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半魔の少女は英雄譚を望まない  作者: 水無月七海
第一章 始まりの出会い
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第25話 夢から覚めて

 私が目覚めたのは、薄暗い空間だった。

 空には天井があったので、どこかの部屋の中なのかもしれなかった。

 見覚えがあるようで、しかし、何だか違和感も感じる天井。

 自分が何処にいて、何故こんな所に寝かされているのか、よく分からなかった。


──……お母さんの夢を見てたのは、何となく覚えてる。


 けど、それは遥か過去の記憶であり、夢の中の話だ。

 私が眠りに落ちる前には、現実ではナニカがあった訳で……。

 ……と、そこまで考えて……私はバッと上半身を起こす。


──……そうだ。……私は眠ったんじゃない。……魔力欠乏で意識を失って……それから…………。


 ……それから?

 意識を失ったのだから、その先の記憶なんて、ある訳がない。

 目が覚めたということは、少なくとも死んではいない……って、これは当たり前のことだ。


 『災厄の魔獣』を倒すことは出来たんだろうか?

 いや、それよりも、アレクさんは助かったのだろうか?……これが一番の気掛かりだった。


──……他にも気掛かりなことは、勿論あるけど……。


 意識を失ってる間に、お母さんの夢を見ていたからか、『約束』を破ってしまったことに対する罪悪感は大きかった。

 というか……“だからこそ”当時の夢を見たのかもしれなかった。

 でも、癒しの魔法を使ったのは、仕方のないことだった。……アレクさんが死んでしまっていたら、私も生きてはいなかったはずだから。


──……死ぬよりは、マシだったんじゃないかな……。


 心の中に言い訳を浮かべる。


 まぁ、それはそれとして……自分の今の状況は確認しておく必要があるんじゃないかな、と思う。

 なので、私は薄暗がりの中、寝かされていたベッドから床に下り立って、周囲を見回してみた。


 どうやら狭い部屋の中みたいだけど……アレクさんの姿はない。

 流石にアレクさんが部屋の中に居たら、もっと早くに気付いている。


──……アレクさん、どこ行っちゃったのかな……?


「……居たら、事情を聞けたのに……。」


 小さく不満を漏らしてみても、あまり気分は晴れなかった。

 気にしないように努めようとしていても、どうしても不安が頭に浮かんできてしまう。


 癒しの魔法はアレクさんの傷を治せただろうか?

 そもそも、発動する為の魔力は足りていただろうか?

 傷が治ったとして、その後『災厄の魔獣』を無事に倒せただろうか?

 『災厄の魔獣』を倒す時に、再び深い傷を負ってしまってはいないだろうか?

 傷を負ったアレクさんが、そのままどこかで力尽きてしまった可能性はないだろうか?

 私が見知らぬ場所にいるのは、アレクさん以外のダレカに運ばれたというのは、考えられないだろうか?


 そんな風に、不安がどんどんと広がってしまうのだ。

 状況も分からず一人、知らない場所に取り残されて……私の心は不安でいっぱいだった。


──……けど、ここって本当に、『知らない場所』なのかな……。


 先程から……というか目が覚めた時から、ちょっとした違和感があった。

 知っているような気がするけど、知っている場所とは少し違う……そんな違和感だ。


 改めて部屋の中を見る。

 部屋は狭い。半分以上のスペースをベッドが占領しているし、ベッドの上方と壁の隙間に、燭台と円柱状の物が並んで置かれた台が取り付けられているけど、それ以外にあるのは、壁に吊るされたハンガーくらい。

 本当に“寝る為だけの部屋”という感じがする狭さである。


──…………ん、あれ?……それって…………。


 ……と、私が『この場所が何処なのか』ということに気付いたタイミングで、唯一の出入口である扉が、外側から開けられた。

 別に私が気付くまで待ってた訳ではないんだろうけど……最初から部屋の中に居てくれれば悩まずに済んだのにな、と思わずにはいられなかった。


 扉を開けて入って来たのは、やはりアレクさんだった。

 薄暗くとも背格好は記憶にある通りだし、赤い髪は暗い中でも目立つ。

 それに廊下の方が、締め切られた部屋の中より多少は明るいようで、廊下側に立つアレクさんの顔も何とか見分けが付いた。

 アレクさんは私が起きていることに驚いた様子だったけど……ベッドから起き上がって部屋の中で立って待ってたら、確かに驚かれても仕方がないかもしれなかった……。


「あー……ええと……もう起きても平気なのかい?」


 開口一番、アレクさんは少し言葉を詰まらせながらも、こちらを気遣うように質問をした。

 私も同じ状況に遭遇したら、すぐに言葉が出て来ない自信がある。せめてベッドの上で待ってるべきだった……と、ちょっと自分の行動を反省。

 それから私は、アレクさんの質問に「……はい。」と頷きを返してから、間を空けずに続ける。


「……アレクさんの方こそ、傷は……。」


 言いながら、アレクさんの身体を観察する。

 暗いのでハッキリとは分からないけど、別の服に着替えを済ませているようで、服に血が付いてたりはしないし、見た感じ傷を庇ってる様子もない。

 アレクさん自身も、「問題はないよ。」と答えたので、私はホッと息を吐いた。


「……それで、その……『災厄の魔獣』のことも……どうなったか、聞きたい、です……。」


 他にも聞きたいことは色々ある。

 けど、こっちから質問攻めにするよりも、アレクさんに実際の出来事を語って貰って、その都度質問をした方が、きっと理解はし易いのだろうと考えた。


「ああ、うん……それは構わないよ。ただ……フィリアの方は、本当に大丈夫なのかい?」


「……はい、大丈夫だと……思います……。」


 何やら過剰に心配されてる気がする。


──……もしかして、一日に二回も魔力欠乏で倒れちゃったから、なのかな……。


 そう思うと、アレクさんが心配する気持ちも分からなくはない。


──……でも魔力欠乏って、そんなに心配されるようなこと……なのかな?


 という疑問は残ったけど。

 戦闘中だと意識を失ったら、迷惑をかけてしまうのはあるけど……魔力欠乏自体は、単に魔力がなくなっただけで、魔力が回復すれば元に戻るのだから、そこまで心配する程の事じゃない気がする。

 ……なのだけど、魔導士と違って戦士は、魔力欠乏になることもないだろうから、魔力欠乏に対して免疫がなくて過剰に心配してしまうものなのかな、と自分なりに納得した。


「それなら良いんだ。……ああ、でも話す前に、フィリアは受付に行って、自分の部屋のルームキーを交換してきた方が良いんじゃないかな?」


「……そう、ですね。……そうします。」


 アレクさんの提案を受けて、私は一旦、部屋の外への扉を潜る。

 すると、ここ数週間で見慣れた、安宿二階の廊下に出た。


 今更説明するまでもないかもしれないけど、『見覚えがあるようで少し違う』というのは、『アレクさんが借りた部屋』だったからこそ起こった違和感だ。

 なので部屋から出てしまえば、あとは見慣れた廊下が待ち受けている、という訳だった。


 ルームキーを交換した後で戻って来ないといけないので、扉を閉めてから部屋番号の書かれた木札を確認すると、23番と書かれていた。

 私が借りてる部屋は25番なので、二つ隣の部屋ということになる。

 部屋番号の確認が済んだので、廊下を進んで階段に向かい、足を踏み外さないように気を付けながら一階へと下りる。


──……廊下も割と薄暗いけど……まだ受付に人がいる時間なのかな……?


 ……と、ちょっと心配になったので、気持ち早足にはなった。

 階段を三分の二ほど下りた辺りで受付の方に目を遣ると、人が立っていたのを確認出来て、安心する。


 受付前に辿り着いた私は、ベルトポーチから25番と書かれたプレートを取り出して、受付の女性に自分の名前を言ってルームキーと交換して貰ったら、そのままとんぼ返りで23番部屋の前へと戻って来た。

 一応ノックして返事を待ってから、部屋の扉を開けた。


「ベッドに座ると良い。」


 というアレクさんの勧めを、ありがたく受けて、私はベッドの端に腰を下ろさせて貰う。

 受付に行ってる間に燭台に明かりを灯してくれていたらしく、部屋は蝋燭の火によって一定の明るさが保たれていた。

 私が腰を落ち着けると、アレクさんは少し苦笑気味に続ける。


「あー……何だか、改まってというのも、おかしな気がするなぁ。」


 私も自分がアレクさんの立場だったら、そう思うかもしれない。

 けれど話して貰わないと、私の今後もどうなるか分からないし……という訳で、視線でアレクさんに催促する。

 それが伝わったかどうかは分からないけど、アレクさんは、


「……それじゃあ、フィリアが気を失ってからの事を、話すとしようか。」


 と、前口上を告げてから、私が意識を失った後の出来事を話し始めた。

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