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02:子犬と美人と謝罪と





私が連れて来られた場所は、2階のバルコニーだった。

そこには小さな真っ白い机と、3脚の椅子があり、私は今その中の1つに腰かけている。








○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○








光の眼が慣れた頃、改めて2人の人物を見て私は物凄く驚いた。

2人とも相当のイケメンだったのだ!!


膝に手をついてゼーゼー言っているのは、愛らしい顔をした男の子。

茶色の髪は先がくるりと跳ね、緑色の瞳はくりくりしている。私と同じか、それ以上の歳のはずなのに、可愛い子犬を連想させる。


その男の子を叱っていた(であろう)、もう1人の人物は・・・・・・・・・・凄い美人さんだった。

“絵にも描けない美しさ”とは、この人のことを言うのかもしれないと半ば本気で考えてしまうほど、洗礼された美しさだった。長い銀の髪がさらさら流れ、紅い瞳は強い意志の輝きを秘めている。

あまりの衝撃に(そう・・・衝撃なのだ!!)頭の中が真っ白になり、呆然とその男性を眺めることしかできなかった。

ちなみに、なぜ男だと分かったかというと、その人が(なぜかは分からないが)服の前を肌蹴ていて、真っ平らな胸と細身ながらもしなやかな筋肉がついているのが見えたからだ。歳は22,3だろう。


「ディアさんの美貌は世界を超えるんですね」


私の様子を見てか、子犬少年が美人さんにそんなことを言っている。


「なに意味分からないこと言ってるんだ」


眉を寄せる様さえも美しいこの方はディアというらしい。

名前もなんだか綺麗だ。


ふいにディアさんがこっちを向いたので、私はビクッと過剰反応してしまった。


「一応確認しておくが、お前、俺達の言葉は分かるか?」

「ぁ・・・はい!分かります!」


まさかのお前呼びに驚いて、応えるのが一瞬遅れてしまった。


「良かった!言葉が通じるって凄くありがたい事なんだねぇ、ディアさん!」

「ロッソ。少し黙ってろ」

「はーい」


子犬少年の名前はロッソというらしい。

思わずローソンを思い浮かべてしまった私は、意外と冷静じゃないのかもしれない。


「ここじゃなんだ。移動しよう。構わないか?」


ディアさんは結構、高圧的な喋り方をする。その事に不快感を感じないのは、この人の人徳だろうか?

私は素直に頷いたのだった。








○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○








現在



オタク系の友人がわざわざ描いて見せてくれたモノとはまったく異なる、淡い青色を基調とした清楚なメイド服に身を包んだ給仕さんが、琥珀色をした液体を高そうな白いカップに注いでくれている。

匂いからして紅茶だろうとあたりをつけてみるものの、ここは異世界。一体何の液体なのか非常に気になるところだ。


「これはウバ茶にジェリムの実を濾して入れてあるんだ。ウバ茶は知ってるか?」


私の表情から色々と察してくれたらしいディアさんが、わざわざ説明してくれた。


「・・・私の世界にもウバ茶って名前の茶葉がありました。同じものなんでしょうか?」

「さぁな。まぁ、一杯飲んでみろよ」

「ぅぅ・・はい」


私の視界のど真ん中で、ロッソ君が美味しそうにこのお茶(?)を飲んでいる。というか、流しこんでいる。給仕のお姉さんも心得ているのか、一瞬にして無くなるカップの中身を、リズム良く注いでいる。あれだ。蕎麦の大食いみたいな。


私の右隣に腰かけたディアさんも上品にカップを傾けている。

何をしても絵になる人だなぁ・・・。

感心してディアさんを眺めていると、眼が合って、私も飲むように無言で促された。


の、飲みますよぅ!


「・・・・・」


ごくり


「おいしい・・・」


なにこのお茶!美味しい!物凄く美味しいよ!!

紅茶の芳ばしい香りと、程良い酸味。そんでもって、果物特有のくどくもなく、あっさりしすぎない自然な甘さが口いっぱいに広がって、思わず頬が緩んだ。


「でっしょー!このお茶はディアさんが淹れたから格別に美味しいんだよ!」

「え!このお茶ディアさんが淹れたんですか!」


とっさにディアさんの方を向くと頷かれた。

美人でお茶淹れるの上手いとか何だそれ!?これで女の子だったらディアさんモテモテじゃないか!!



空気が微妙に和んだところで、ロッソ君が立ちあがって頭を下げた。


「僕の不手際であなたを異世界から無理矢理召喚してしまい、申し訳ありませんでした!」


・・・!?

突然の謝罪にどうしていいか分からずディアさんを見ると、「きちんと聞いてやれ」と言われた。

な、なに!?なんなの??


「貴女には心配する御家族や御友人がいらっしゃるでしょう。もちろん、貴女がここで生活する間の衣食住は用意しますし、ロッソ・スカルノの名に誓って必ず貴女を元の世界へお返しします。しかし、僕が魔法式の最終見直しを怠ったことがすべての原因です。どんな罰でも申し付けてください。」


そう言ったままロッソ君は顔を上げない。

どないせぇっちゅうねん!

困った私は、やっぱりディアさんの方を見た。そんな私を見かねたのか、ディアさんが口を開いた。


「お前はこいつに召喚された」

「はい」

「召喚者は召喚したものに責任を持て、というのがこの国の法だ」

「へぇ」

「お前は元の世界に帰れる。これは俺のディア・アイライズの名にも誓おう。それと、ロッソによってこの世界にいる間のお前の衣食住も保証された」

「はい」

「だが、むかつくだろう?」

「は?」

「いきなり召喚されて、家族、親友から離されて、文化が全く異なる異世界にただ1人放り出されて」

「・・・」

「その代償を払わせてくれと、こいつはお願いしてるんだ」

「・・・・・」

「何でもいい。ソレに見合うだけの罰なりなんなりを、こいつに与えてやってくれ」

「・・・・・」


どうしよう・・・。困った。

そりゃあ、突然の異世界召喚には驚いたし、家族や友達と会えないのは寂しい。

でも今、ロッソ君とディアさんが絶対元の世界に返すって約束してくれたし・・。いや、まぁそれがどれくらい時間がかかるのか分からないけど。

あ、それでいいか。


「・・・・あの、ディアさん・・・」

「ん?」


うっ、首を傾げたディアさんの威力半端ないな・・・。

くそう!羨ましくなんか無いんだから!!


「・・どんな仕事よりも最優先して、私が元の世界に戻れるようにすること!って・・・ありですか?」

「・・・・・いいんじゃないか?ロッソ?」

「・・・・・・・・それでいいんですか?」


やっと顔を上げたロッソ君が不安そうな、不満そうな顔をした。


「もっとこう・・・一発殴らせろとか、お前今日から私の奴隷ね!とか、ここから飛び降りろ!とか」

「な、なにその例え」


最初のはともかく後の2つは・・・いいのか?!


「えー。でもこれ、昔ホントに下された罰なんですよ?」

「どんなサディストさんっ?!」


こ、怖~・・・。奴隷って、まさか女王様?んな馬鹿な。


「どんな無理難題だされるのか楽しみにしてたのに・・・」

「それはそれでどうなのかと・・」


ん?待てよ。ってことは、私以外にも間違って召喚された人がいるってこと?


「あの!私のほかにも召喚された人って・・・!」

「あぁ、いるぞ」

「!」


やっぱり!・・でも、ちょっと返事が早すぎるぞ、ディアさん。もしかして、私がこのことを聞くって分かってた?



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