12:ディアさんの魔法講座1
「2人でなんの話してたんだ?」
軽い昼食を食べ終わり、食後のお茶を私、ディアさん、ロッソ君、フィルちゃんの4人で飲んでいると、ディアさんがそんなことを聞いてきた。
「精霊との契約についてロッソ君に教えてもらってたんです」
「ロッソが・・・教える・・?」
物凄く怪訝そうな顔をしたディアさんがロッソ君を見やる。
ロッソ君は明後日の方を向きながら、お茶を啜った。
「ヒナ。ロッソの説明で理解できたか?」
「え、はい。・・・・・・・・・・・・・・・たぶん」
「はい」と言った後、ディアさんにあまりにも疑わしげな顔をされたので、最後に余計な一言を付け加えてしまった。
なんでロッソ君が説明したというだけで、こんな顔をされるんだろう?
頭の中の疑問が顔に出ていたようで、フィルちゃんが苦笑しながら教えてくれた。
「ロッソは学院でいつも赤点ギリギリを取る・・・・いわゆる、おちこぼれでね。こういう理論的に他人に説明することが得意じゃないの。だって、まず自分で理解できてないんだから、教えられる訳ないわよね」
「フィルちゃん、酷い言い方しますね」
「あら?間違ったこと言ったかしら?」
「全てフィルちゃんの言うとおりですー」
かなり酷い言われ方をしてると思うんだけど、目の前の2人は気にしてないみたい。
ロッソ君なんかは満面の笑みを浮かべているし。こういう軽口が言い合えるくらい、この2人は仲良しなのかなぁ。私と光里、祐貴ちゃんとの関係に似てる。
「で、どうやって説明されたんだ?」
「えーと、前約束とか、契約しておくと有利だとか?」
「・・・間違っちゃいないが」
「まず基礎をちゃんと教えたのかしら?」
「う・・・お、教えてなかった、かも、です」
「おいおい」
「面目ないです」
しょんぼりしてしまったロッソ君をフィルちゃんがつつく。その笑顔が嬉しそうなのは、ロッソ君をかまえて楽しいからなのか、反応が大きい(今も顔が真っ赤だ)ロッソ君で遊んでるのか。いまいちこの2人の関係も掴めないなぁ。
そんな2人の隣で眼を閉じて「う~ん・・・」と唸っていたディアさんが、一つ頷くと眼を開いた。
「まぁ、しばらくは此処にいるんだし、知っておいて損はないだろう」
「え?」
これは、ディアさんから説明してもらえるということなんだろうか?
さっきの会話でロッソ君の説明が正しいのか不安になってきたところだったから、もしそうだったら有難いなぁ。
「ヒナ、精霊がそこらに存在してるってことは聞いたか?」
本当に教えてもらえるらしい。やった!
え~と、そこらに存在してる・・・そんなこと言ってたっけ?思い出せない。
「?」
「・・・ロッソ。基礎の基礎だぞ」
「ごめんなさい・・・」
言われてなかったらしい。ロッソ君大丈夫かなぁ。
まぁ、私も人の事言えるほど頭良かった訳じゃないけど・・・。
またもやしょんぼりしたロッソ君の頭をディアさんがペシッと叩いた。
「・・・よし。簡単に説明すると、だ」
「はい!」
「俺たち魔術師が魔法を使う時、必ず精霊の力を借りてる。
精霊は大きく分けて火・水・風・土の4種。使いたい魔法の系統に応じて精霊への呼びかけ方を変えるんだ。
例えば、今日の馬鹿王が言ってたのは【我が眷属よ 蒼き息吹をここに在れ】。これはちょっと特殊な例だが、【我が眷属】と【蒼き】っていうのが水系統の精霊への呼びかけになる。もし、これを火系統にしたいなら【蹂躙者】とか【赤き】、【怒涛の先駆者】とか・・・その魔術使う奴のセンスで変わるな」
【蹂躙者よ 赤き息吹をここに在れ】
ディアさんが手を少し持ち上げながら呟くと、その手のひらの上に小さな炎が生まれ、シュルシュルと消えていった。
「そして、精霊はそこらにいるといっても、精霊と土地との相性がある。それによって、その場に存在する精霊の比率が変わるんだ。例えば・・・砂漠なら火が多くて水が少ない。湖の近くなら逆。森や林だと土と水が多くて火が少ない。風は例外で、ほとんど場所には影響を受けないから何処にでもそれなりにいる。そうだなぁ・・・精霊の数にも限界があると思えばいい。
でだ、魔術を使う時はさっきも言ったように精霊の力を借りる。その時に必要なのが精霊が喜ぶ言葉と意志の強さだ。
実践してみるか・・・・・」
ディアさんは立ち上がると、私達から離れた。
「見てろよ」
「はい」
何だかワクワクしてきた。何を見せてくれるんだろ。
さっき魔法を使う時にチラッと見えたディアさんの真剣な表情は、うん。その、まぁ、すごくかっこよかった・・・。
そういえば、ゼオさんも呪文唱えてる時は真面目な表情してたなぁ
真剣に物事に向き合ってる男の子(この場合は男の人)ってかっこいい、と思う。
手のひらを上にして腕を伸ばすと、ディアさんは口を開いた。
「まず、火。さっきは【蹂躙者よ 赤き息吹をここに在れ】だったな。なら、」
【先駆ける者よ 慟哭の狼煙を上げよ】
ゴォォオオオ!!!
「わぁ!」
さっきとは比べ物にならないくらいの大きな炎がディアさんの手のひらに現れた。
いや、これは本当に危ない!ディアさんの手、溶けてないよね!?大丈夫だよね!!?
いらないお世話だと分かっていても心配いしてしまう。だってこれ、本当にすごい量だよ!?
「えぇぇ!すごい!すごいですけど、ディアさん大丈夫ですかぁ!?」
「あぁ。問題ない」
すぐにギュルギュルと炎を消したディアさんが、ひらひらと炎をのせていた手を振った。
近寄って見てみると、焦げ1つ残ってなかった。・・・・・よかった
一応、確認の為にその手のひらを擦る。うん。相変わらず40代とは思えないスベスベの手だ。
しばらく、この感触を楽しんでみる。私もいつまでもこんな肌でいたいなぁ・・・・・・羨ましい。
「・・・もういいか?」
「え?あ、」
気付いた。というか、正気に戻った。私は今、ディアさんの手を握っているのだ。しかも、結構距離が近いぞ、これ。
わぁ!ディアさん睫毛なが~い
・・・・・・・はっ!わ、私は一体何を!?
「うわ!ごめんなさい。怪我がないなら良いんです!はい!失礼しましたぁぁあ」
「あぁ」
くそぅ。ディアさん顔色一つ変わらないぞ。自分から触っといてなんだけど、取り乱した私が馬鹿みたいじゃないか!
・・・・・手を繋いでる時は、恥ずかしかったけど、今は・・・いや!今も恥ずかしい!恥ずかしいけど、なんか違う。う~ん。なんだろ?
「ヒナちゃん、可愛いわ。私は魔法初めて見せてもらった時、あんな反応できなかったなぁ」
「そうだね~。でも、そんなフィルちゃんも可愛いと思うよ」
「ふふ、ありがと」
え?この2人付き合ってるんですか?
なんだか、けしからん会話をしているフィルちゃんとロッソ君。視線は2人ともこっちを向いてるから、一瞬幻聴かと思った。
ていうか、ロッソ君。君さらっと何言ってるんだ。私をだしにしてイチャつかんでくれ。
「実践は、これだけでいいか。一応全系統を見せておこうと思ったんだが・・・・・まさかこんなに気にされるとはな」
「!す、すいません。余計な心配しちゃって」
「いや。・・・心配されたのは予想外だったが、嫌だった訳じゃない。そうだな・・・・・・・」
ディアさんは途中で言葉を切ると、くしゃくしゃと私の頭を混ぜた。
「わっ!」
そして、そのまま何事もなかったかのように元の位置に座り直した。会話が聞こえていなかったらしい2人が普通に話しかけている。
ちょ、「そうだな・・・・・・・」の続きが気になるんですが!
あ、頭撫でられたからって誤魔化されたりしないからね!と思いつつも、無言で椅子に座る。
顔が熱いのは気のせいだ!!
まったく、これだから美形は!
「ヒナ」
「ひゃい!」
は、恥ずかしい・・・。声、裏返った。
「ここまで、理解できてるか?」
「あ、はい!バッチリです」
実際に見せてもらっている分、ロッソ君の何倍も分かりやすかった。ごめんロッソ君。
「今見せたみたいに、同じ効果でも言葉を変えることで威力を上げたり下げたりできる。ここまでが基礎だな。
本題の契約だが、精霊というのはその大地や空間に縛られている。ロープで巻かれるような意味じゃないぞ?・・・大地に所属している、とでも考えてくれ」
「はい」
「で、契約ってのは精霊の所属を大地から自分自身に移らせる事を言う。
どこでも、その精霊の力を借りられるようになるんだ。」
「あ、それがロッソ君の言ってた前約束?」
「たぶんそうだろうな。ちょっと古い説のような気がするが・・・。ロッソ?」
「うっ、ごめんなさい」
ロッソ君が肩を落とす。
「最新の論文には目を通しておくように言ってあるだろ?」
「うぅ~」
「しかも、俺が話したのは10何年か前に発表されてた筈だよな」
「うぅぅ~」
「ダメね、ロッソ」
縮こまって、どんどん身体を小さくしているロッソ君。
ごめん。フォローできない。
お久しぶりの更新ですごめんなさい
作者が今年受験生ということで、これららもちょくちょく更新が遅れそうです
楽しみにしてくださっている方、ありがとうございます
受験終わり次第、また頑張って更新していこうと思っているので
もうしばらく待っていただけると助かります(´`;)
今回ちょっと恋愛小説っぽいことを微かにしてくれました、が
う~ん。ラブラブには程遠いですね
陽菜の心の動きも曖昧・・・・精進します
妙なところで切れてしまいましたが
ディア先生の魔法講座はもうちょっと続きます
次回は加護の説明が出来ると良いな・・・




