ほらあなの戦士たち
「うわあぁぁぁ!」
「白い悪魔だ!…ハナック! 奥に逃げるぞ!!」
「ああ…」
オレはハナック。
相棒のブガーとともに今日も白い悪魔から逃げている。
いつからここにいたか…覚えていない。
うす暗い洞穴に身を潜め、かろうじて生きている。
「はあはあ…なんとか今日も白い悪魔から逃げのびたな!!」
「ああ。他のみんなは…?」
「ここにいないということは……やられちまったか……」
ブガーが首を振る。
「クソ! クソ! クソぉ!」
多くの仲間たちがあの白い悪魔に連れていかれた…。
「そういやぁ、今日は赤い川は流れてこねぇな」
「そういえば…そうだな」
ブガーが言う赤い川というのは、白いバケモノが暴れたあとにできる川だ。
でるときと出ないときがあるが…いまだ法則性がわからない。
(なんだってんだ…ここはよ…!)
このほら穴にあるのはたったの四つだ。
神出鬼没の白い悪魔。
いたるとこに生えている黒い草むら。
ねっとりとした赤い川。
そして時折、奥から聞こえる唸り声…。
大きい出口には白いバケモンがいるし、その反対の小さい出口はガケになっている…。
どっちにいっても…ここに帰ってきたものはいない。
「やれやれ…いつまで続くんだろうな」
オレたちは洞窟の中央付近に帰ってきた。
奥にいれば安全だが、光がささなくてイヤになっちまう。
真ん中くらいがちょうどいい。
だが、こんな状況でもオレが平気なのはブガーがいるからだ。
(話し相手がいるというのは…こんなにありがたいものなんだな…)
「もう、いっそ…」
「おい。その先は…言うなよ。ハナック」
「あ、ああ、すまない」
「ま、こんな状況じゃしかたねぇがな…」
「おまえは強いな。ブガー」
「よせよ…約束だぞ? ハナック。いなくなった仲間たちの分まで…」
「ああ…ああ!そうだな」
「そうだ、その意気だ!…ん?地震か…?」
そう思ったその矢先…
「白い悪魔だ!」
ヤツはいきなり襲ってきた!!
(しまった!! 気づかなかった)
オレはあわてて黒い草むらに身を伏せた。
「う、うわあああぁ!」
「あの声は…ブガー!」
オレは叫んだ。
白いバケモノは体をねじって遊んでいる。
「ブガー!待ってろ!」
「来るな!ハナック!!オレはもう…助からない。おまえだけでも…生きろ!!」
「ブガァー!!」
そして、ブガーは…白いバケモノと一緒にいなくなった。
(ちくしょう、ちくしょう…オレはなんて…無力なんだ…!)
だがオレは、あきらめない!
いなくなった仲間たちの分まで…ブガーの分まで生きるんだ!!
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「レイジ!いつまで鼻掃除してるの!」
「ごめん、ごめん。そんなに怒んないでよ、母さん」
「あんた、やりすぎるとこのあいだみたいに鼻血がでるわよ…?」
「ほどほどにします…」
「それがいいわ。さぁ、早くしないと学校に遅刻するわよ!?」
「はぁ~い、いってきます!」