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倉庫キャラにTS転生した私は、この世界で自由に生きる。  作者: うずいけ音叉
第四章 スローライフ及び平穏な日常での強化(仮)
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97 セ界の中心でユキと叫ぶ

 姿見を出して、身体をチェックする。

 両手をあげてー、おろしてー。うん。

 動きに違和感はないね。


「ちょうしは、どう?」


「どうなんだろ、少し身体が重く感じるかも?」


 金色のセミロングヘア。

 青い瞳、白い肌、ふにっとした少女体形。

 そして貧乳に長いエルフ耳。

 これが、私の新しいロリっ子ボディだ!


「うははっ! みてみて、力を入れたら耳がピコピコ動く」


 ひょこっと耳を動かす。

 視界外から触手を伸ばして、スラ子が触れてきた。


「うひぁ!?」


「おー、びんかんだね!」


 思わず、耳を抑えてしゃがみ込む。

 いきなり触るとか、何てことを。

 エルフ耳が敏感なの、都市伝説では無かったのか。


 スラ子も他人が居ないと、感情が出るみたいだ。

 やっぱり、私に万が一が無い様に気を張ってるのだろう。

 私の世界に対する所見で、少し脅しすぎたせいだろうか。

 いや、でもなあ。




「ところで、よかったの?」


「んー? とても良い身体だよ」


 跳ねたり柔軟したりして、手足を伸ばした時の到達点の確認。

 時間を掛けて、細部の違和感を消していく。

 貧乳は動きが制限されなくて良い。

 ミルクラインの感度も高くて満足。


「そうじゃなくて、パイラスのこと」


「ああ、仕方ない。あの子は、これからの戦いにはついてこれないからね」


 今、私はエルフの少女になっている。

 前の身体は、精霊の魂を取り出すために廃棄せざるを得なかった。

 廃棄ついでに魔力に還した際、パイラスもそのまま浄化されてしまった。

 どうも、精霊の魂ありきだったらしい。


「パイラスの事は気の毒だけど。ある意味ごちゃついた感じが消えて、肩の荷が下りた気がする」


「もったいなかった、きがする」


 色々な能力が使えなくなった。

 魔力障壁、魔力視覚、自身の重量軽減、透明化、リミッター、あとなんだっけ?

 痛いとは思うけど、まあ無くても何とかなるだろう。

 その為のスラ子ですよ。

 しかし、こうして列挙すると、日常生活には要らないものばっかりだな。


 逆に、変わらなかった事もある。

 三日という短期間ではエルフの身体は大人にはならなかった。

 そして、急速成長のデメリットでガン変異が起こったのは想定外だった。

 仕方なくスライム細胞で補ったが、おかげで目が光に弱いのはそのまま。

 まだ、しばらくは偏光メガネが手放せないね。

 材料も集まった事だし、コンタクトにしても良いかな。

 魔力感知が残ってるのはスライム細胞のおかげだろうか。


「ふむう、魔力の通りは良くなった、かな?」


 私の周りに、雪の結晶をキラキラと舞わせる。

 結晶同士に伝播するよう、微弱な雷を発生。

 パチパチと音を立て、雷を受けた結晶は弾け消えて他の結晶にチェーンしていく。


 もちろん、私にも。


「あいっだぁ!?」


「なにやってるの」


 びりっときた。

 これだから電気系の魔法は。

 突き出ている所に直撃するから、とても痛い。


「大丈夫? 乳首が二つに割れたりしてない?」


「だいじょうぶだよ、ミルクがでるようにしか、なってないから」


「えっ、せっかく身体を変えた時に治したと思ったのに!?」


「ざんねんでした」


 あー、びっくりした。

 使える魔法は増えたけど、この程度じゃあ戦闘面では役に立たないね。


 鉄のインゴットを出して持ってみる。

 以前よりも重い。

 腕力が大分落ちてるね、これは。

 魔力や筋力、肉体の能力で以前の身体と性能差が出るのは面白い。

 肉体、魔力体、スキルや武具等の外部恩恵を全部掛けたのが個人の能力として計算できそうだなー。


「ふくは、これ」


「ありがと」


 渡された物は、モスグリーンのエルヴンチュニックにミニスカート。

 エルフの白い肌をマシマシに見せつける子供服。

 腋とお腹がガッツリあいてるけど拘束感が無いのは良い。

 ノーパンではあるものの、一分丈レギンスには安心感がある。


「あー、錬金術ギルドの登録腕輪どうしよっか」


 腕輪をジャグリングしながら悩む。

 エルフの少女になった弊害は、他にも出そうだ。


「ギルドとうろく、もういちどする?」


「そうだね、それしかないか」


 シャガを名乗って、かたりだと思われても困る。

 説明が難しいし、そこまでこだわっている訳でも無い。

 また銅級からにはなるけど、別に構わないだろう。




「おーっす、おっす。精霊の魂、持ってきたよー!」


「おまたせ」


「あんた誰よ! ……ってシャガしかいないわね」


 早速アンに会う。

 明らかに別人だけど、この付近の地域には他に誰も居ないらしい。

 おかげで、すぐに理解してもらえて助かる。


「いいや、今日から私はユキと名乗らせてもらう! ユキです! ユキをよろしくお願いします!」


「また、なまえかえるの?」


「違うでしょうスラ子、りっすんりっすん。姿が違えば、当然名前も違うでしょう?」


「とうぜん、なのかな」


 ゲーム初心者じゃああるまいに、オンラインゲームのキャラに本名を使う人は居ないでしょう。

 その延長でございますことよ。


「それで、精霊の魂はアンに渡せばいいの?」


「そうね、あたしが預かっておくわ」


 取り出した精霊の魂をアンに渡す。

 彫り込んだりしてちょっと傷ついていたけど、錬成して直しておいた。

 受け取った物が本物か確認した後、オーケーが出る。


「ところで、何で他の精霊がいないんですか?」


 精霊界なんだから、何体か見えてもいいはず。

 むしろ一体もいないのは、おかしいよね。


「ああ、もう他の世界に行っていないのよ。今の精霊界にいても詰まらないから、ここに留まる精霊はほとんどいないわ」


「でも、ライト……様、はまだおりますよね?」


 呼び捨てにしかけた時のアンの顔、こわい。

 これは信者キマってますわ。


「あの方は、精霊界の維持を頑張っているのよ。決して移動が面倒で残っているわけでは無いわ」


 説明ありがとうございます。

 精霊界の維持、ねえ?


「その維持とやらが、私の錬金術と関係すると」


「ええ、でも精霊の魂……の一部でも十分だわ。あんたは、もう用無しってわけね」


 私が渡したのは、あくまで一部。

 あっちの世界には、まだ散らばった精霊の魂がいくつかあるはず。


「そこまでして、精霊界を維持する必要があるの?」


「どうでしょうね、いくつかの世界で魔法が使えなくなるくらいじゃないかしら?」


 そいつぁ大変だ。

 あっさり言い放ったけど、精霊界と繋がってる世界は一つや二つじゃあ無いのか。

 魔法が使えなくなるって事は、浄化魔力の循環先に精霊界を通しているのかな。


「ドクター、よーなしのタルトがたべたい」


 ようなし繋がり。

 そう言われたら、食べたくなるじゃあないか。


「そうだね、そろそろおやつを食べようか」




「うまー」


 さっくりジューシーな酸味果汁とタルト生地が、さわやかな甘みと食感に変わる。

 はー、やっぱり錬金術の基本は料理だよなー。


「それで、どうやったら精霊界は回復するんです?」


「あら? やる気になったのかしら」


「ドクターのことだから、かえるのかと」


 まあ、そうなんだけど。

 気になったんだから、仕方ないじゃあないか。


「それじゃ、受けるって事でいいわね?」


「そうですね」


 私が引き受けたことを確認した後、早速説明に入った。


「ある場所の深部に動力があるから、そこの再調整をして欲しいのよ」


「はあ……それ、アンさんがやっても良いのでは」


「あたしでは無理だったわ。劣化した動力魔法陣を再生成しないと、伝播効率が回復しないのよ」


「設計図のような物はありますか」


「これよ」


 そう言うと、アンは空中に魔法陣を展開した。

 いくつもの魔法陣が歯車のように連結され、色々な事をしているのだろう。


 更にもう一つ、同じ展開図を空中に出す。

 間違い探しかな?

 まあ多分、不良部分を追記したものだろうけど。


「どう? 直せるかしら?」


「すみません、全く読めないです」


 魔法陣に書かれている精霊文字と呼べるものが全く読めない。

 この状態で直せと言われても、絶対に無理。

 魔法陣ごとの魔導性も読み取れない。


 必要な魔力を適切に流せないと、全てとは言わないまでも、かなりの魔法陣が崩壊するだろう。

 電気を使うわけでは無いけど、ワット数の違う電気を流すと製品が壊れるようなもので。


「なので、おしえてくーださいっ」


「くーださい!」


 私とスラ子の二重クレクレビームをくらえ。

 この動きにより、催眠術をカモフラージュ出来るのだ!


「仕方ないわねえ、こういうのはライト様が持っている本に頼るしか無いわ」


 よーし。

 これで精霊文字が分かるぞ。

 問題は、覚えるまでどれくらい掛かるかだな。

 あっちの世界に降りて覚えた文字と違って、時間の数え方からして突拍子もなかったからなあ。

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