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冤罪令嬢と青い死神の逆襲  作者: 崖淵


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第28話 地下牢

私はライデン辺境伯家に引き渡すために、石壁から滴る水音が響く暗くてジメジメとした地下牢に幽閉された。昨日までの豊かな生活からまたスラム時代に逆戻りした気分だ。


「へへっ、ざまぁないな。」


牢屋の向こう側の王太子の取り巻きの一人にそう言われると「ぺっ」とツバを吐かれた。それが私の頬にかかる。


くっ!


私は汚いツバのついた頬を拭う。

牢屋に入れられるまでの間に、今までの憂さ晴らしとばかりに王太子の取り巻きたちに、自慢の髪の毛を強く引っ張られたり、何度もお腹を蹴られたりした。

昨日までは、私があごで使ってやっていた存在のくせにっ!


「王太子殿下が翻意してくださったら、あんたたちなんて王太子妃命令で死刑にしてやる!」


その可能性を考えてその男は一瞬ビビったようだったが、気を取り直したのか


「ははは、そんなことあるわけねえだろ。お前はこのままライデン辺境伯家に生贄の羊として手渡されるだけだ。元々お前のような下級貴族が王太子妃になんてなれるわけないだろうが。あほらし、じゃあな。」


男が再度私を侮蔑しながら地下牢から去っていくと、途端に悔しさでいっぱいになる。スラム街から男爵令嬢という身分を手に入れて抜け出し、孤児を統率して資金を稼ぎ、ひたすら勉学に励んで王立学園に入学して、辺境伯令嬢を追い落として王太子の寵愛を得た。ここまで全て上手くいっていたのに。


「なぜ、なぜなの。王太子妃で全てが私のものになるはずだったのに、何が間違っていたの?

ほぼ王太子妃という頂点まで昇りつめたはずなのに!

どうしてっ、悔しい!」


暗い地下牢に私の叫びが虚しく響く。


お気付きだと思うが、クラーラは前世の記憶がある転生者だった。

前世はお化粧やオシャレ好きでそっち方面には詳しい、だけど至って普通の女子大生だった。イケメンをモノにするために、ライバルの女子を詐術に嵌めて蹴落としたことは数多くあれども、本気の権力争いを制してきたわけではない。

一般教養として中世の貴族の知識はあっても、そこまで歴史に詳しいわけでもなかった。

不運もあったが、男爵令嬢は彼女の想像以上に力がなく、それゆえにクラーラの王太子妃への反発も大きかったし、彼女の勝ち誇った態度もよくなく、思った以上に味方の中にも敵を作り過ぎたのだった。

ソフィエを王太子妃の座から蹴落したまではよかったが、王太子妃の座を過信し過ぎたゆえに、世界情勢や政治、身分制度といったあたりにクラーラが無関心過ぎたゆえに招いた失敗だったといえるだろう。




数日後、王太子が取り巻きや側近を引き連れて、地下牢にやってきた。そして側近のマールテンが公文書らしきものを広げ、冷笑しながらこう言った。


「喜べ、お前はライデン辺境伯家に引き渡されることとなった。あちらにかわいがってもらって、せいぜい最後くらいは王太子殿下のお役に立つことだ。」


そしてその側近の後ろから王太子が顔をのぞかせた。自分に酔っているのか、胸に手をやりながら、切なそうにこう切り出した。


「すまないな。クラーラ。このようなことになり私も心を痛めている。だがこれはもう決まったことだ。お前の比類なき美貌と献身は忘れな……ん?誰だ、こいつは。俺はクラーラのところにつれていけと言ったのだが。」


「「「えっ」」」


それは誰の「えっ」だっただろうか。

私は連日の牢屋暮らしですっかりメイクが落ちていた。それゆえに、私は王太子にクラーラと認識されなかった。側近がそのことを指摘すると今まで私を優しく包んでくれていたあの瞳はどこへといったという感じの冷たい目で見られた。


「確かに、面影はある…くそっ、なんということだ。俺は今までこんなハリボテ女のためにこんな苦境に立たされていたのか!すべてはこの女のせいか!」


それはあなたの目がふしあなだっただけで、クラーラのせいじゃない…と誰もが思ったあたりで、私は王太子に牢屋越しに胸の辺りを固い革靴の先端で蹴られ、思わず息が詰まる。


「はんっ、これならば何の罪悪感もないな。むしろ、王太子を偽った罪をライデン家でその身に十分に受けるがいい。拷問でもなんでもな。全ての罪はコイツにあると先方にもそう伝えてやれ。もしかしたら少しは留飲を下げてくれるかもしれん。

もうこんなところに用はない、行くぞ。」


そういって最後にもう一度私を蔑む目で見ると、王太子はマントを翻して地下牢を出ていった。


何か言い返したかったけど、胸を蹴られて息が詰まって何も言えないうちに出て行ってしまった。

くっ。今のは王太子といえど許せない。

すっぴんとの対比に言及するなんて、この世の誰であろうとしちゃいけないことよ!

この侮辱…晴らさずにいられない!!!

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