不仲見舞い
入院して五日目。
病室の扉が音を立てて開いた。
入ってきたのは顔を見るだけで胃が痛くなる奴だった。
「おい。死にそうって聞いたが意外と元気そうじゃねぇかよ」
彼は笑った。
あの嘲りの笑みだ。
昔から変わらない。
「……わざわざ来るくらいなら、放っといてくれ」
「いやいや。俺が見舞いに来てやるってすごいことだぜ? ほら、花とか持ってきてねぇけど」
嫌味な奴だ。
……だが、来た。
腹立たしい……。
そしてこの五日間、何故か僕の病室には嫌な奴だけが来る。
二日目は学生時代に殴り合いになった男。
三日目は職場で常に俺をバカにしていた後輩。
四日目は元恋人――別れ際『一生顔見せんな』と言ったはずなのに。
そうして、ふと気づく。
「なんだこれ……」
僕のもとに訪れるのは愛情も友情も持っていない奴ばかり。
だけど、その代わりに何かしらの「言いたいこと」を抱えて来ているのだ。
皮肉だ。
僕をよく知っている奴らだけが憎しみを超えて顔を見せに来るなんて。
それに比べて本当に「仲が良い」と思っていた奴らは……。
「見舞いってのは、気にしてないとこないもんだしな……」
少しだけ笑ってしまった。
そしてまた病室の扉が軋んだ。