第4話:一次試験
〔ダクラニウム〕
それはトゲラ帝国の北側にある〔サッタラー山脈〕から採集できる蒼色の鉱石の事。
ダクラニウムは磁場やその土地の影響で作られる鉱石で、他の鉄鉱石や石ころに比べたら格段に軽い。
そしてダクラニウムはこの世界で唯一、悪魔に対してダメージを負わせる事のできる物質なのだ。
まだその理由、メカニズムはわかっていない。
ただ、普通の鉄の武器や鋼の武器ではびくともしない悪魔は、このダクラニウムを使った武器で攻撃を受けると、ダメージを負うのだ。
そのため、退魔師、特に聖剣師が使っている武器(剣や槍等)は全てダクラニウムで出来ているのだ。
そして、魔法師が使っている魔法の原料にも、このダクラニウムは使われている。
「入学一次試験の説明をするぞ!よ〜く聞けよお前ら!」
ナバルはかなりの大声で叫ぶように話す。
「第一試験は屍の討伐テストだ!」
屍とは悪魔の一種でゾンビみたいなやつだ。
悪魔の中では殺傷能力が極端に弱く、RPGゲームで言う、序盤のそのまた初めに出てくるような悪魔。
「各自武器はこっちから支給するから準備が出来たやつから武器を取りにこい!」
ナバルはそう叫ぶとゲートの奥へ。
それに続き、多くの人達がゲートの奥に入って行く。
もちろんスイナもその中にいた。
国立聖十字黒白学園聖剣師希望者入学一次試験
試験内容は屍の討伐。
試験会場は2番ゲート奥にあるドームの裏庭「モノクロの庭」にて。
一次試験合格条件は30分以内に屍を30体以上倒す事。
武器は太刀、西洋剣、弓矢、槍、ハンマー、ナックルダスターの6種類、全てダクラニウム製。
他の試験者への妨害はなし、もし妨害した場合は即刻退場。
もし、何らかの理由で試験続行不可能と判断された試験者は監察官の指示に従い裏庭から退場する。
「じゃあお前ら、この中から武器を選べ」
ナバルは試験者達に武器を選ばせ始めた。
(う〜ん・・・何がいいだろうか・・・)
スイナはとりあえず西洋剣を手に取ってみた。
意外と軽いながらも切れ味は良さそう。
次は太刀を手に取る。
西洋剣よりリーチが長い分重さがある。
スラッと伸びた刃は輝くシルバー色。
・・・ちなみにだが、元々蒼色のダクラニウムは原石から武器に加工する際にその色は失われてしまうのだ。理由は相変わらず不明だが・・・
「おし、俺はこのハンマーでいいや!」
「じゃあ俺はこの槍にしよう!」
「やっぱり唯一の遠距離攻撃ができる弓矢だろ」
周りの試験者達は次々に武器を選んでいく。
「どうしよう・・・」
スイナはまだ決められないでいた。
(そう言えば・・・)
スイナはふと思い出す。たしかあの時、リュイルが使っていたのは西洋剣だったな・・・
スイナは再び西洋剣を持った。
自分の憧れの人が使っていた武器。
そう、全てはこの剣の凄さに惚れて退魔師を目指したのだ・・・。
(この西洋剣にしてみようかな・・・)
スッと剣を構えてみる。
刃がキラっと輝いた。
「・・・よし!」
スイナは西洋剣を鞘に入れ、ドームの裏庭へ向かった。
モノクロの庭
一面に木々が生い茂り、この季節のせいもあってか葉は赤く紅葉している。
足元には落ち葉のじゅうたん、落ち葉を踏むたびにカサッカサッと音を鳴らす。
赤と黄色と橙の世界と言った感じだ。
モノクロの要素が一つもない。
「この庭には大量の屍が潜んでいる。そして木々の上には監察官も潜んでいるからズルはできねぇぞ」
ナバルは皆が集まったのを確認。
「じゃあ・・・始めるかな。30体倒したら監察官が君らに声掛けるから、それまではまぁ、頑張ってくれ。では始め!」
ナバルが手元にあった旗を上げた。
それがスタートの合図
皆はそれぞれ勢いよく走って行った。
(よし、行こう!)
スイナも皆の後を追い、庭の奥へ。
モノクロの庭はかなり広い。
わかりやすく言うと東京ドーム三つ分くらい。
(あ!いた!!)
開始から間もなく、スイナは一体目の屍を見つけた。
全身茶色、何となく人の形に見える屍
ぽっかり開いたような真っ黒の目、その目がスイナを捕らえた。
「よし!」
スイナはその場から一気に跳躍、落ち葉を蹴り屍に接近。
屍は動きがのろい悪魔。簡単に背後に回れる。
「ガガガ!」
ゆっくりながらもスイナの方を向こうとしている屍
しかし、スイナの方が速い。
あっという間に屍の背後へ。
「よし、もらった・・・・・ぐへっ!!!」
ドン!!!
突然、スイナは誰かに押され吹っ飛んだ。
ズザザザザ!!
落ち葉を舞い上げながら綺麗に飛ばされたスイナは近くの木にぶつかり、何とか止まった。
「痛っ・・・はっ!」
スイナが元いた屍の場所に目をやると、そこには灰色のコートを着た若い男性の姿が。
スッ・・・
男性が腰にある鞘から一本の東洋刀(日本刀みたいな刀の事)を取り出す。
そして・・・
「・・・・」
ズサッ!!!
ヒュンっと、刀が風を斬り、そして屍を斬った。
「ガガガァァァ!!」
屍はその一撃で真っ二つに。
そして屍は滅された。
「ふう・・・」
男性は一息つき、刀を鞘にしまう。
カチィィィン・・・
刀が鞘に収まった。
その時・・・
ドドドドドドドォォォォォォ!!
(ん?殺気!!)
男性は刀の柄を軽く握り後ろを振り返る。
しかし、そこにいたのは・・・
「どりゃぁあ!!」
男性が振り返ったその先には、飛び蹴りを仕掛けて来ている一人の女性の姿。
「な、ななな!!」
男性の顔面数センチ先には女性のブーツのつま先部分。
ドカーーーン!!
「ぐはっ・・・」
男性は数メートル吹っ飛んだ。
「あんた、人の獲物勝手に取らないでよ!!」
女性―――スイナは倒れている男性の前で仁王立ち。
「・・・痛っ!!」
男性はヒョイっと立ち上がる。
「おいテメェ何すんだガキ」
男性は恐らく二十歳前後の若者。
蒼く透き通るような瞳にキリッとした顔立ち、濃い青色の髪は目の辺りまで来ており、はっきり言って美男子。
「あんたこそ、人の獲物横取りして!このドロボウ!!」
「横取りもクソもあるかよ。あんなのは殺ったもん勝ちだ」
「だからって・・・」
その瞬間、スイナの首元には冷たい刀の刃が。
その動作は早過ぎてスイナには見えなかった。
「えっ・・・」
「こっちはお前みたいなガキには付き合ってらんねぇんだよ。失せろ」
スイナの横隣にはあの男性の姿。手には先程の刀、その刃はスイナの首元を捕らえている。
「おいガキ、名前は」
「す、スイナ・・・」
「じゃあスイナ、もう二度と俺に近づくな」
男性はそう言うと刀を鞘にしまった。
「あ、あんたこそ、な、名前何て言うのよ!」
残念ながらスイナの声は震えている。
「ウェルクだ。分かったならもう近づくな」
そう言うと男性―――ウェルクは庭の奥へと歩いて行った。
「・・・ふぅ」
その瞬間、スイナの緊張の糸がきれた。
「何なのよ、あいつ」
スイナはいつの間にか地面に腰を下ろしていた。
手が微かに震えているのが分かる。
「・・・・・」
スイナには見えなかった。ウェルクの刀が。
「・・・よし!」
何かの踏ん切りが着いたらしいスイナは、その場でガバッと立ち上がる。
(とにかく、まずは試験に合格する事を考えなくちゃ!!)
スイナはコートについた落ち葉を手で掃うと、再び屍を探しに庭の奥へ歩き出した。
その頃、モノクロの庭入口でもあるドームの2番ゲートには、黒いコートを着た二人の男性の姿が。
「なぁ、ナバル。今回何人合格すると思う?」
黒い短い髪の男性が隣にいるナバルに話し掛けた。
「知らねーよ、それよりダキム、お前見たか?」
黒髪の男性―――ダキムは、はぁ?っと言った感じでナバルの顔を見る。
「いや、だから今回の参加者の中に、あの教団長の息子がいんだよ」
「教団長の息子?」
「ああ。確か名前は・・・・何だったかな?」
「教団長の息子って言や確か、あの剣士のか?」
「そう。今回は自ら刀持参で参加してきたんだよ。多分、俺やお前、そんじょそこらの先輩達よりかは強い」
「マジでか・・・」
ダキムはア然と言った表情でナバルの話を聞いていた。
(あの・・・最強坊ちゃんが参加してんのか・・・他の参加者達は不運だな・・・)
「面倒くさいこったな・・・」
ナバルはつまらなそうに空を見た。
空は快晴だった。
次回、入学一次試験本格的始動!!
学園要素がまだ全然ないですが・・・もう少しで出て来る予定です。




