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「はー、疲れた」


 なんで身体洗うだけでこんなに疲れてるんだろうか。

 あの後、ジェーラさんの身体を洗うのを手伝わされた。

 声も抑えてくれなかったし……あれ、もしかして誘ってたのかな?


「それじゃ、一階に食事へ行きましょうか」


 暗くなり始めた窓の外を見ながら、ジェーラさんが誘って来た。


「男二人は待たなくてもいいんですか?」


「一緒に食べなければいけないと言う訳でも無いでしょう、それと夕食の時間になったら二人とも来ると思うけれど、必要な物資を補充するだけでしょうから」


 そりゃあまあ、そうだね。

 そういえば、夕食前にはベリアが起きるだろうと思っていたら、全然目覚める気配が無いんだけど。


「ねえジェーラさん、べリア起きないんですが。どうしましょうか」


「急な旅の無茶に体力が追い付いていないのでしょう。申し訳ないのだけれど、今後も必要な時、出来るなら貴女に替われるだけ変わって欲しいのよ」


 そう言われると断り難い。

 男二人に会って、入れ替わっている事を説明するのも億劫だから、べリアの振りでもしようかな。

 変わっているのは目の色だけだろう、幻影で変色させればベリアにも見えるはず。


「ええっと、こんな感じであってますか」


 ジェーラさんは私を見て、頬に手を当てながら唸る。


「目の色しか戻せていないわ。ええと、そうね、纏っている魔力が違うというのか」


 なるほど。

 だから入れ替わったときにすぐ気が付かれるのか。

 魔力が人物の雰囲気に影響するとは思わなかったなあ。

 ベリアの魔力波長なら覚えている、合わせるのは簡単とは言わないけど出来る。

 問題があるとすれば、合わせたまま維持すると咄嗟に使う魔法の精度に影響するくらいだろうか。

 使う魔法の波長もベリアの物にしなかったら怪しまれるだろうからね。


「よし、これで完璧ですね」


 こちらを見る目が渋いままだ。

 まだ、どこかおかしい所があるの?


 おもむろに腰に差した鞭を握る。


「姿勢、表情、足の開きだけでも全然違うわね。べリア様の替わりを演じるなら完璧にしてもらうわ」


 いや、矯正されるのは別に構わないんだけど。


「その鞭なんとかなりませんか」


 その鞭、裏の部屋で使ってたやつじゃん?

 叩かれたら下着がぐっちゃぐちゃになるって。


「あら、いつの間に。間違えるなんて私らしくないわね」


 絶対分かってて持ってたと思うんですけど。

 使うタイミングから考えると、手合わせ中にあの鞭を使って勝ちに来るつもりだったな……。

 そんな小細工を使わなくても勝てなかったわけだが。

 というか、何でまたそんな物を持ってこようと思ったのか。


「さあ、短い時間ですが久々に教えてあげますので。覚悟して下さいね」


 普通、教育に覚悟は要らないんだよなあ。


 正直後悔している。

 痛みがある方が肉体的にきつい。

 出てきた涙を舐めてきたときは恐怖を感じたんだが?

 本気になるという事がどういう気持ちなのか、久々に思い出せたのは収穫だったのかもしれない。






 時は進んで、一階の酒場。

 意外にも数十回程度叩かれただけで合格を貰ったので、注文をした料理が届いたところ。

 ジェーラさんは料理に手を付ける前に、大ジョッキのビールを一気に煽っていた。


「あーったく、あんであんなおんなのとこについていくのよ!」


 うお、アクアパッツァうまっ。

 貝の出汁とトマトの旨みがよく溶け込んでるわ。

 さすが高い宿泊所。

 そこそこ距離のある海の海産物をうまく仕上げるなんてやるなあ。

 馬車でここから五日くらいだっけ、保冷とかどうしてるんだろ。


「ちゃんときいてんのー?」


「聞いてますよー」


 今ので六杯目でしょ? 知ってる知ってる。


 丸テーブルの対面にいたジェーラさんは、椅子を引っ張って隣に座っている。

 今は独り言に飽きたのか、私の肩に腕を回して愚痴を言っていた。

 正直うざい。

 彼女の指を見ると……黄金のリングはしている。

 泥酔防止も着けておけば良かったか、反省。


「あ、おっちゃーん。おかわりちょうだーい、ふたいぶんねー」


 え、二人分?


「飲んでいいの?」


 いや、飲んでいいなら飲むけど。

 ベリアの身体だから遠慮していたんだよ?


「ろーせ、あんとかすんでしょ? いいかや、のめのめー」


「うひょー、さっすがジェーラさん、はなしがわかるぅ!」


 掴んだジョッキは冷え切って無かったので、魔法でキンッキンに冷却して一気。

 テーブルから熱いウインナーをつまんでバツリと噛み千切る。

 肉汁とビールが混じったこの幸福感。


「ごく、ごく……っかー! たまんねー!」






「なんだこいつら、べリアとジェーラでいいんだよな?」


 ちーっす!

 私とジェーラさんはジョッキを揚げて、声を掛けてきたカークに返事をする。


「あ、すいません。情報屋との接触を忘れてたので後は頼みますね」


「おい、ウノスケてめえ、こっから逃げるつもりかよ!」


「ほいカーク、すわって、すわって」


 カークは言われた通り座ったけど、向かい側に座るなんて、人見知りなのかな?

 ウインナーをフォークに刺してカークに持って行ってあげる。

 いやあ、私はやさしいなあ。


「はーい、あーんしてあーん」


 おやおや、恥ずかしいのかな?


「ぐっ、やりゃいいんだろ。あーん……酒くさっ、お前らどんだけ飲んでんだよ!」


 やべえ、カークの腹の毛皮がすごい茂ってる。

 さすがは狼獣人コボルト、もふっぷりが半端じゃないぜ。

 これ突っ込んでもいいよね? これ、事故だよね?


「はい、いただき! ぎゅー!」


「いただき、じゃねーよ! はなせコラ!」


 ぐへへ、やっばい、もうね、やっばい。

 ヤバイしか言えねえ。

 思いっきり引きはがそうとしてくるが、がっつり強化することでホールド。

 ふふふ、その程度の力で勝てると思うなよ。


「くそっジェーラ、助けてくれ。お前しか頼れねえんだ」


「……お前しか頼れない。そういいながらいっつも銀貨ぬいていきやがって……あのやろー……」


「だめだこいつら、とりあえずメシでも食うか。その後、部屋に戻してやりゃいいだろ」


 あー、あったかくてねむくなってきた。


「ここでねてもいいよねー、おやすみー」


「オレの腹で寝てるんじゃねえよ。ほれ、揚げポテトだぞー、ほーれ、ほーれ」


 カークが絶妙に離れた位置にフォークに刺さったポテトをぶら下げる。

 いいにおい漂わせてくれるじゃねえか。

 あれを食べに行くなら、ここから離れることになる、なんという策士。

 そんな挑発に乗らん! と、見せかけて!

 ぱくっ。

 はー、うまい。

 ほくほくしてパサつかない舌触りとかさすがだわあ。


「今だ、隙あり!」


 カークが私の脇を掴んで横に放り投げる。

 そしてカークの腹には抱き着いた私の姿が残っていた。


「残念、それは質量のある幻影だ」


「なん……だと!?」


「つぎー、つぎよこせー」


「うっせえ、オレにもメシを食わせろっての」


 はあ、お腹が減ってるってやつなのかな?

 しょうがないなあ。


「おっちゃーん、さっきと同じつまみねー。ジョッキもふたつで!」


 テーブルに十枚綴りの銅貨を二つ置いて注文を待つ。

 いやー安いから、いくらでも食える気がするわ。

 居酒屋で食ってたら倍以上はするからなー。


「おい、オレは飲む気がなかったんだが?」


「気にする事ないっしょ、少しくらい飲んでも大丈夫なんだろー?」


「そーだそーだ、のめー!」


 ほらあ、ジェーラさんも賛同してくれてるじょん。

 じょんじょん?

後半はい○ちこを飲みながら書きました。

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