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14.子ケルベロス

光が扉を開けてくれたので中に入ると、青みがかった毛並みの、俺の膝丈位はあるケルベロス達が広々とした空間で駆け回っていた。

遥の顔がぱあっと花開くように笑顔になっていた。

さっき俺と話していた時には絶対見られなかった表情だ。

お父さんの前でもこういう顔をしてほしいよ遥。

しかし今は遥ばかり見ている訳にもいかないので、この機会を逃したら実物なんて絶対に見られないであろうケルベロスを堪能させてもらおう。

光はケルベロス達が駆け回る邪魔をしないように歩きながら飼育員と思われる人達に軽く挨拶をしている。

・・・・器用だな。

輝さんと美奈さんはこの奥の部屋にいるらしい。

俺と遥は光について行く。

ケルベロス達は訓練中だからか、俺達には一切見向きもしない。

顔が三つもあったら、どれか一つ位は余所見してしまわないのだろうか?

光が「もう産まれてるかな?」と奥の部屋の扉を開ける。

美奈さんがこちらに背を向けた状態で地べたに座り込んでいて、輝さんは美奈さんの左側に立っていて、輝さんのそばには、先程見たケルベロス達よりも二回り程大きなケルベロスが落ち着かない様子でウロウロしていた。

きっとあれがケンシロウなんだろう。

部屋の奥には犬飼さんが居て、犬飼さんは片膝をついて、綺麗なフカフカの布団に横たわったケルベロスを見ていた。

その近くに。

ちっこいケルベロス達がいた。

みんな俺達に尻を向けて小さな尻尾を振りながら一心不乱に乳を飲んでいるようだ。

「か・・・・、かわいい・・・・!」

遥が小声ながらも目をキラキラとさせて、子犬ならぬ子ケルベロス達を見つめている。

子ケルベロスは可愛い。

確かに可愛い。

だが、それを見つめる遥!

はるかかわいいよはるかあああああー!!!

思わず叫んでしまいそうだ。

あ、いや。

そうだ今の俺は遥の父には見えないんだった。

遥ばかり見てしまっている事を他の人に気が付かれていたらまずいと、慌てて周りを見ると、光も遥のように目を輝かせているが、輝さん、美奈さん、そして犬飼さんは浮かない顔をしている。

何故だ?

輝さんは誰よりもこの出産を楽しみにしていたはず。

美奈さんだってそうだ。

犬飼さんは良く分からないが、飼育している犬が無事出産したならもう少し違う表情をしそうなものだが。

そんな事を思って3人を見ていたら、輝さんと目が合った。

輝さんは目を伏せて首を振って、光の方へ近づいて何か言った。

それまでニコニコしながら子ケルベロスを見ていた光の顔が急に曇った。

そして光は俺と遥を見た。

遥はまだ子ケルベロスを見つめている。

子ケルベロス達は乳をたらふく飲んだ奴から母ケルベロスから離れて布団の上を転がったりへそ天で寝ていたりする。

その中に一匹だけ、まだ乳を飲んでいる奴がいた。

そいつが母ケルベロスから離れた時、遥が「あ、」と声を出した。

そいつだけはケルベロスでは無い、普通の子犬だった。

光が「一つ頭なんだ」と言った。

「残念だけどこの子は長くは生きられないんだ。」

俺と遥は顔を見合わせた。

犬飼さんのそばに移動していたケンシロウが「くぅん」と悲しげに鳴いた。


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