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冤罪令嬢と青い死神の逆襲  作者: 崖淵


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第35話 甘い空間

お嬢様のことを好きだったことを思い出し、その気持ちが色褪せていないことを自覚できた。お嬢様にはまだそのことは伝えられていないが、少なくとも両想いということになる。なので結果的にはお嬢様の告白は嬉しいものとなったし、お付き合いできるのは今ではとても嬉しい。

しかし、この空間はなんとかならないだろうか。


現在は前線へ馬車で移動中だ。

お嬢様と二人きりで話をする機会が欲しいと思うのだが、馬車内には侍女二人が常にいる。行軍中なので、侍女たちに「しばらく馬車から出て二人きりにさせてくれ」とは言えない。そして彼女たちは「私たちは侍女ですので、いないものとして扱ってください」というが、そう思わせたいなら、二人とももう少し視線を逸らすとか聞いてない振りをするとかして欲しい。

目を輝かせながらこっちを見られていると、いないものとするのは無理がある。


かといって私たちが外に出たら、たくさんの兵士たちの耳目がある。

兵士たちの前で、(当人にそのつもりがなくても)いちゃつきでもしようものなら、指揮官としての威厳など全くなくなってしまう。


だから、馬車内で大人しくしているしかないのだが、お嬢様も恥ずかしがっている割には、隙あらば侍女の前でも甘い会話を繰り広げようとする。私に好意を示してくれるその気持ちは嬉しいし、私としてもお嬢様の気持ちに応えてあげたいのだけど、侍女の前で応えるのは嫌なので、ついつい素気ない態度をとってしまう。するとお嬢様は非常に悲しい顔をされるのだ。

先日までは別にそれでも構わなかったが、お嬢様のことが好きだと気付いてしまったあとは、それが非常に堪えるのだ。無下にできなくてそれなりの回答をすると、侍女二人が口を押さえてにまにましてこちらを見ているという拷問のようなやり取りが延々と続いている。


「ねぇ、ディルク?」


「なんでしょうか、お嬢様。」


「それよ、それ。もうお嬢様はやめて、ソフィエって呼んで。愛称のソフィーでも良いわよ。」


「少なくとも今は行軍中で、公的な場所になりますので、それにお応えすることはできません。」


「でも今はここには私たちしかいないわ。今だけでもそう呼んで欲しいの」


私たち…それが私とお嬢様だけを指すなら、お嬢様の期待に応えるのはやぶさかではない。しかしちらっと横を見ると、侍女二人はこちらを直視こそしていないが、耳を澄ませながらぷるぷるしているのが丸分かりだ。さすがに拒否させてもらいたい。

私は目をつぶりながら腕組みをして、無言で拒否する姿勢を示す。


数秒後にちらっと目を開けてお嬢様の様子を確認すると、非常に悲しそうな表情をしている。大好きな女性にそんな表情をさせてしまったという想いで、途端に私の胸が苦しくなる。くっ、だがこの羞恥プレイを甘んじて受けろというのか!


ちらっと私がお嬢様のことを見たのが分かったのだろう。途端に両手を合わせてお願いポーズをとりながら、お嬢様はかわいらしい紫の瞳を上目遣いに輝かせて、私の薄目を期待するように覗き見ている。そしてその向こう側で、侍女たちも期待するようにこちらをちらちらと見ている。

うぐぐぐぐぐ。


そのまましばらくそのままの状態が続く。お嬢様はなおもじっとこちらを無言で見続けており、かっぽかっぽという馬蹄の響きとガラガラという車輪の音だけが、馬車内を支配する。

そして誰一人として声を発する事もなく、私を除く馬車内の全員が私のリアクションを待っていた。


「ソフィエ……様。」


これが自分の声かというようなか細い声でそれだけを呟いた。

するとお嬢様の顔がぱあっと笑顔になる。それは嬉しいのだが、その向こう側で侍女二人が熱烈に抱擁しあって、からかうような視線でこちらを見ている。次はこのままこうやってお嬢様を抱擁しろとばかりに。


するわけないだろうが!


いたたまれなくなった私は、思わず馬車を出て扉を閉じた。その時、少し強めに「バタン!」と音が立ってしまったのは仕方ないと思って欲しい。

すると馬車内からは


「ねぇ、ディルク怒らせちゃったかな」という少し心配そうなお嬢様の声が聞こえた。


「あれくらいなら大丈夫です、お嬢様からどんどんいかないと何も進みませんよ」

「お嬢様が隙をつくったら、私がディルク様を奪っちゃいますからね」

「そんなのダメ、絶対!」

「これまででじゅうぶん分かってらっしゃるでしょうけど、ディルク様は非常に奥手なんですからね。」

「そうですそうです、どんどんいかないと男女間の機微に疎いディルク様はいつの間にか離れちゃいますよ」


と言った会話が続いて聞こえる。

私が離れていかないのなんて百も承知で、侍女たちは面白がって言っているだけだろう。だからどうかお嬢様、騙されないで下さい。と思うが、無理だろうなぁ。


はぁ、正直もう勘弁してほしい。

というか、もうお嬢様のことはとても好きで離すつもりはないので、無理にぐいぐい来ないで大丈夫ですよと早く伝えたい。

色々な意味で早くソフィエお嬢様と二人きりになりたい。

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