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第2話:出会い

 その日は良く晴れていた。

 

 雲一つない青空、鳥達は皆、優雅に羽ばたいている。

 

 木々は紅や黄色に色づき、ここホラエラ共和国に秋が訪れようとしていた。

 

 他の民から差別され、貧相な暮らしをしている山の民。

 毎年、餓死者は増え続け特に子供や老人の死亡率は高い。

 

 そして、国には盗賊が現れ、民の僅かな財産を奪っていった。

 

 もうホラエラの政治は壊れ、人々は希望を諦め、ただ今を生きる事だけを考えて生活していた。

 

 

 

 しかし、ここホラエラはウラー村に、まだ希望、夢を持っている少女がいた。

 

 「地図持った、林檎持った、ランプ持った」

 

 少女―――スイナは麻でできたボロボロのリュックに荷物を入れていく。

 

 あの事件から三年、スイナは一生懸命に働き、お金を貯め、勉強をした。

 

 近くの綿工事で朝から晩まで働き、ろくに食事もせずに貯めたお金で教材を買い、勉強をした。

 

 お腹が空きすぎて倒れた事もあった。盗賊に狙われた事もあった。

 しかし、スイナはそれでも諦めなかった。

 絶対に退魔師になる、その目標がスイナに力を与えたのだ。

 

 そして先月、僅かながらだがお金が貯まってきたので、退魔師になるための登竜門でもある「聖十字黒白学園」に入学願書を提出したのだ。

 

 で、スイナは今から聖十字黒白学園があるトゲラ帝国のとある街「ブイッサ」に向けて旅立とうとしていた。

 今日からあと一週間後にブイッサにて入学一次試験が行われる。

 

 「・・・よし」

 

 きっとトゲラに行ったら醜い目で見られるだろう、差別を受けるであろう。

 しかし、それでもスイナはトゲラに行く。

 絶対に退魔師になりたいのだ。

 あの日の二人のような退魔師に・・・

 

 あの日、二人が去ってから、この辺りにも悪魔が出現するようになった。

 何人か、悪魔に殺されたと思われる死体も見てきた。

 悪魔がいつ、この世界に現れたのかは分からない。 しかし、悪魔は人々を襲う。よって悪魔から人々を守るのも、また人々だ。

 

 「さてと・・・」

 

 スイナは僅かな荷物が入ったリュックを背負い、家を出る。

 相変わらずボサボサの明るい茶色の髪。三年前とは違い、今は肩まで髪が来ている。

 ボロボロの麻のワンピース、靴は履いておらず裸足。

 この時期にこの格好はキツイが、仕方がない。お金は全て教材代と願書やら何やらに使ってしまったから。

 

 家を出てまず向かったのは家の裏、父と母の墓。

 

 「お父さん、お母さん、私、行ってくるね」

 

 墓の前で両膝を付き、手を合わせながら呟いた。

 

 そしてスイナは、ブイッサ目指して旅に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ガァーーーーー!」

 

 それは、家を出発してから10分も経たずに現れた。

 

 「ガーゴイル・・・」

 

 スイナはア然。目の前には三匹のガーゴイルの姿があった。

 

 「ど、どうしよう」

 

 まだ家を出てすぐの場所、こんなにも早く悪魔と出会うとは、スイナは思ってもみなかった。

 

 「ガァーーーーー!」

 

 ガーゴイルはスイナに向かって威嚇をしている。

 

 「う・・・」

 

 少し怖じけづくスイナ。 

 (だめ!ガーゴイルなんて怖がっていたら、立派な退魔師にはなれない!)

 

 とは思うものの、今スイナの手持ちには悪魔に対抗出来る武器がない。

 

 (どうしよう・・・)

 

 スイナが悩んでいると、一匹のガーゴイルがスイナ目掛けて突進してきた。

 

 「うわっ!!」

 

 ドサッ!!

 

 スイナは何とかガーゴイルをかわし、ガーゴイルは地面に突っ込んだ。

 

 「くっ・・・」

 

 スイナはその場から一気に走り出した。

 

 とりあえず、武器がない今、一旦逃げようと、考えたのである。

 

 しかし、残りの二匹のガーゴイルは走り逃げているスイナを上空からぴったしマークをしている。

 

 「なんでついてくんのよぉ〜!!」

 

 スイナは思わず叫ぶ。

 

 しかし、ガーゴイルは必要に追いかけてくる。

 そして何より、スイナよりガーゴイルの方が早い。 

 スイナはあっと言う間に一匹のガーゴイルに先を越され、後ろからきたガーゴイルと挟み撃ちにあってしまった。

 

 「・・・わ、私を食べても、お、美味しくないわよ・・・」

 

 声が震えているのが情けないとスイナは思った。

 しかし、ガーゴイルには言葉は通じない。

 

 「どうしよう」

 

 スイナが考えていると、二匹のガーゴイルが仲良く一緒に突っ込んできた。

 

 「ガァーーーーー!」

 

 「ちょっ、やめっ、」

 

 スイナはその場でしゃがみ込んだ。

 三年前のあの日と似ている状況。

 

 「・・・っ!」

 

 しかし、あの日のスイナと今のスイナは違う。

 スイナはガーゴイルが突っ込んでくる寸前、一気に前方に飛び出した。

 

 「・・・・くっ!!」

 

 歯を食いしばりながら一気に跳躍、間一髪、ガーゴイルの攻撃をかわした。

 

 「よしっ!!」

 

 スイナは体制を立て直し、一気に走り出す。

 

 「ガァガァ!!」

 

 背後ではガーゴイル二匹が頭からぶつかり合い、痛みの悲鳴を上げていた。

 

 (よし、後はこの先の曲がり角を曲がれば、結界の貼ってある村に着く)

 

 スイナはスーパー全力ダッシュ!

 

 しかし・・・

 

 スイナが曲がり角を曲がった先には・・・

 

 「ガルルル!!!」

 

 「げっ!!」

 

 黒い大きな体、紅く濁った目、鋭い爪、悍ましい口、四足歩行の悪魔・・・

 

 「キタベルス!!」

 

 スイナは突然の出来事に足が止まった。

 

 「ガルルルル!!!」

 

 キタベルスはスイナを発見するやいなや、威嚇を開始。紅い目が怖い。

 

 そして後ろからは先程のガーゴイルが三匹。

 

 「ガルルルルル!!」

 

 「ガァーーーーー!」

 

 「最悪だ・・・」

 

 合計四匹の悪魔に挟み撃ちにあったスイナ。

 

 「どうしよう・・・・・・・っん!?」

 

 その時、何処からか人間の声がしてきた。

 

 「悪魔戦乱の嵐、孤高の光稲妻、龍燐の吐息、闇夜の屍・・・」

 

 (ん?確かこれって・・・)

 

 スイナが何かを思いだそうとしたその時、突然キタベルスの背後に人影が現れた。

 

 それは、白いコートを着た男性。

 

 「封殺詠唱、風の二十三番、〔剛雷天嵐〕!」

 

 男性は右の手の平をキタベルスに向けた。

 

 「そこのお嬢さん、伏せて下さい」

 

 男性の言葉に気が引かれていたスイナはハッと我に返り、すぐさまその場に伏せた。

 

 そして

 

 「滅せよ!!」

 

 と、男性が叫んだ途端、男性の手の平が光出し、そこから物凄い突風が吹き出した。 

 ゴオオオオォォォォォ!!!

 

 物凄い轟音、そして突風はキタベルス、ガーゴイルをかなりのスピードで包む。

 

 そして、風が悪魔を包んだ途端、風に雷が走った。 

 スイナは伏せながらキタベルスの方を向いた。

 

 キタベルスは口を大きく開けて、苦しみながら何か叫んでいる。

 しかし、風と雷の音が大き過ぎてキタベルスの声が聞こえない。

 

 ガーゴイルに至ってはもう姿がなく、滅されていた。

 

 そしてキタベルスも、すぐに屍となった。

 

 「すごい・・・」

 

 スイナは驚いた。わずか10秒ちょっとで四匹の悪魔が滅されたのだ。

 

 「大丈夫かい?お嬢さん?」

 

 風が止み、白いコートの男性が近寄ってきた。

 

 「えっと・・・」

 

 スイナは戸惑いを隠せないでいた。

 

 「ああ、驚かして済まない。僕はアルティン、アルティン・クローナ。宜しくね」

 

 アルティンはニッコリ微笑んだ。

 

 「アルティン・・・さん?」

 

 スイナはアルティンのコートをまじまじと眺めた。 

 「ああ、僕はしがない退魔師でね、魔法師をやっているんだ」

 

 恐らく30歳くらいだろうか、アルティンは薄いあごひげを触りながら答えた。

 

 「ところで君は?」

 

 スイナはアルティンが退魔師だと分かると、急に立ち上がり、背筋を伸ばす。 

 「わ、私はスイナ・カラタです」

 

 ハキハキとした態度のスイナ。

 

 「スイナちゃんか、カワイイねぇ〜」

 

 にやけ顔のアルティンにスイナは少し怖じけづいた。 

 それに気づいたアルティンは慌てて説明する。

 

 「ああ、心配しなくていいよ、僕はロリコンじゃなくてフェミニストだから」 

 「は、はあ・・・」

 

 「あ、ああ。本当に心配しなくて大丈夫だから」

 

 アルティンは必死な顔をしながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なるほど、スイナちゃんは聖十字黒白学園の試験受けるんだ」

 

 ウラーからブイッサまでの中間地点にある街、コーナタウン。

 人口は百人くらいの小さな街。地面は石畳で舗装され、民の家のほとんどはレンガ作りの家。今、ここにスイナとアルティンは到着した。

 

 「そうなんです。やっと願書が出せるようになって・・・あれ?そう言えばアルティンさん、なんであんな辺境の道なんかにいたんですか?」

 

 スイナはアルティンに聞いた。

 

 「ああ、僕は今回、任務でこのコーナタウン付近の悪魔を退治をしに来ていたんだよ。そしたら、突然キタベルスの声がして、声の方に行ってみたら君がいたわけ」

 

 「ふ〜ん・・・」

 

 スイナは少し考える。

 

 「あの・・・」

 

 「なんだい?」

 

 「さっきアルティンさんが悪魔に撃ったのって、封殺詠唱風の唱ってやつですか?」

 

 

 封殺詠唱

 

 これは魔法師が悪魔に対して放つ攻撃魔法の事。

 

 封殺詠唱は大きく分けて五つの種類がある。

 

 炎の唱:炎を中心に使う攻撃力重視の魔法

 風の唱:風を中心に使う機動力重視の魔法

 氷の唱:氷を中心に使う命中力重視の魔法

 光の唱:光を中心に使うバランス重視の魔法

 闇の唱:闇を中心に使う扱いの難しい大技魔法

 

 そして各唱には一から百までの番号がついた技があり、各技の前文を詠唱する事で魔法を放つ事が出来るのだ。

 

 しかし、封殺詠唱は体力を使わない代わりに精神力を莫大に使用するため、体力重視の聖剣師には撃てず、精神を鍛えている魔法師にしか撃てないのだ。

 

 

 

 

 「スイナちゃん、よく知ってるねぇ、確かに〔剛雷天嵐〕は風の唱の二十三番、相手を風で束縛し、雷で攻撃を仕掛ける技だ」

 

 アルティンは感心したように頷く。

 

 「そう言えばスイナちゃんって魔法師になりたいの?聖剣師になりたいの?」 

 スイナは少し困った表情をした。

 

 「う〜ん、実はまだ決めてなくて・・・」

 

 「そうか。それならまだ時間はある。ゆっくりと決めたらいいよ」

 

 アルティンは空を見上げた。

 空はもうオレンジ色に染まっていた。

 

 「じゃあ僕はそろそろ時間だから、本部に戻らなければ」

 

 アルティンはその場に移動用の魔法陣を出した。

 

 「スイナちゃん、良かったらブイッサまで送ろうか?」

 

 その言葉にスイナはピクッと反応。

 

 「いいんですか!?」

 

 「ああ、別に構わないよ」

 

 アルティンは魔法陣の端を軽く指で触り、少し広げた。

 

 「さ、この魔法陣の中に入って」

 

 「ありがとうございます!!」

 

 スイナはワクワクしながら魔法陣の中へ。

 

 魔法陣の中に入った途端、石畳の冷たさで冷たくなっていた足の裏が、ほんわかと温かくなるのを感じた。

 

 辺りは光のバリケードみたいなもので囲まれている。

 

 「いくよ」

 

 その瞬間、一瞬スイナの頭は真っ白になり、気がつくといつの間にか知らない街に来ていた。

 

 「すごい!一瞬で違う街に来ちゃた!!」

 

 初、魔法陣に興奮するスイナ。

 

 「すごいだろ?では僕は本部に戻るよ」

 

 アルティンは再び魔法陣を作りだす。

 

 「アルティンさん」

 

 スイナはアルティンに向かい頭を下げる。

 

 「今日は本当にありがとうございました!!」

 

 それを見てアルティンは軽く笑った。

 

 「いいえ、どういたしまして。

 スイナちゃん、試験頑張ってね」

 

 「はい!」

 

 アルティンはスイナの返事を聞くと、魔法陣を使ってスッと消えてしまった。

 

 (よし、入学一次試験、絶対に頑張ろう!!)

 

 スイナはそう、心に誓った。

すみません、今回も学園系は無しです。



次回、聖十字黒白学園入学一次試験、スタート!

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