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冤罪令嬢と青い死神の逆襲  作者: 崖淵


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第14話 ティボー将軍

オフの翌日、私はいつもどおりにお屋敷内にあるソフィエお嬢様のもとに出仕する。お嬢様の執務室は、日差しがたっぷりと差し込む明るい室内に、白い壁紙に淡い茶色の木のデスクが置かれている。そしてところどころに花が飾られたとても女性らしい華やかなお部屋だ。

着くとソフィエお嬢様は侍女と何かを話しながら、紅茶を飲んでおられた。

早速ジンジャーブレッドを手土産と侍女に渡すと微妙な顔をされた。なぜだろうか。そう思い不思議な顔をしていたら、


「ディルクは気が利くのか、鈍いのかよく分からないわね。」


とお嬢様に言われた。侍女もしきりに頷いていた。

お土産をもってきたのに、なぜ出仕して第一声からけなさられなければならないのか。解せぬ。


その後、報告書などの書類整理をしながら、ジンジャーブレッドをお菓子にソフィエお嬢様とティータイムとなった。

そこでお嬢様の話を伺う。前日にはお嬢様と公子カスパルとの間で会談があったようだ。その場でソフィエお嬢様は、今後はライデン辺境伯家のために、戦場を含めて働きたいと告げたようだ。


ライデン辺境伯家は、陣頭に立って戦える血族が少ない。ライデン辺境伯の実子は現在、嫡男であるカスパル公子とソフィエお嬢様しかいない。カスパル公子とソフィエお嬢様の間に男子が一人いたが、先年隣国のブランデリック帝国の諸侯であるエーヘン伯との小競り合いで受けた矢傷が元で亡くなっている。


そしてカスパル公子は、本人があまり戦場に立つタイプではないし、万が一公子が亡くなると、ライデン辺境伯の跡継ぎ問題が発生してしまう。カスパル公子とその夫人との間に先年男子が誕生してほっと一息といったところだが、まだまだ赤子だ。公子カスパルはある程度年齢がいっているライデン辺境伯本人以上に、死なせるわけにはいかない御仁だ。他にも辺境伯の弟である叔父もいるが、こちらは辺境伯領の南端にあるルクセンブルックの領主を任せている。リュージュから少し離れている領都の次に重要なこの都市を任せられる人物は他にいない。


なので、ソフィエお嬢様が戦場に立って指揮を執るということ自体は、ライデン辺境伯家としては歓迎すべき話だが、兄としてそれを歓迎するかどうかはまた別の話だったようだ。


二人の話し合いは紛糾したが、ソフィエお嬢様がティボー将軍の指揮下に入り、全てその指示に従うという条件付きで、最終的には公子が折れたらしい。

そのため今日はティボー将軍の元に挨拶に向かうこととなり、私も第一騎士として随行する。


将軍府に到着すると、さっそくティボー将軍が出迎えてくれた。ティボー将軍は先代の辺境伯から仕える50歳をゆうに過ぎた歴戦の将軍だ。白髪が混じる銀の髪は短く切りそろえられ、強面こわもての顔つきとは裏腹に、お嬢様を見る表情は明らかに緩んでいる。


「これはソフィエお嬢様、よくお越しくださいました。」


おい、ライデンの鬼と言われた普段の威厳はどこへいった。これではただの好々爺ではないか。と言いたいが無理もない。ティボー将軍にとってお嬢様は、生まれた時から知っている孫のような存在だ。


「爺。いや、ティボー将軍。これからは将軍の元で研鑽を積むことになる。よろしく頼む。」


とお嬢様が両手を胸の前で合わせて、礼を取りながらそう言うと、ティボー将軍の顔は急に真顔になった。


「お嬢様、一つだけお約束ください。敵を倒した者が勝者ではありません。生き残った者が勝者です。敵を倒してその戦に勝っても死んでしまえばそこまで。次の戦では全く役に立てません。生きていれば次があります。それだけはお忘れなきよう。」


お嬢様は神妙な顔つきで頷いている。

そして将軍はお嬢様をじっと見たまま、こちらを見向きもせずにこう言った。


「ディルク!言われんでも分かっているだろうが、お嬢様を頼んだぞ。」


私は「はっ」と短く返事をした。

私は12歳までこのティボー将軍の元で我が子同然に育てられ、そしてみっちり鍛えられたのだ。だから私にとっては親替わりでもある。私の両親は共に騎士で、ある戦で二人とも戦死したらしい。その時まだ幼子というか赤子であった私をティボー将軍が引き取ったというわけだ。

15歳までは将軍の元で戦場を駆け回り、15歳になると同時に両親の騎士の位を引き継いだ。ティボー将軍に言わせるとどこに出しても恥ずかしくない騎士になった。私の両親にやっと顔向けができると。

そして同年齢だったお嬢様の第一騎士となり、王都の学園でお嬢様とともに通学することになった。というのがここまでの流れだ。


そしてティボー将軍は自身の配下から200名ほどをお嬢様に預け、二週間ほど訓練した後、目下小競り合いの続くエーヘン伯領との国境のケルミス砦までの輸送及び哨戒任務につくように命じられた。

現在も小競り合いが続く敵がいる方面とはいえ、最前線には味方の砦がある自国領内であり、危険はほぼ無いだろう。まだ経験の浅いお嬢様にはちょうどよいかもしれない。

お嬢様は軍人というよりは、まだ令嬢らしさが抜けない華やかな敬礼でその任務を拝命していた。

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