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07.犬、そして診察

輝さんも光もコーヒーを飲み終えたらしい。

「じゃあ僕はダイゴと診療所に行くよ。兄さんは仕事?」

光が俺にも分かるように、輝さんに日本語で話しかけている。

輝さんは光に向こうの言葉で返した後、メイドさんに何やら話しかけていた。

「ダイゴはもう行ける?」と光に言われたので「ああ」と答えて食堂を出ようとしたら、輝さんが俺に向かって「犬、産まれる。可愛い。見に来て。」と言って手を振ってくれた。

メイドさんが輝さんにコーヒーとミルクを用意していたので、どうやらもう一杯飲むらしい。


そういえば、食事の御礼を言ってなかったと気がついて大声で「御馳走様でした!とっても美味しかったです!」と言ったら、何故かメイドさん達が笑っている声が聞こえた。

光には「多分ちょっと声が裏返ってたからそれが面白かったんじゃないかな?」と言われたが、よく分からん。


光に着いて行く。

長い廊下の先には広々としたロビーが見える。

「ダイゴに説明しておくよ。ロビーの左右にそれぞれ扉があるのだけど、左側がダイゴの世界、右側はダイゴから見たら「異世界」になるね。右に出ても敷地内だからもし間違って出ても大丈夫だと思うけど、人によっては日本語があまり分からない人もいるから、何か失礼があったらすまない。」


右側は異世界ねぇ。

敷地内とはいえ、さっき白木父は害獣が出たから対策してたと言っていた。

対策方法も厳重だったみたいだし。

こえーよ異世界。

絶対扉を間違わないようにしないと。

それより今は一刻も早く元の姿に戻って帰宅しなければ。

遥とあやめが怖いけど。

実は異世界の害獣より俺にとってはこっちの方が怖いのかも。


「それで、さっき兄も言っていたけど、もうすぐ犬が産まれるんだ。と言っても犬種はケルベロスなんだけど、実際には見た事無いよね?」

「・・・・は?」

「ケルベロスだよ。成犬はカッコいいんだけど、赤ちゃんはめちゃくちゃ可愛いんだ。」


あるわけねぇー!

ケルベロスってあれか?

「地獄の番犬」とか言う頭が3つあるやつだろ?

昔やったなんかのゲームで出てきた時、めちゃくちゃ強かったんだよなー。

何?

あの犬実在してんの?!

赤ちゃんも頭3つなのかよ?!


「ダイゴが犬が苦手なら無理には誘わないけど、もし良かったら後で一緒に見に行かないかい?兄も見て欲しいって言ってたし。」


ケルベロスって犬カテゴリーで良いのか?

とにかく白木兄弟揃って誘って来たし、それなりに興味もあるし、そんなに言うなら自慢の犬?とやらを見てやるか。

まあ可愛さじゃうちの大五郎には敵わないけどな。

親バカと言われても良い。

遥と大五郎は俺の可愛い子供達だ。

他人から見れば大五郎はカッコいいと言われるのだろうが。


「ああ。分かった。多分犬・・・・は苦手じゃないと思う。」

「あの可愛さをダイゴにも分かってもらえたら良いなあ。」と光が嬉しそうに言った後「まずは診療所だね」と左側の扉を開けた。


扉の先は廊下になっていて、少し進むとまた扉があり、光がノックをするとエミさんが扉を開けてくれた。

「中へどうぞ。ご飯はちゃんと食べられた?」

エミさんが椅子に座りながら聞いてきた。

「はい。とても美味しかったです。」

「良かったわ。猫村さんも喜ぶでしょう。」

ねこむらさん?

「どうですかね?兄さんと僕が揉めましたから。」

「揉めた?」

「兄さんが彼の名前をつけると言って。結局彼自身がダイゴと名付けました。」

「あの子はもう・・・・。えっとダイゴ君?輝がごめんなさいね。でも良い名前にしたのね。」

「あ、いえ・・・・」

俺は頭を掻いた。

「それでダイゴの食事が遅くなってしまって。料理が冷めてしまったから猫村さん怒っているかも。後で謝っておきます。」

「そうしなさい。でも猫村さんの料理は冷めても美味しいから。彼女気にし過ぎなのよね。」

いやマジでお世辞でも何でもなく美味かった。

猫村さんか。

もし会えたら直接お礼を言おう。



「じゃあダイゴ君、診察させてもらえる?ここに座って。」

「あ、はい。」

光は壁際でこちらを見ている。

「昨日は顔色も悪かったし、車内で頭をぶつけたって聞いたから応急処置はさせてもらったのだけど。今は顔色も良さそうだし、食事も摂れたみたいだし、頭は痛くない?」

「はいもう大丈夫です。」

「念の為頭は見させてね。失礼。」

そう言うとエミさんが立ち上がって俺の頭に手を翳した。

何だこの感覚?

頭上に優しい風を感じる?

「はいもう大丈夫よ。外に出ても良いわ。」

エミさんは俺には一切触れていないのだが。

診察って?

「あのー・・・・聞いても良いですか?」

「どうしたの?」

エミさんが不思議そうに俺を見ている。

「今エミさんが俺に手を翳したら頭上に風を感じただけというか、その、診察って見ただけでわかるものなんですか?」

エミさんが「そうだったわね」と慌てた感じで言うと、俺に向けたエミさんの掌が淡い光で輝き出した。

「私は治癒魔法が使えるの。勿論こちらの世界での資格はきちんと取ったけど。いちいち触るの面倒なのよね。」

魔法・・・・!

ふぁんたじーってやつかよ!

俺が驚いていると、光がエミさんを睨んでいて、エミさんが「てへ」というポーズをしていた。

「母上。ダイゴには我々の事情を説明しているから良いですが、こちらの世界には治癒魔法は存在しないのですよ。」

いや魔法の事は今!今聞いたぜ?!

「昨日も全く触れずに治癒魔法をお使いになったのでしょう?彼女びっくりしていたじゃないですか!」

俺もびっくりしてるのだが。

「あれは緊急事態だったし、下手に触ったら痛いかなーって。」

「母上!」

「普段は気をつけてるわよー。もうすぐ彼女来るし、ダイゴ君ももう大丈夫だし、早く駅と警察に行きなさいよ。」

エミさんが拗ねている。

「本当に気をつけて下さいよ?またこちらで変な噂が立ったら人が来すぎて困るんですからね。」

今度は親子喧嘩かよ。

俺も昨日したけど。

2人はまだ言い合っている。

仕方ない。

「あの、エミさんありがとうございました。じゃあ失礼します。」

早い所退散した方が良さそうだ。

光はまだ何か言いたそうだったが、俺が席を立ったので「行こうか」と診察室のドアへ向かって歩いて来た。

エミさんが「入口のドアはもう開けておいて頂戴」と光に言っていたので、どうやら待合室を通って外に出るらしい。

診察室も待合室もこぢんまりとしていて、ここではエミさんが1人で診ているのだろう。

まだ時間も早いので他の人は出勤していないのか。

光が入口の鍵を開けているとドアの向こうに人影が見えた。

「彼女もう来たのか」

光がドアを開ける。

「光さんおはようございます。赤ちゃんまだ産まれてませんか?」


おい。

おいおいおいおい。

待て待て待て待て。

何でだ?

どういう事だ?

どうなってるんだ?

何故だ?

何故ここにいる?

俺が見間違えるはずが無い。

絶対ありえないが確かに目の前にいるのは。

間違い無く、高校生の姿の俺の娘の遥だった。


「はるか・・・・」

俺は思わず声に出してしまった。


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