82 無限のクリーンなエネルギー
さあて、内装も後はインフラ関係か。
テーブルや椅子は木材から適当に作った。
困ったら作り直せばいい。
簡単なお仕事でした。
「さて、家で使うエネルギーですが」
「どのマセキ、つかうの」
「あー、いや。水や明かりの魔力を消費する設備は、消費元を一つに纏めようかと」
井戸に頼らない場合、水道を使う時は魔石から魔力を引き出して水を流す。
スイッチをオンにすると、魔法陣が完成して水を発生させる魔法になる訳だね。
それは他の設備も、おおむね同じ。
魔石がスイッチの役割もこなす細工がされている物もある。
そこは技術者や現場次第、まあそれはおいといて。
だったら、でっかい魔力タンクを一つ用意して、そこから魔力を供給してしまえばいい。
これならば、魔石ごとの摩耗や交換なんかのメンテナンスも一か所で済む。
「だから、建物中央のレンガ柱に空洞を作る必要が有ったわけですね」
「そんなおおきいマセキ、あるの?」
「ない。今から造る……魔石じゃあないよ? 魔力の供給装置を造るのだ」
そもそも、そんな大きい魔石があったらインフラに使うなんて勿体無い。
さて、勢いで造ると言ったがどうしたものか。
はっきり言って、何も考えていない。
魔力水は補充が楽だけど、魔力の蓄積上限が低いから無し。
毎日頑張って補充するなんて、どう考えても面倒になる。
だからといって、他に有用な物が魔力タンクとして使われていたら魔石なんて使われないんだよなあ。
「何を作ればいいかなあ」
「マセキをれんせいして、くっつけるとか」
「うん、まあ。やってみようか」
ちっこい魔石を二個取り出し、くっつけ合わせて錬成。
触れた境界面が、あやふやになった瞬間。
二つとも魔力に還り、消えてしまった。
「ちょっと、私には出来ないかな」
結果は分かっていたけど、やってみないと納得してくれなかっただろう。
これが出来たら、大きい魔石を量産したのだけど。
出来ない理由も、何となくわかっている。
表面の構成魔力が魔石ごとに違うから。
そして、その魔力が絶妙なバランスで表面部分を構成しているから、魔石として安定している。
ただくっつけて錬成しても大きな魔石にはならないのは、表面の魔力バランスが崩れる為。
もしも出来たとしたら、理論上は際限なく大きな魔石が作れるだろう。
魔力バランスの調整はともかく、魔石として安定している原理が良く分からないんだよねー。
「ざんねん。じゃあどうするの」
「うーん、こういうのは無限に近い自然エネルギーを利用するべきなんだろうけど」
水力、風力、その他もろもろ。
これらを魔力に変換する手段は、今のところ思いつかないなー。
物理の残滓が最終的に魔物へと変わり、浄化することで魔力に戻る。
一応そういう流れだとして学んだけど、裏道はあるはず。
「きり」
霧。
魔力で構成された。
「なるほど、ここならいくらでもある」
しかし、どうやって?
霧は、時間で変化しているようには見えない。
安定した状態の霧を、魔力に変換するためには。
「霧のまま、魔力を取り出す装置を造るしかないか」
「みっか、かかりそうだね」
「いーや、五日は掛かるね」
霧の魔力を、使える魔力へと変換させる装置はこれから考えなければならない。
私の予想では五日だけど、さて。
室外機から霧を取り入れ、家の中央で変換機を通して魔力を取り出す。
そして、残った空気を外へ排出する。
ここまでは、すぐに出来る。
取り出した魔力は、何に蓄えさせる?
「魔石を使わないとなると、やっぱり魔力水になるのか」
実質、無限に魔力を使えるなら室外機は吹かし続けても良い。
魔力水が色んなところで使われてるのは、水は魔力と錬成しやすいから。
そして、魔力を取り出して、利用しやすいから。
魔石だとダメな理由は、魔力を籠めすぎると石が崩壊してしまうからだ。
その点、魔力水なら余剰分の魔力は水に溶けずに空気中に還ってくれる。
「魔力を水に送って、自動で錬成するように組んで」
「うるさそう」
「確かに、そうだねー」
水に魔力を錬成させ続ける為に、空気ごと魔力を水に通す。
その時、ボコボコと音が出るのは問題か。
イメージとしては、ビーカーにストローで息を吹き続けている状態。
防音しないと、確かにうるさいだろう。
防音壁も貼りつけないと。
消費予定の水は魔法で生み出せばいいし、えっと、後は?
「後はどんな問題がでるかなあ、今のうちに解決して置かないと後からやるのは面倒だ」
「すてたゴミ、どこにもっていくの?」
ゴミと、あとは排水先も考えなきゃ。
まあ、これは簡単だ。
「そこは、町の人達の生活様式に合わせよう」
空井戸を掘って、スライムでもぶち込んで置けば消化してくれるだろう。
ギルドで、銀級の資料を読ませてもらって分かった事だけど。
町中の掃除用スライムは、銀級職員が仕事で手配していた。
なので、廃棄物を吸収させるスライムの作り方は知っている。
「取りあえず、霧を魔力に変換する方法からだね」
実験その一。
霧は見えているのだから、電気分解できるのでは?
「で、これが霧を集めてフラスコに詰めたものね」
電極を二本入れて、空中放電させて分解。
出来たらいいなあ。
「いけいけー」
はい、バッチンこ!
「無理でした」
「よそうどおり」
そう、予想通りだ。
これで、ただの霧では無い事が証明された。
魔力が見える形で霧になるなんて、ありえない訳で。
霧として視認させる魔法だと推測出来る。
「魔法であるならば、還元して魔力にすればいい」
ゲーム的に言い換えるなら、受けた魔法の一部を魔力に変換する方法。
これを魔道具化する。
まずは、この霧の属性を調べて、と。
風、それと闇か。
風は空気中に散布されているから分かる。
闇は霧を見たものが、森から抜け出せないように認識を歪めるため、かな?
一通り終わったら、霧の影響を無効化する道具でも作るか。
少し話が逸れた。
属性が割れたなら、フィルターに掛けて、それぞれの属性魔力に分離させる。
分けた魔力は逆属性で中和、無属性に戻す。
そこからやっと水と錬成させて魔力水を作れるって流れになるかな。
問題はフィルターを通した時の、魔法から魔力への還元率。
フィルターの魔道具をどこまで精巧に作れるか。
耐久性も考えないと、頻繁に交換が必要になって費用もかさんでしまうだろう。
「やっぱり、五日は掛かると思うんだよねー」
「やってみないと、わからない」
「五日掛かりました」
「みっかだよ?」
「うん、ごめん。盛ったわ」
魔力供給装置は、三日で終わった。
水道につなげたり、エアコンやコンロを作ったりで合計五日だったのだ。
ともあれ、内装も一通り終わって最低限、家の体裁は整った。
「はー、ようやっと終わったかー」
「おつかれさま」
「作業ついでに作った、魔法の霧を無効化する魔道具が通用するか実験しようか」
作ったはいいものの、実証試験は後回しにしていた。
外の出て、森の空気を目いっぱい吸い込む。
五日間、家に引きこもっていたから、空気が美味しい。
雨も降っていたようで、玄関近くには水たまりも出来ている。
家の周りの植物を枯らしちゃったから、水捌けが悪くなってるな。
「はい、スラ子の分」
「ふふっ、おそろいだぜー」
「いぇーい」
ハイタッチだぜー。
地平線まで続く森の、端まで広がっている霧の広さ。
一瞬だけ無効化しても意味が薄く、継続的な効果が求められた。
難しく考えなくても、霧を見通せれば、それでいい。
つまり、メガネでいい。
普段掛けているメガネを外し――
カッ、と勢いよく掛け替えて霧を再度見る。
「おー、よくみえる」
「成功してよかった、これでもし別の所に行きたくなっても大丈夫だね」
解決できずに、森から脱出できないエンドにならなくて済んだ。
こういう時、生産寄りのスキルを取っていた事をありがたく感じる。
違うか、今まで直接戦闘を強いられていたのがオカシイのだ。
適材適所という言葉が身に沁みる。
よく考えたら、私と同じ発想でこの霧を利用した人はいなかったのだろうか。
そんな人がいたら、霧はもう無くなっているはず。
技術力か発想力、どちらかが足りて無いって事だよね。




