04:事実は小説よりも奇なり
「ところで、ここどこなんですか?」
「アンヴァイト大陸セルクル王国の首都アシレルだ」
「あ、アンブト大陸のセルルク王国、首都アシラル?」
「アンヴァイト大陸のセルクル王国、首都アシレル」
「アンヴァイト大陸、セルクル王国、首都アシレル!」
「よろしい」
小学生の戻った気分だ。しょうがないよ、ここ異世界だしね!
それにしても・・・・・ディアさん。その眩しい笑顔を真っ直ぐ向けるのはやめて下さい。
赤ちゃんに初めて名前を呼ばれたお母さんみたいな顔してますよ。
無駄に心臓がバクバクする。私はそっとディアさんから視線をずらした。
「ちなみに、ここはセルクル王が住まうデベール城の中にある試験塔の休息場所です」
「え!!ここお城の中なんですか!」
「城の中というより城壁の中っていったほうが正しいけどな」
「ヒナちゃん、あっち見てみて」
ロッソ君が指差した方を見ると、綺麗な青空の下に白いレンガの建物が少し覗いている。
「ここからだと物凄く見にくいんですけど、あれが僕達の主が住まうデベール城です。今日のような天気のいい日に見ると壮観ですよ」
「デベール城はセルクルの観光名所の一つで、世界に2つとない美しい城だと言われているんだ」
ロッソ君とディアさんの誇らしげな顔を見た私はなんだか嬉しくなった。
「へー!素敵!ちゃんと前から見てみたいな」
「これからいくらでも見る機会はあるさ」
「そうですよね!楽しみです」
ほんのちょっぴり見える壁から、デベール城の姿を想像する。
白い壁が光を反射してキラキラしているのが分かった。すっごく綺麗なんだろうなぁ
「セルクルは商業でも有名なんですよ。落ち着いたら一度遊びに行きましょうね」
「あぁ、それはいいな。うまい飯屋なら俺にまかしとけ」
ロッソ君の提案にディアさんがさっきとはまた違った笑顔を浮かべながらそう言った。とっても楽しそうだ。
もしかしてディアさんは食いしん坊なのかもしれない。そう考えると、この美貌の君に親しみを感じた。私も美味しいものは大好きだ!
商業の国かぁ。楽しみだな!異世界堪能しちゃうぞ~
私は、まだ見ぬ異世界の町に思いを馳せた。
にやにや
傍から見たらさぞ怪しいだろう。
「まぁ、観光については今は置いといて、ヒナちゃん」
「はい」
「たぶん勘違いしてるだろうから教えとくね」
勘違い?
私が何か勘違いするようなことがあっただろうか?
は!もしやディアさんは本当は女の人だったとか!?ありえる!
でも私、裸(上半身)見てるからなぁ
「会った人みんなが騙されるんだけど、ディアさん今年で42だよ」
「別に騙してるわけじゃないだろう。これは血筋だ」
「それにしても限度ってものがあるでしょー。ディアさん鏡見てます?」
「失礼だな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」
「ヒナちゃん。ディアさんは42歳なんだよ」
「よんじゅう・・に?ディアさんが?」
「そうそう。あ、ちなみに僕は17だよ」
うん。ロッソ君は予想通り。私の1つ上かぁ。
って
そ・ん・な・こ・と・よ・り!ディアさんが42歳ってどういうことだぁ!!
多く見ても二十歳後半にしか見えんぞ!
「うっそ~・・・」
「事実だ。先月なったばかりだが」
「え、あ、誕生日おめでとうございます」
「!・・・あぁ」
ディアさんがちょっと驚いた顔をしている。そーですよねー今更誕生日おめでとうございますも何もないですよね~。落ち着け!私の思考回路!
でも、そっか、42歳。26歳差かぁ。おっきいなぁ。意外な事実が発覚してしまった。
もしディアさんが私の世界にいたら、妙齢のお姉さま方から質問攻めにされるんだろうな。
「なんかもう詐欺ですよね」
「ですよね~。僕もそう思います。この顔に騙された男は数知れず・・・」
「男・・・・・ディアさん綺麗ですもんね」
「そうなんですよ~。よく女の人に間違われるんですけど、本人あんまり自覚がなくて。これでも最近ちょっとマシになってきたんだけどね」
「へ~・・・・お疲れ様です」
「あはは」と困ったように笑うロッソ君は、意外と苦労人なのかもしれない。
ディアさんは無自覚にいろいろ誑し込んでそうだ。天然って怖い!
「ディアさんの場合は稀に確信犯だから性質が悪いんだけどね」
「え?」
「ロッソうるさいぞ。ヒナもこんな話聞いてないで、紅茶を早く飲め。冷めるぞ」
「ぅわ、はい!」
いきなりの名前呼びに顔が熱くなった。きょ、凶器だ!美人怖い!心臓止まるかと思った!
赤くなった顔を隠すために慌ててカップを傾けた。ディアさんが淹れた紅茶は冷めていても十分美味しかった。
総PV1000越えありがとうございます!
現実味がなくて逆に怖くなってきました
これ夢じゃないですよね?