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冤罪令嬢と青い死神の逆襲  作者: 崖淵


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第38話 パーティー下準備

私の気持ちを伝えると涙を零されたソフィエ様をなだめるのにその後苦労した。そうこうしているうちに時間が来てしまったようだ。程なくして「そろそろお時間です」とリネケさんがノックしてきたので、入ってもらった。ソフィエ様ともう少し話をしたかったが、また後でいくらでも時間はとれるだろう。


涙の跡が残るお嬢様の顔を見てリネケさんはにまにましながら、「お嬢様を泣かせるなんて悪い男ですね」と全て知ってますよとばかりに言われたので、


「趣味が悪いですよ。」


とリネケさんに聞き耳を立てていたことを咎めた。

すると口に手を当てて、「ごちそうさまでした」と言われた。はぁ、全然効いてない。

もう明日にはこの話が広まってるんだろうな。


「それではお化粧を直さないといけないようですので、30分ほどしましたらお嬢様のお部屋にお越しください。」


「ディルク、また後でね。」


と言って二人は去っていった。

ソフィエ様と二人きりで話せたのはよかった。

ソフィエ様は私の心が離れるのを恐れていたようだから、それがないと少しは分かってもらえただろうか。


しかし、真っ赤なドレスを着たソフィエ様はきれいだったな。

今日、パーティーがあるからあの姿を見れたのだが、同時にパーティーで他の男にあの姿を見せたくないと思ってしまった。

ううむ。自分の心なのに、自分のものではない気分だ。

封じていた恋心を思い出せたのはいいことのはずだけど、これでは仕事に支障をきたしてしまう。もっと冷静にならねば。


……そういえば、ソフィエ様のドレス姿を褒めていないことに気が付いた。

やはり全然冷静になれていないな。



30分後、ソフィエ様の部屋に行く。

ノックをして入ると、ソフィエ様の準備は整っているようだ。しかし改めてみると

ドレスは先程と変わらないが、先程より美しく見えるのはなぜだろうか。


「ディルク、そんなにマジマジと見られると恥ずかしいわ。」


ソフィエ様は少し顔を赤くしながら、少し開いた胸元を隠すようにしてそう言った。


「すみません、ソフィエ様。ですが、そのお姿がとても美しくて見とれてしまったのです。いつもの真紅の鎧もいいですが、真っ赤なドレス姿もとても素敵ですね。」


よかった、噛まずに言えたぞ。お陰で私も自然と笑顔になった。

それを聞いたソフィエ様は目を見開くと、頬を真っ赤にして顔を背けてしまった。


「こんなの反則すぎる。いつも堅くて不愛想なディルクが、こんな笑顔で私の容姿を褒めてくれるなんて想像したこともなかった。」


なんかソフィエ様がぼそぼそと独り言を言っているがよく聞こえない。

壁際の侍女たちのうち数人も胸を押さえてよろめいている。なんか変なことを言ってしまったのだろうか。


「なんて笑顔なの。ディルク様の冷笑ですら素敵だったのにこの笑顔の破壊力たるや」

「この笑顔を独占できるお嬢様が羨まし過ぎる」

「ディルク様の笑顔がまぶし過ぎて直視できない」

「なんて素敵な笑顔なの、もう死んでもいいわ」

「ディルク様が笑うとこんなに素敵だったなんて、お二人の愛が尊すぎる」


なんか侍女たちがよく分からないことを言っているな。

はてな?と笑顔のまま小首をかしげていると、さらに胸を押さえる侍女たちが続出する。


「あーあー、ディルク様その辺で止めてもらえませんか。これ以上侍女たちに倒れられてしまいますと、パーティーの進行に支障が出てしまいます。」


とリネケさんも胸を押さえながら、私にそう言ってきた。

私は何もしていないと思うのだが。まぁいいか。そろそろいい時間だな。


「ソフィエ様、行きましょうか。」


私はソフィエ様に左腕を差し出すと、ソフィエ様はいかにもおっかなびっくりといった感じでその腕をぺたぺたと触っていた。微笑ましいなという感じで見守っていると、意を決したのかおもむろにがっつりと腕を組んできた。こらこら、ソフィエ様?


「ソフィエ様、今日のところは第一騎士としてエスコートさせていただきますので、腕に手を添えるだけでお願いします。」


「私たちはもうお付き合いしているのだから、これでもいいでしょう?」


くぅ、上目遣いで甘えられるとつい「うん」と言いたくなるが、それはダメだ。


「今日は私たちの仲をお披露目する場ではありません。領主代理として着任するソフィエ様とこの街の有力者との顔合わせの場です。今後もしフランティエと戦になったら、彼らには協力を仰がねばならない、その最初の場でもあります。公私の別は付けなくてはいけません。お分かりですよね?」


「……そうね。ごめんなさい。」


しゅんとしてしまった。言い過ぎだっただろうか。でも必要なことだ。


「私もお嬢様と触れ合えないのは残念です。むしろこのように素敵に着飾ったお嬢様を他の男性の目に触れさせたくはない。ですが、これは辺境伯家にとって必要なパーティーですので、我慢します。私も我慢しますので、ソフィエ様も我慢していただけますか?」


ソフィエ様がえっという表情でこちらを見ている。


「ディルクは私のこの姿を他の男性に見せたくないの?」


「ええ、当然です。こんなにも私の目を惹き付けてやまないソフィエ様を私だけのものにしたい。今すぐさらって屋敷の奥にしまっておきたいくらいです。」


「え、そうなんだ…ディルクにそんな風に思ってもらえるなんて、えへへ、なんだか嬉しいな。」


少し頬を染めながら、はにかんだ笑顔のお嬢様もとてもかわいい。

本当にさらってしまいたいくらいだ。


「ソフィエ様、辺境伯からは自由に恋愛していいと言われているようですが、私としては私とお付き合いを始めてから悪くなったと辺境伯に思われたくはありません。最終的には辺境伯にも認めていただきたいと思っております。」


「そ、それってプロポーズ?」


私は苦笑すると


「そこまでのものではないですが、私はソフィエ様とは単なるお付き合いだけでなく、その先まで考えていると思っていただいて結構です。」


それを聞いたソフィエ様は緩んでいた顔をぴしりと一叩きすると、いつもの凛とした雰囲気が戻ってきた。


「わかった。シャキッとするわ。ディルク、今までのように私を守り、導いて欲しいわ。これからもよろしくね。」


「ええ。私もそういうソフィエ様が大好きです。」


というとまたにへらと相好を崩してしまったが、まぁ会場入りするまでに戻してもらえればいいだろう。私は腕に添えられたソフィエ様の手をゆっくりと撫でた。

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