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 二人について行き、浴場に着く。

 脱衣室で服を脱いでいると、べリアがマリーさんに服を脱がせてもらっていた。

 ああ、こういう気づかいも出来るようにならないといけないんだったか。

 気づかいというか義務になるんだろうけど。


 べリアが脱がせてもらっている都合、二人とも脱ぐのに遅れが出るのでちょっとした暇ができる。

 私は先に服を脱ぎ終わるとアメニティをチェックしていた。

 上がった後のバスタオル・バスローブよし、化粧水や石鹸が無いが浴室にあったかな。


 なんで急に仕事のチェックをしたのだろうかと自問する。

 二人が服を脱ぐところを見ているのが恥ずかしくなったからだと考えついてしまった。

 何でもないフリをしてもどこか動揺しているんだよなあ。

 脱衣室に備えてある椅子に座って黙って待つ。


 黙っているとどうしても二人が目に入ってしまう。

 こうして直接肌を見るとマリーさんは相当鍛えてある事が分かる。

 服を着ているときはスレンダーなエルフだとしか思わなかったが。

 二の腕やお腹には筋が浮かび上がっていて家事よりも有事に備えた筋肉が付いているように見える。

 服を脱いだ開放感からか、髪留めを外した時に見えた耳がピクリと動いていた。


 べリアはピンクのツーサイドアップを解くと印象が落ち着いて見える。

 体形はまあ、これからに期待かな。


「? お姉さま、わたしのからだに何かついてるの?」


「いや何でもないよ、べリアはかわいいなあと思って見てただけだから」


 ちょっと見すぎていたかな。

 この辺りの距離感はよくわからん。




 三人とも服を脱ぐと大理石調の床材で出来た脱衣室を後にする。

 浴室にはドラゴンの口からお湯が出る浴槽が待っている。

 こういう発想ってどこにでもあるのだろうか。

 浴槽は座るタイプでは無く、横たわれるような浅く長いもので湯量は十分溜まっている。


 そういえば昨日の掃除のとき魔力の補充したかな。

 入口横に付いている湯量タンクに使っている魔石って補充したか確認する。

 今日明日には問題は出ないだろうが魔力量が少し減っていたので触って補充して置く。


「お姉さま、はやく体を洗いましょう」


 べリアに手を引かれて洗い場に移動する。

 石鹸を、と思ったのだがそこにあったのはクリームのような液体石鹸だった。

 入れ物は樹脂製のようなもので、ポンプ式で出すタイプの物。

 べリアは手に液体石鹸を出してこちらに見せてくれた。


「すごいでしょ、せっけんを使いやすくしたんですって」


「へー、すごいねえ。どうやってるんだろうねえ」


 本当にどうやって作ってるのだろうな。

 固形石鹸もそうだけど化学薬品を作る工場がどこかにあるんだろうか。

 どうにかして水酸化ナトリウムかカリウムを生産してるってことだろうし。


 いや、石鹸はすごいとは思うよ?

 並んでおいてある化粧水やシャンプーらしき入れ物。

 ミニドラゴンのおもちゃとか可愛らしくていいと思うんだ、でもね。

 その隣に置いてある先の割れた口紅のようなものとか気になるんだけど。

 風呂場に口紅が置いてあるのはおかしいよなあ?

 というか画像だけなら見たことあるんだよね、何とは言わないが。


「ねえねえ、せなかあらってー」


 よそ見から引き戻されたらべリアが椅子に座って身体を石鹸でぬりぬりしている所だった。

 タオルなんて使わない、洗えない背中の部分を洗って欲しいとねだられている。

 マリーさんを見ると、私に洗えと目で指示してくる。

 こういう所のお世話は私がするんだね。


「はい、こっちに石鹸ちょうだい。それじゃあ洗っていくね」


 私は椅子をべリアの後ろに持ってきて身体を洗ってあげる。

 洗っているその背中は少女の薄く頼りない肌だ。

 塗った石鹸はよく伸びてすぐに全部洗い終える。

 最後にシャワーで全身を流して終わり。


「じゃあ次はわたしがお姉さまをあらってあげるね」


「では私は後ろを担当します」


 えっ。

 文句を言う暇も無く前がべリアに、後ろで椅子に座ったマリーさんが私の背中を洗い始める。

 当たり前の話だがそういう店でもない限り他の人に洗ってもらったことなんてない。

 いやそうじゃなく、なんで二人が私を洗う必要があるのか。


 二人は私を傷つけないように柔らかな触り方で洗っていく。

 遠回しに表現をしなくてもいいか、明らかに弱い所を探りながら洗っていた。

 もちろんデリケートな部分にも手が届く。

 私の可愛らしい声でも聴きたかったのかな?

 だが甘い、仕事中にやばくなってもすぐに収める方法を習得した私なら思考を閉ざすのは簡単な事よ。


 ふうん、と声が聞こえた気がした。

 思わず二人を見る。

 べリアとマリーさんは視線を交わしていた。

 後ろにいたマリーさんの気配が一瞬希薄になる。

 その途端私の両脇の下から腕が通り、首の後ろで手をホールド。

 両ひざもマリーさんの足でロックされる。

 私の身体が石鹸でぬめついているにも関わらず、しっかり力が入っている。

 背中はぴったりくっついている状態ではたから見れば子供を抱えている女性に見えるかもしれない。


 無い胸があたってますよ。

 マリーさんがふんっ、と声を出すと一気に絞まった。


「いっ~~~~~~~~!」


 適切に痛い絞め方をしてくる。

 後ろからの殺気が刺さってくるようだ。

 何も言ってないのに心を読むのはずるくないですか。


「ふたりであそんでないでわたしもまぜてっ」


 言ってる事は可愛らしい。

 だがその表情は何というか、子供らしくは無かった。

 そしてその手には先割れの口紅が握られている。


「えっと、落書きでもされるのかな?」


 私の冗談は面白かったのかどうか。

 ただふふっと笑うだけで口紅の先端をいじって柔らかさを確かめている。

 底部分をひねると微かに振動音のようなものが聞こえてくる。

 しってた。


 この状況で暴れるなんてしないさ。

 素直に受け入れる方が楽だからな。

 べリアが近づいてくる、焦らしたいのか動けない私に吸精してきた。


「っ……んっふぅ」


 短い時間とはいえ吸精されると精神的な異常が感じられる。

 少しだけでも十分なのか満足そうな顔をしている。

 べリアは今度こそ持っている口紅を私の方に近づけてきた。




 ほ ほぎーー!






「あっはははっ、ほぎーはないでしょう」


 お風呂から上がった後、べリアの部屋でソファに座りながら彼女はそう言った。


「いやだってあの後あんなことするとは思わないでしょう」


 どこに隠していたのか吸引タイプを持ってきたり、玉飾りで中を調べてみたり。

 べリアにとって必要な教育だから協力してくれって言われたら断れないじゃあないか。

 おかげで未だに体に力が入らず、ソファでくっついてくるべリアに好き勝手されている。


「お蔭さまであなたには感謝していますよ、私ひとりでは教えられることに限界がありますから」


「マリーさんもここまで運んでいただいてありがとうございます、ただ事前に言って貰わないと心の準備出来ないですよう」


 マリーさんも私が抵抗をしないと見ると悪戯してきたから困る。

 一人じゃ教えられないとか言ってるけど、どこまで本当の事なんだかな。


「それではそろそろ就寝のお時間です。お二人ともベッドに移動をお願いします」


 私達は了解の返事をするとベッドに入った。

 横になるとべリアが抱き着いて来ておやすみのちゅーを求めてくる。

 応じてあげるとやっぱり吸精してきた。

 頭をなでておやすみして上げると素直に寝付く。




 べリアが寝てからしばらく。

 結構彼女は寝返りを打つようですぐに抱き着かれていた状況から解放された。

 さて、私も目を瞑って休もうかと思ったとき。

 トントンと横を向いていた体を突かれる。

 そちらを見たらマリーさんが私を起こしに来ていたようだ。


 そういえば夜に付き合えって言ってたな。

 べリアを起こさないように慎重に起きてベッドから抜け出す。

 ベッドから床に降りようという時にマリーさんが私を抱えて部屋から抜け出した。


「さて、準備はいいですか?」


 せめて何の準備か言ってくれないと答えようがないですよ。


「これから仕事を覚えてもらうための特訓をすると言いましたよね」


 言いましたけど、えっこれから?


「せめてトイレに行ってからお願いします」

スティック→メアリー→リン


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