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冤罪令嬢と青い死神の逆襲  作者: 崖淵


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第31話 反逆のクラーラ

ふぅ、私は大きくため息をついた。ようやく一息つけた気分だ。

先日王太子の裏切りに遭い、私はライデン辺境伯に売られるところだった。囚人車に押し込められた私が、ライデン辺境伯領に向かって王都から出た直後にスラム街の住人たちが襲撃し、見事助け出してくれたのだ。


「ありがとう、よくやってくれたわね。」


「いえ、当然のことです。」


そして私は目の前には額を床にこすりつけている男、ピータに礼を言って頭を上げさせた。私の救出劇はこの男が中心となって行われた。

ここは王都の産業区画の裏通りにある人材派遣会社で、ピータはその社長。

度々経営のアドバイスをしてあげているが、もう私の力なんてなくてもやっていけるでしょうに。今でもオーナーとして私を立ててくれている。律儀な男ね。

髪の毛をかき上げながら、ふふふと笑いかけるとピータの顔が真っ赤になった。


ピータを元締めとして始めたスラム街孤児を労働力とした集金システムは、軌道にのった2年目あたりで商業ギルドに労働力派遣業として登録、起業していた。しばらくは自分がTOPとしてピータを手足のように使って業績を上げていった。当初の街道整備の人足だけでなく、街工房の掃除片付けの雑務や商家の倉庫業務などの単純労働への労働力を中心にスラム街の住人を派遣していた。そして頃合いを見て、ピータに全てを任せるようになっていた。ピータは私のやり方を踏襲し、堅実に利益を増やしていた。

現代の人材派遣と違い単純労働者が中心の派遣会社だが、いまや数百人以上を常時派遣している一大企業となっていた。そして性格的に働くには適さないが、揉め事や荒事専門の力自慢たちも傘下にいた。先日、私の囚人護送隊を襲ったのはこの連中だ。もちろん表向きは会社とは関係ないことになっている。


この部屋はその人材派遣会社の社屋の一番奥にあるオーナールームだ。

王太子邸とは比べるべくもないが、小さいとはいえ真っ赤なベルベッドの絨毯にふわふわなソファ。一般市民と比べれば十分に贅沢な部屋だ。私は逃亡中の身、しばらくここで息を潜めることになる。もちろん、私がこの会社の実質的なオーナーであることは秘められている。

そして、私はこの恨みは忘れない。


「私をこのような苦境に追いやったライデン辺境伯家と王太子に復讐がしたいの。手伝ってくれるかしら。」


「もちろんです。」


「ありがとう、ピータ。」


「お任せください。まず、どうなさるおつもりで?」


「そうね。まずは距離的に近くて、しかも私をこの上なく侮辱してくれた憎くて憎くてたまらない王太子から始めましょうか。王都や近隣の都市で噂を流しなさい。『今フランティエから攻められているのは、王太子のせいだ。王太子のわがままがフランティエを怒らせた。王太子をなんとかしないとこの戦争は終わらない』と。」


「ははっ、かしこまりました。」


「ライデン辺境伯に対してはそうね、まずは情報を集めなさい。そして辺境伯領の都市に人を潜り込ませなさい。今の人材派遣業の一環として現地で働けるのがいいわね。」


ピータは人を呼んでさっそく指示を与えている。

とりあえずはこんなところかしら。

でもこれだけじゃこの会社に迷惑をかけるだけだから、事業のアドバイスもしましょうかね。


その後、ピータには私はこの社屋の一帯の土地を買い上げ、社宅として運用したり社食を提供したりと、社員の衣食住改善案を提示した。ピータはそれも疑いもせずに実行したようだ。

反応は概ね良好で、既存従業員の会社への忠誠度が上がり、さらに従業員が増える結果となった。特に社食は出色の出来で、安価で朝食夕食が食べられるのはスラム街の住人にとっては天の配剤だった。

そして本社の周囲を買い上げ社宅化して周囲を社員で固めた結果、ここに潜むクラーラ自身の安全度も飛躍的に上がることになった。王都の治安部隊が数人で乗り込んできてもすぐに追い払われるだろう。


ピータの私を見る目が、まるで神を崇めるような感じになってきたのは間違っていない気がする。



そしてその1カ月後、とうとうフランティエの侵攻を受けていた大都市リーレが陥落する。しかし、フランティエは戦争を終わらせる気配を見せなかった。そして、クラーラが王都で流した『戦争が終わらないのは王太子のせいだ』という噂がいい感じに広まっていた。


「ふふ、いいわね。じゃあ次はこんな噂を流しなさい。

『謝罪しない王太子の態度に業を煮やした英名な王は近々王太子を廃嫡する』ってね。」


さて、王太子も王もどう動くかしら。見物ね。

クラーラはにやりと笑いながら、白いワインを傾けた。

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