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冤罪令嬢と青い死神の逆襲  作者: 崖淵


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第10話 帰郷途中の襲撃

城塞都市ナムールまでの旅程の2日目、先程からこちらを窺う斥候らしきものがちらちらと目につくようになってきた。初日からそれらしき者はいたが、大都市ブリューゼルの近くで人も多く確信はなかったが。

やはり来るのか。相手が正規兵であれば規模によってはまずいかもしれないな。お嬢様にも万が一に備え、防具の着用をお願いした。もちろん私も今日は朝から武装はしている。


「お嬢様、やはり何者かが我ら一行を狙っているようです。我ら全力を尽くしますが、万が一を考えてお嬢様も防具の着用をお願いします。」


「ええ。ディルク、頼りにしているわ。」


となりのメイドはいかにも不安そうだが、お嬢様は落ち着いておられ、しかも私を心から信頼しているかのような笑みで送り出してくれた。これは期待に応えねばなるまい。

私はお嬢様に頷いて馬車を降りると、馬に乗り従卒からボルトが装填済みのクロスボウを受け取る。そして目障りな斥候を狙って……撃つ!


――ヒュンッ!


カッ!矢が後方の木に刺さる。

ちっ、避けられたか。やはり距離があるし、そう上手くはいかないな。

従卒に撃ったばかりのクロスボウを渡し、次のクロスボウを要求する。

今度は先程とは違う前方にいる斥候に対して照準をつけずに、クロスボウを受け取ると即座に発射する。


――ヒュンッ!


「ぐああっ」


構える前に撃ったため油断していたのか、見事斥候らしき者に命中し、胸を押さえて倒れる。味方から「おお……!」と賞賛のどよめきの声がおこる。


確かにちょっと距離があったが、斥候を一人くらい倒したところで戦況に影響はないので、あまり誇る気にはなれないな。


とはいえ、辺りのこちらを窺う気配が一斉に消えたのはいいことだ。散発的とはいえ、周辺から攻撃されたくはないし、斥候もどきを狩るのにいちいち部隊を回すのも手間である。


恐らくこの先の森の入り口、もしくは入ってすぐのあたりで待ち伏せしているのだろう。

敵の数がそれ程多くなければ、我らが敵を撃退するまで馬車にはそのまま待機してもらう方がいいが、多ければ我らが血路を切り開いて、馬車には敵陣を突っ切ってもらい、我らは命に代えてもその撤退を援護する。


先程射殺した斥候らしき者の死体のそばを通過した。兵というよりは流民や盗賊といったところか。まぁそうだな、正規の斥候であれば約200メートルもの距離のクロスボウを、油断して避けられないなどありえないからな。


これなら盗賊や脱走兵などの正規兵くずれをどこかの貴族から派遣された者が指揮する形で率いている感じか。

やはり公道で正規兵をもって辺境伯家を攻撃するのは、その後のことを考えれば成否にかかわらずリスクが大き過ぎるからな。いかにライデン兵が強兵の集まりとはいえ、正規兵を相手にしなくてよさそうなのは僥倖だ。


さて正面の森が見えてきたが、街道の左右に兵を伏せているのが分かるな。どうやらそれを隠すつもりはないらしい。

部隊長に合図を送ると、部隊長は右手を挙げて一度隊列を停止させた。

相手は手ぐすね引いて待っているのだ、こちらも準備を万全にするべきだろう。

この部隊に配備された15丁のクロスボウ全てにボルトをセットさせて、待機させる。


ふむ。向こうも地の利を放棄する気は無いのか、森から出てくることはなさそうだ。

盗賊もクロスボウはあるだろうが、ライデン辺境伯のものよりは質が悪いだろう。

部隊長は森まで150mの位置から兵たちに一斉に射撃させた。


――ヒュヒュン、ヒュン!


音を立てて矢が飛んでいく。15人で一斉に撃つとそれなりに壮観だ。

この距離なら敵の質の劣るクロスボウでは届かないだろう。

距離もあるし、相手は森にいて見えないので命中は難しいが、出てこないなら撃ち続けてやるだけだな。たまに一人二人当たるやつもいるようだしな。


何度目かの一斉射撃のあと、寄せ集めどもはしびれを切らしたのか森から一斉に駆け出してきた。その数は50~60人弱くらいか?賊にしては結構集めたなというのが正直な感想だ。

クロスボウはボルトの装填に時間がかかる(10秒弱)ものの、150m先から武装した兵が駆けてくるのだ、少なくとももう1射はいけるだろう。

再装填が終わり、50mの距離まで引き付けてから射撃指示を出す。ほとんどが命中し、ばたばたと10人ほど倒れる。クロスボウを持っていた兵士は武器を槍に持ち替えて敵を迎え撃つ。


盗賊あがりの敵を槍を揃えて迎え撃つのは辺境伯軍の強兵だ。数の差はあまりない。こうなると勝負は火を見るよりも明らかで、正面からぶつかるとそれだけで敵が何人も倒れた。

私は騎乗したまま長槍をもってその敵の戦列に突っ込むと、巧みに馬を操りながら、槍を一振りするごとに敵兵を一人葬り、瞬く間に十人程の敵兵を討ち取った。

この護衛隊のライデン兵も鍛えられた強兵揃いで、一糸乱れぬ統率のもと盗賊たちは次々に討ち取られるか降伏した。

こちらの被害は兵士数人が軽い怪我をしたくらいだ。


部隊長が近くに寄ってくる。

私は騎士であるため部隊長より階級は上だが、隊をまとめながらお嬢様の護衛をするのは重荷なので、辺境伯は彼を部隊長として一任しており、私も道中は彼を立ててきた。何より私よりも歴戦の年長者でもある。


「さすがは音に聞くライデンの青い死神ですな。お見事です、助かりました。」


青い死神というのは、私が数年前の戦争で数多くの敵を打ち倒した時に、辺境伯より拝領した鮮やかな青い鎧をまとっていたため、畏怖からか敵からそう呼ばれたらしい。そして今もその青い鎧を身にまとっている。


「いえいえ。私がいなくてもこの程度の敵なら、この部隊だけでも遅れは取らなかったでしょう。でも、あまり時間をかけるとお嬢様が出撃したくなってしまうかもしれませんからね。私も頑張りました。」


「そんなことになっては大変困りますな。やはりディルク卿に援護いただいてよかったです。アッハッハッハ」


その後は特に問題なく城塞都市ナムールに無事到着した。ほっと一息といったところだな。

先程の戦闘での敵の生き残りの捕虜はここで引き渡した。

ナムールは辺境伯領なのでお嬢様がいるこの一行はとても歓迎を受けた。


途中戦闘もあったので、一行は数日休息をとることにした。明日からは船でマース川を下り領都リュージュに向かう。

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