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天職

自由気ままに、自分らしく。

思いついたこと、いいなと思ったこと、日常で感じたことなど、インスピレーションを受けた内容を忠実に再現し、お話としてあげていこうと思います。

それが皆様の心に刺さるか…それはわかりませんが、刺さってくれた方に、楽しんで読んでいただけたらと思います。

十六歳、自由を題材に、目標にしています。

どうぞごゆっくり、ご覧下さい。










カッターを腕に通してから、あぁなんて馬鹿なんだろうと思った。

血が流れて、腕を伝う感触がして、痛いはずなのに、痛くないんだ。

洗面台は血で真っ赤に染まっていて、流しても流しても、完全に綺麗にはならなくて。仕方なくスポンジを取りだして、ゴシゴシと擦ってみると、みるみるうちに元の白い洗面台に戻っていった。

こうして見ていると、いつも羨ましいなと思う。

擦っただけで汚れが綺麗さっぱりなくなるのなら、どれほど幸せだろう。そんなふうに、一度でいいからなってみたい。そんなふうに。

「なれたらなぁ」

触られた太ももの付け根をごしごしと強く擦りながら、吐き気を催したあたしはトイレへと駆け込んだ。


カッターの芯を燃えるゴミ用のゴミ箱にぽいっ。と投げ捨てる。ほんとは燃えないゴミだけど、まぁいいや。きっと誰かが気づいてくれるだろう。あたしは知らない。そんなこと、気にしていられない。

この傷で明日どうしよう。ドレス買い替えなきゃ。

ちょっと安めで可愛くて、長袖のちょっとハレンチなギリギリラインをせめたドレス、探そう。

そう考えている間にも、鳴り止まないスマホの通知音。ちらりと覗き込むと、やっぱりお母さん。『雨、次はいつ帰ってくるの?』とか、『今月分の仕送り遅れてるのだけど』とか。

知らないくせに、なんにも知らないくせに。

あいつらみんな金ばっか。あたしのこと金の成る木としか思ってない。金を埋めると3日後ぐらいに木になって、その翌日ぐらいに木の実の代わりに金が成ってるの。あれと一緒だと思われてるみたい。ゲームじゃないんだから、やめて欲しい。

高校卒業と同時に就職させて、家を追い出して、働きに出して、ある程度放置しておけば、勝手に金を稼いでるだろう。そんな甘い考えにハマってる馬鹿なあたし。

母のことは好きだ。父のことも好きだ。でも好き嫌い以前に、恩が勝ってる。

だから断れない。嫌だと思ってるのに、断りきれない。


母は知らない、父も知らない。

私はもう、元いた職場はやめていること。

その後で別のところに就職して、それなりの地位があること。

その別の就職先が苦しい世界だってこと。


この業界は顔が全て。顔と、まぁそれなりのマナーと、営業マンをも頷かせるトップレベルのコミュニケーション力。それから、どんなことも臨機応変に対応できるほどのスキルと、嫌なこととダメなことをはっきりと言える根性。

これらがなければ、こんなところ、一瞬でやめているし。きっと生きていない。そもそも、その業界に飛び込もうとすら考えつかない。

でもあたしは違う。そのどれもを兼ね備え、完璧だという自負がある。幼い頃からずっと、もしかしたら、あたしならこの業界を生き抜けるかもしれないと、そう思っていた。

そして今、実際に入ってみて思う。やはり天職だと。

「雫ちゃん、指名入ったよ」

「はぁーい」


「おぉ雫ちゃん、相変わらずデカくておっきいねー。あれ、長袖のドレスはじめてみた。新調したの?」

「そうなんです〜、前の袖なしのドレス、少し古くなってきてたからぁ」

「そっかそっか。あのスリットが入ってるの、好きだったんだけどなぁ」

「また新調しますからぁー。あじゃあじゃあ、お酒、入れてくれません?それでまた似たやつ買いますからぁ」

「おっ、じゃあ今日は奮発して、いつもより2つ上のお酒入れちゃおっかな!」

「やだぁ黒田さん太っ腹〜、おねがいしまぁーす」




いわゆるキャバ嬢。これこそ、あたしの天職。

あたしの居場所だ。










おかえりなさいませ。

楽しんでいただけましたか?私はすごく楽しみながら書いておりました。

傑作と捉えてくださった方、楽しんで書いていたのを、そのまま受け取って下さったなら、本当に嬉しいです。

駄作と捉えてくださった方、やはり自分だけが楽しいんじゃだめなんですよね。教えを下さり、ありがとうございます。

これからも楽しく、自分らしく書き綴っていきます。どうぞよろしくお願いいたします。

それではまた、お待ちしております。

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