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60 十分に発達した魔法は、科学技術と見分けがつかない。

 男……いや、ジャスがドアを開ける。

 開けた先には、もう一枚のドアが。

 中間の部屋である通路は横に繋がっていた。

 洗面所、シャワールームと並んでおり、身体を洗えるようになっている。


 思い返すと、廊下を通っているときに物音は聞こえてこなかった。

 ドアを二枚ともキチンと閉めていたら防音は完璧なのだろう。

 なるほど、これで外に助けを求めたとしても声が漏れない様になっているのか。


 ジャスが二枚目のドアを通っている間に、私は最初のドアに鍵を掛ける。

 よくあるタイプの鍵なので細工は簡単、ロックした鍵を錬金魔法で歪ませて開かなくする。

 これで増援も無ければ、逃げられることも無い。


 私も二枚目のドアを通る。

 部屋には、まずジャスで一人。

 それ、と?


「そんな所で立ち止まって、どうかしたかい?」


 あれ?

 今、私はポカンとした顔をしていたのだろう。

 ジャス一人しかいない。

 どういうこと?

 こいつが一人で何でも出来る自信のある男なら、こんな部屋を用意する意味は……?


「ええっと、確認してなかったけど。本当にお金を持ってるか、サイドテーブルに置いてほしいなって」


「ははっ。疑り深いんだな、それも仕方ないか。金一枚も出す奴なんて普通いないからね」


 そう言って懐から財布を出すと、ベッド横のサイドテーブルに金貨を一枚置いた。


「これでいいかな?」


 あれれ?

 ジャスは凶器を持っている訳でもなく、周りには不審な魔力も見えない。


「来る途中、後ろを気にしていたけど」


「ああ、よく見ていたな。怖いお兄さん達とグルになってる女性もいるみたいだから、君もそうかもしれないと」


 だが違ったようだ、疑ってすまなかったね。

 そう声を掛けられても反応に困るが。

 これじゃあ、まるで。






 まるで、ただ花売りをしているみたいでは?

 「ほんとうに、ついていくの?」

 先程の、スラ子の言葉が思い出される。


 今更逃げる? まさか。

 退きません、こびへつらいます、反省もします。

 私に逃走はないことだー!


「さ、さきに身体を流してきます」


 バスケットに服を放り込み、シャワールームに駆け込む。

 逃げてない、戦略的撤退だ。


 うわあ、スク水を着ていた部分だけ肌が白くなってる。

 水着から着替えた時は暗くて気付かなかった。

 確かに日焼けは狙ってはいたけど、グライダーで日陰になっていたのに焼けるとは思ってなかった。

 日焼け色とのツートンカラーがえっちだなあ。

 あれ? でも日焼けって要は火傷だから、私には無縁の筈では……まあ、いいや。

 とりあえず、身体を洗ってしまおうか。


 おや、液体石鹸以外にもトリートメントとリンスも置いてある。

 ジャスがいい場所と言っていたとおり、置いてある物のランクが全体的に高いな。

 きちんと盗難防止で固定されてる辺り、危機管理も出来ている。

 横には、こういう場所らしいオモチャも置いてあったりするけど。


 とりあえず、全身を洗いながら考える。

 シャワーは温水になっていて、使いやすく調整されていた。

 スポンジのようなものは無い、手に石鹸をなじませて身体に塗っていく。


 おや、このリンスいい匂いするね。

 ……もしかして、こういう場所って一緒に入るもの何ですかね?


「なにか、てつだうことある?」


 唐突に声を掛けてくれたスラ子が心強く感じる。

 手伝えること、ねえ。


「口腔粘膜と下を、薄い膜状に張りついて保護をお願い」


 病気や子供が出来ても困るし、スラ子の膜が異物を消化してくれれば問題ないだろう。

 更に念のため耐毒と耐病気のポーションを飲む。

 再生薬も飲む。

 サービスだ、膜も復活させておこう。


「いっ、うゆっ……!」


 再生中のむず痒さに声が出る。

 太ももを締め付けても、そんなことでは改善されない。

 指を突っ込んで掻き毟りたくなるが、何とか我慢できた。


 ここに来て今更だが、はっきり言って不安だ。

 だけど本当に嫌なら逃げてるはず。

 そう、嫌なだけならこんな所にはいない。

 大丈夫、相手がスラ子やタコから男に変わっただけ。

 普通なら心配するべきことも全部対策してある、はず。


 覚悟を決める為に、遅効性の媚薬も飲んでしまおう。

 うーん、このねっとりドロドロとした食感に変な甘さ、不快感がすごい。

 飲むよりも塗ったり掛けて使う為に、揮発しにくくしているから粘度が高いのは仕方ないか。


 私の媚薬は魔力に作用して精神や、それに伴う感じ方を一時的に変化させる。

 慣れない感度が、より敏感に感じているように錯覚する。

 そうなると、これは闇属性の魔法薬って扱いになるのか。

 魔法薬の属性区分なんて属性付与や耐性薬でしか気にした事無かったなあ。




 シャワーからあがると、髪と体についた水を操って地面に落とす。

 自分の魔力が浸透した水滴なんて操るのは容易……でもないか、慣れてきたのかな。

 ドライヤーのようなものはあったが風量が弱い。

 乾くまで時間が掛かりそうで、使いたいとは思わなかった。


 バスローブが備えられていたので、羽織って部屋に向かう。

 ジャスは飲み物を飲んでいた、冷蔵庫のような箱が置いてあるから勝手に取ってもいいのかな?


「お待たせ! お次どうぞー」


 媚薬の初期作用である、気分の高揚が表れてきた気がする。

 さっきまでと違って明るい顔をしている私を見て安心したのか、ジャスの表情は和らいだ。


「ああ、冷蔵庫に入っている物は自由にしていいから」


「そうなんだ、いってらっしゃい」


 見送った後、冷蔵庫をあさる。

 おや、お酒が置いてある。

 コルクと瓶を繋ぐ、未開封を示すラベルに書いてあるのは――フルーツリキュールか。

 度数が高いお酒は、こっちに来てから飲んだこと無かったなあ。

 個人で飲む瓶サイズだったのでコルクを開けて、コップに注がずそのまま口をつける。

 ちびちび飲むと上品な風味で大変結構、瓶を片手に他に何が入っているのか確かめる。


 その中の気になるラベルに苦笑い。

 直球で「媚薬」と書かれたピンク色の液体の入った瓶。

 本当に媚薬だろうか、効果の強さを間違えると命の危険がある薬だと思うのだが。


 好奇心に動かされるまま、コルクを開ける。

 においは、強い桃のような香り。

 数滴口に含むが……んん? 効果あるのかこれ?

 少しだけトロっとしたジュースとしか思えない。


 シャワールームからは、まだ音が聞こえる。

 まだ戻ってこないだろうとアタリをつけて道具を取り出す。

 シャーレに垂らし、属性を調べるための透明な変性試験紙を浸して色の変化をみる。

 私が使った媚薬のように闇属性の黒色に変化するだろうか。

 もしかすると元気にするため、肉体の活性効果で火属性の赤色になったり?

 精力の回復を目的として、水属性の青という線もあるか。


 じっとみつめるが、どの色にも変わらなかった。

 なあんだ、ニセモノか。


 それっぽい状況で、それっぽいものを使う事で雰囲気を出す、偽薬効果に頼るジュースだね。

 発想は嫌いじゃあないが、ちょっと残念。




 シャワーを流す音が消えて、慌てて道具をしまう。

 椅子に座って気を落ち着かせるために酒をあおる。

 リキュールの中身が、いつの間にか半分程減っていた。

 おいしかったからなのか、まだどこか緊張しているのか。

 はあ、自分を誤魔化しても仕方ないか、緊張すると全然酔えない癖は変わらないなあ。


「お酒がつよいんだ?」


 ジャスがバスローブ姿で入って来た。


「この手のお酒、結構好きなんです。それよりも、その媚薬って書いてあったボトル、ただのジュースですよ」


 テーブルの上に置いてある、自称媚薬を指さす。

 私の指摘に、ジャスは含み笑いをした。


「ああ、本物を置くと領の監査が厳しくなるから。知らない女性と使う分には、気分も盛り上がっていいものだよ。それにしても、よく偽物だと分かったね?」


 あ、迂闊だったか?

 まあ、お酒を飲んで口が軽くなったからと言って、バレて困るような情報は持ってないからいいや。


「魔法薬には造詣が深いものでして。それよりも、まるで知っているような言い方ですね」


 ジャスはベッドの上に座り、自らが開けていたボトルを傾けて口を湿らす。

 そして、満足そうな顔をすると私の疑問に答えた。


「それは私がここのオーナーだからだよ。どうかな、何か不満点はあった?」


 本当に、ここがこの男のハウスだったのか。

 その言葉には自慢している声色も無く、本当に意見を聞きたがっているように聞こえた。


「高級ホテルとして営業出来そうなほど満足でした」


「そう言って貰えると嬉しいな。でも、立地が悪くてお偉いさんの隠れ家のような扱いをされてしまって、いっそこういう方針転換をして……いや、今は仕事の話をする場では無かったか」


「構いませんよ、そういう話も嫌いではないですから」


「ふっ、君は不思議だ、普通は仕事の話なんて嫌がるものだけど。さあ、こっちにおいで」


 ドキッとして、汗がじわりと浮かぶ。

 いっそ無知な方が良かったと思ったのは初めてかもしれない。

 呼ばれた通り、ジャスのもとに向かう。

 出来るだけ冷静に、平然と。


 近くまで寄ると、ぐいっと手を引かれる。


「ひゃっ!?」


 バスローブ越しに掴まれた腕がビクンと反応した。

 思っていたよりも感度が高い。

 引かれたまま身を任せると、膝の上に背面で浅く座らされる。

 後ろから肩を抱かれ、デコルテにあごを載せて頬をくっつけてくる。

 ヒゲがチクチクして、あまりいい気分では無い。

 逆に言えば、接触している所に意識が集中していた。


「大丈夫だよ、まだちょっとお互いの事を知らないだけさ」


 耳元でかけられる声が、浸透するようにビリビリと来る。

 一定のリズムで身体をゆりかごのように揺らす。

 髪に指を入れて撫でたりするうちに、徐々に身体の緊張がほぐれてきた。


「いい匂いがする」


「同じもので洗っていたと思いますけど」


「同じものを使っていても、匂いは変わるさ」


 そう言われて鼻に意識を向けると、ジャスの匂いが入って来た。

 男の匂いなんて、どうとも思ったことは無いのに、鼻から息を吸う度に身体の熱が上がっていくのを感じる。


「なんで、金貨を払ってまで?」


「今、それ聞く? 君みたいな可愛い子が慣れてるとは思ってなかったから。それだけの価値があると直感したからかな」


 抱き着く腕がお腹の方にまわり、ぐいっと引き寄せられた。

 深く座ると、男の主張がおしりに当たっている。

 そろそろか、と思ったがジャスは我慢強かった。

 その態勢でバスローブに手を入れ、肩やお腹などの遠い所から触り始めた。

 手つきは、いやらしさを隠しきれていないが、ゆっくりと優しい。


 触れられたところが痙攣してしまうほど、こちらも結構ギリギリなのだが。

 息が漏れ、自分でも可愛らしいと思える声が溢れる。

 自分でもおかしいと思うが、そんな自分の可愛さに興奮が高まった。


 いつの間にか、お互いのバスローブは脱がされていた。

 身体を半回転させられて、不意にキスをされる。

 膝の上に対面でまたがっている状態だ。

 胸が押しつぶされて密着感が増す。


 唇が触れる程度では不快感しか無かった。

 キスが深くなる。

 媚薬の効果が深まって来たのだろうか。

 舌が思っていたより敏感で、不快感なんて吹っ飛んでいた。

 熱を持った身体には敏感なところが触れている事実に気持ちよさを感じ、更に求めてしまう。

 長く、深いキスから離れると、いつの間にか止まっていた呼吸を再開する。


「自分から押し付けてくるなんて、積極的だ」


 気付いたら腕も足もガッチリしがみつき、腰が動いていた。

 無意識だったので恥ずかしくなり目をそらし、顔が赤くなるのを感じる。

 しかし、頬に手を当てられて、無理やり目を合わせられた。


「ねえ、もう我慢できないんだけど」


「まだダメだ、夜はこれからだからね」


 ジャスが、私の背中を抱いていた手が、下に伸びていく。

 私の身体を味わうように、外からゆっくりと、徐々に中心に向かっていく。

 くすぐったさも感じ、身もだえするがガッチリと抱きかかえられているので身体がこすれあう。

 私の柔らかな身体と、男の筋肉の硬い身体が触れるたびに女の本能が呼び覚まされる。


 まだ、全然はじまってもいないのに。

 敏感に開発されている場所が、薬の効果も相まって、私の理性を奪っていった。

チキンレースの時間だ! オラァ!!



大丈夫だと思ったから投稿してるわけですけど。

もし警告が来た場合、バッサリカットして以下に差し替えます。




オッサンは こしを ふかく おとし まっすぐに あいてを ついた!

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