王を討つ!」


マールテンは思わず「正気か!?」と思った。

もちろん、部屋の中も騒然となった。そんな中、王太子は話を続けた。


「我々が蜂起するとは向こうも思っていないだろう。相手にも兵士はいるだろうが、奇襲をかければ我らにも勝ち目はある。明日の議会後、廃嫡される公算が高いが、今はまだ我が王太子だ。王を討てば、王太子である我が次代の王だ。」


おぉ…とどよめきが起きる。


いやいやいや、そうはならんやろ。マールテンは、冷静に心中でツッコんだ。確かに王が斃れれば王太子が後を継ぐのが道理だが、倒したのが王太子なら話は違ってくる。


「もちろん平時であればそんな簡単な話ではないのは分かっている。だが今はフランティエとの戦争中で劣勢だ。王を討ち、その勢いで兵をかき集めて『弱腰の王に代わりフランティエを討つ』と声高く表明すれば可能性はある。」


マールテンは、続いた王太子の言葉に確かに…と思ってしまった。そこからフランティエに勝てるかはまた別の話だが、我らにはもう後はないのだ。廃嫡された王太子はもちろん、その側近の未来など冷や飯暮らしが関の山だ。そこにどんなにか細くても栄華への道があり、立ち上がるしかその未来がないのなら、試す価値はある。


不思議なことにこの王太子の取り巻きや側近から、この謀反に対して離反者は一人も出なかった。こんな王太子にも人望があったのと、自分たちが追い詰められていたのを正しく理解していたのかもしれない。


そして彼らは少ないながらも王都にいる手勢を必死にかき集め、尊大な王太子の没落する姿を楽しみに人が集まっていた議会に襲撃を仕掛けることになる。

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