第20話 連戦連勝
初戦は問題なく勝った。こちらが逆侵攻すると思っていなかっただろうから、敵には特に備えがなかったからだ。だけど、ここからは違う。相手も死に物狂いでこちらの侵略部隊を撃破してこようとするだろう。相手が動き出す前にもう一つくらい村を焼いておきたいところだ。
部隊をまとめると近くで伏せていた本体と合流する。
そして先程とは違う20名の騎兵を私とソフィエお嬢様が率いて次の村に向かう。
「次の村くらいまでは問題なくいけるかしらね。」
「おそらくは。」
2つ目の村も問題無く焼くことに成功した。ただし、村を焼いている間に斥候が来ていたようで、伏せていた部隊が狩ったようだ。
「そうですか。まずいですね。」
「そうね。知られてしまったからには、次からは簡単じゃないわね。」
「いえ、そうではなく、斥候には帰ってもらってこちらの数を報告して欲しかったのです。」
「え…あ、なるほど。斥候を狩ったとはいえ、結局は帰ってこない斥候の派遣先から我々の位置が相手から推測されてしまう。それならば、せっかく20人で襲撃したという情報を持ち帰ってもらった方がよかった。敵の数が分からなければ、大軍を出すか、様子見をするか、どちらにしろ我々にとってはあまりよくないのね。」
「ええ、20人の敵に対して、50人くらいで攻撃してくるような相手だと良かったんですけどね。敵の数が分からなかったら、いきなり多めの数をぶつけてくるか、更なる情報を得ようとするでしょうね。」
「後者なら、我々はそのままいくつか村を焼けばいいけど、相手の出方が分からないからそう簡単な話ではないと。」
「はい。そうなります。」
「とはいえ、相手が出方を窺っているうちにもう一ついけそうな気がするわ。索敵を密にして、次の村を狙いましょう。」
最初に焼いた村の住民が20人くらいと報告してくれればいいのだけどな。ただ、パニックになった村人が数百人規模で攻めてきたとか言う可能性もあるが。
結果的には3つ目の村もほぼ無傷で焼くことに成功した。
焼いている最中に村の外で剣戟が聞こえた。向かってみると、騎兵ばかりが50ほど敵の援軍として来ていたようだ。それを村の外で伏せていた本隊が敵の横っ腹に奇襲を仕掛けたらしい。兵の数はこちらが倍以上で、しかも待ち構えて奇襲という結果で、ほとんど討ち取ることができた。さすがにこちらも無傷とはいかなかったが、これは大きい。エーヘン伯は歩兵が中心で騎兵はあまりいないのだ。
騎兵を失った彼らとの今後の戦い方が楽になるだろう。死傷者も出たことだし、ここで一旦ケルミス砦に戻ることにした。今のところの作戦は大成功だといえる。
その後も我らが部隊によるエーヘン伯領の村焼きは続く。
こちらの騎兵の総数も把握されたのか敵は500~1000程度の歩兵の部隊をいくつか作り、こちらを捕捉しようと追ってきたり、村に罠を仕掛けて我らを撃破しようとしたりしているようだが、今のところは敵の狙いを空振りさせているようだ。
天幕の中にはソフィエお嬢様と私と士官が4名ほどで軍議をしていた。
テーブルの上のエーヘン伯領の地図と斥候が持ち帰った情報を照らし合わせながら、次の襲撃予定の検討をしている。ここからはいくつかの襲撃先候補地があるが、一番近い村を指さしてソフィエお嬢様は言った。
「ここの村にはきっと罠があるわ。ここは避けましょう。」
「なぜにここの村に罠があると?」
「そうね。今まではこことこことここを我が部隊は焼いてきたわ。」
とお嬢様は我々が今まで焼いてきたルートを示す。
「敵からすれば、次あたりはここを焼いてくるという想定と、この村は場所的にこの近辺のハブ的な村ね。物資も豊富そうだから、敵にしてみればここを焼かれたくはないでしょう。それを裏付けるようにほら。」
私は斥候の報告書をいくつか渡される。そこには兵数の増減が示されていた。なるほど。巧妙に偽装しているようだが、この村は兵の出ていく数と入ってくる数に差があるようだ。もちろん入っていく数の方が多い。
「なるほど。」
「こことここの村もこのハブ村からの援軍を出しやすい位置ね。だから、こちらの村を焼きましょう。それから、ここのルートを通ってこちらの村を焼きます。とりあえずこんな感じでどうかしら。」
我らに異論はなかった。説明も根拠も納得のいくものだったからだ。
そして結果的にソフィエお嬢様の読みはやはり正確で、罠を張られている村は素通りして、無防備な村を次々に焼いていく形となった。敵に騎兵がいなくなったので、焼いては逃げるを繰り返すだけでいいのは助かっている。
二桁に迫る数の村を焼いたところで、エーヘン伯はしびれを切らしたのか、ついに四千もの兵を率いて、国境の我らのケルミス砦を目指して進軍をしているとの報告を受けた。




