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149 ギルド→挨拶→営業→教会

 村の中央部へ。

 見渡しても、殆どが木製の家。

 最低限に整備された、土の地面。

 しっかりと計画されずに建てられた、不規則な建物の並び。

 これぞ村! って感じがする。


 田舎臭いが、不幸そうにしている人は居ない。

 生きる事に必死、だが人の顔には希望が満ちている。


「その中でも本日訪れるのは、ソテラ教の教会になります」


「だれに、いってるの」


「あー行きたくないな、と」


「アーリャに、まかせたらいいのに」


 そう、アーリャとは別行動。

 彼女に任せてもよかったけど、今日は錬金術ギルドの基本業務を頑張って貰っている。

 スライムによる、汚物・汚水処理だ。

 しばらく人員は増えないだろうから、交代しながらやらないと。


 それはそれとして。

 世界的に信仰される、ソテラ教会には来てみたかった。

 個人的な理由だけでは無いが。


「仕事だから、仕方ないじゃん?」


「わかってるなら、もんくいわない」


 教会は寄付を受けて、奇跡と称した回復魔法の奉仕を行っている。

 まあ、実態は治すからカネを寄越せ、なんだけど。


 治すだけなら錬金術士が作ったポーションでも出来る。

 そこで競合が起こってしまう為に、何をどこまで許可するのかすり合わせが必要になる。

 誰が許可をするのか? それは教会側だ。

 はあ、ほんまコレ。

 効果の高い魔法薬を作れる錬金術士が少ないのも理由なんだけど。

 作れても、その回復系魔法薬の卸先が教会っていう。


 まあまあ、ここまでなら良くある話。

 問題は、そのお値段。

 卸価格の十倍以上なのだ。

 欠損再生が出来るポーションともなると、百倍以上。

 どんだけー。


「どんだけー」


「……なにが?」


「いや、司教様はさぞかし肥え太っているのかなあと」


「あんまり、いわないほうがいいよ?」


「闇が深そうだもんね、聞かれそうな所では言わないよ」


 頻繁に怪我をする職は実入りが良い傾向にある。

 そういう人から高額で受け取り、税金としての経済を回す役割もあるのだろう。

 それと多分、孤児院に回すお金を捻出する為とかね。


 だから、表立って文句は言うつもりは無い。

 一般庶民的な、何かのせいにしたがる体質みたいな物だ。

 本気で教会を変えるために動こう、などとは思っていない。


「ほーにゃにゃっちわー」


 入った教会は、意外と質素だった。

 権威を見せつけるためのステンドグラスや、大きな偶像が置かれていると思ったのに。

 それでも計算された採光窓から漏れる光が、神秘性を醸し出している。

 質素に見えて、全体的な作りが良い。


「ようこそ。あら、初めまして……ですわね?」


「どうも、シスター。この度、錬金術ギルドの支部長を務める事になったユキです」


「スラ子、よろしくね」


 若い大人の女性だ。

 スレンダーだが良いボディラインをしている。

 え、マジ? シスターって性的奉仕も行う、と聞いたことがあるぞ!

 私もお世話になろうかな、その形の良いおし、いででで!?


(スラ子、何してくれてんの!?)


(かおが、いやらしい)


 おっと。

 これはいけない。

 そうだよね、そういった仕事をすると思うなんて偏見だよね。

 確かな情報を得てから考えるべきだったな。


「まあ、可愛らしいギルドマスターですね。わたくしが本教会の司祭代行になります」


「失礼しました、司祭代行。司祭はこちらには?」


「おりません。わたくしが責任者ですわ」


 ふむん、この人も私と同じように出向して来たのかな?

 まあ、そんな事はどうでも良い。


「では代行。錬金術ギルドと教会の、お仕事の話をしたいのですが。今、時間は空いてますか」


「ええ、どうぞ。こちらへ」


 案内された所は休憩室。

 こんな誰もいない所に引き込むだなんて。

 やっぱり、襲ってくれと――いや、何でもない。

 隣のスラ子が、すごい顔で睨みを利かせているのは関係ないのだ。


 心を落ち着けるため、お出ししてくれた水を一口。

 独特な苦み、毒では無いけど……やはり水が硬く、あまり口に合わない。


「こちらの水は井戸から?」


「ええ、この辺りの水は飲めるので助かりますわね」


 私には、あまり合わないけどね。

 水浴びをするのも向かない気がする。

 髪の毛がキシキシしそう。


 ただ、近辺で良く捕れる狼の肉を柔らかくするのに向いていたはず。

 後で軟水に変換する魔道具でも作って置こう。


 書類を取り出し、細かい所まで契約を行っていく。

 だが、ほとんどは相手の要求に頷くだけになる。

 まあ商売で儲ようとしてないので、多少は損をしても問題ない。

 あまりに酷い内容もあり、そこは突っ込ませていただいたが。


 それも一区切り付いて、ひと息吐いた頃。

 司祭代行から、別の話を振られた。


「それと……これは相談しても良いのか」


「何でしょう、言うだけでも楽になると思いますよ」


 私の言葉を聞いても、司祭代行は表情に影を落としたまま。

 それほど深刻な相談なのだろうか。

 しばしの静けさの後、彼女は語り始めた。


「あの、わたくし祓魔師の仕事も請け負っているのですが」


 要はアンデッドとゴーストの討伐だね。

 治癒だけでは無く、現場に出向いての仕事もするのか。


「……少し、難しい案件に手こずっていまして」


「他の方の協力などは?」


 今日は代行一人しか見えないが、普段はもっと人が居るだろう。

 ゾンビやスケルトンなら物理的に排除が出来るから、冒険者に頼っても良いはず。


「わたくしの他は、まだ祓い魔としての実力が足りず。かと言って、冒険者ギルドも都合のいい方は見当たらず」


 それなら相手は非実体系か。

 いやまて、教会は対不死の技術も独占しているのか?

 使い手が少なくなれば、現場が逼迫するなんて想像がたやすいだろうに。


「魔法で、ぽぽぽぽーん! と滅するのは」


「なりません! 迷える魂は、きちんと浄化しなくては!」


 うっわ、めんどくせ。

 いや失礼だったか、そういった教育の成された方々だ。


 非実体系の魔力体は、複数の魔力体の残滓からなる集合体がほとんど。

 だから元の人格を残していない、なんて私の知識を押し付けようとは思うべきでは無いね。

 私は滅ぼしても問題無いと考えているが、それは彼我の価値観の相違でしかないだろう。


「しかし、このままでは問題が出てしまうのでは?」


「はい、ですのでお願いしたいのですわ」


 お願いされたのなら、やぶさかでない。

 困っているのは事実だろうから、今後の関係のためにも――


「スラ子さん! 貴女のお力を借りたいのです!」


 あ、そっちかあ。

 ふーん、なんかなー。


 でも、何でスラ子?

 代行は、ピンと来る何かを感じたのだろうか。

 

「わかった、でもユキはつれていく。それでもいいなら」


 普段、言われ慣れてないから、スラ子のユキ呼びはちょっとドキドキするかも。

 彼氏ヅラとは少し違うけど、何というか、仕方ないなあと思えるね。


「私も、お役に立ちますよ」


「まあ、有難うございます。ユキ支部長、スラ子さん。それでは、詳しい内容なのですけど」


 ん?

 詳しい内容を、この場で?


「ちょっと、ちょっとちょっと! あれ、代行は来られないのですか?」


「ええ、わたくしでは何のお役にも立てなかったものですから」


 あ、しまった。

 これ、仕事の押し付けだわ。

 あくまで私達は手伝い、代行がメインになって仕事をしてくれると思っていたのに。


 司祭代行は申し訳なさそうにしているつもりだろうが、明らかに機嫌が良くなっている。

 いやいや、大丈夫。

 恩を売ると思えば良いのだ。

 今後も付き合う関係になる、仲良くしておくのは悪くない。

 スラ子は……どっちでも良いって顔をしてるなあ。


「それでは改めて説明しますわね」


 司祭代行が状況を思い出しながら、淡々と説明していく。

 現場は村中央部から離れた一軒。


 農家ではあるが、元々お金のある家系の生まれだったらしく、良い家に住んでいた。

 ある時、付近の住人がしばらく姿を見ていないと気が付く。

 何かあったのか、と伺ってみても返事が無い。

 声を掛けながらドアに手を掛けると、鍵は掛かっていなかった。

 家によっては鍵を掛けない所もある、しかしここはそうでなかったはず。


 何かおかしい。


 直感的にそう悟り、声を掛けながら中に入る。

 しかし、家を訪ねるのが遅かった。

 中の住民は、何者かに食い荒らされ、生きている者はいなかったのだ。


「噛み後から、狼であると結論付けられましたわ。問題は、その後ですの」


 このような場所には残留思念が留まりやすい。

 ゴースト化する事もあり、二次被害が出る事もある。

 教会の人間が呼ばれ、場の浄化を依頼されるのは当然の流れだった。


「そこで、出会いましたの」


「ゴーストに?」


「ええ、まあ。何と説明したら良いのか……美醜を問うゴーストに?」


「はあ……?」


 気の抜けた返答をしてしまった。

 美醜を問う?


「でも、浄化を試みたんですよね?」


「もちろん、ですが……わたくしの技術では通用せず。また、物理的な接触もなりませんでした」


「それで、手を焼いていると」


「幸い、何かに被害を出しているわけでは無いようですが。これからもそうだとは限りません」


「分かりました、見てみましょう。場所を教えてください」


「ええ、その場所ですが――」


 興味深い。

 浄化の技術と言っていたが、非実体系に効くなら光属性系統の魔法だろう。

 魔力体を散らして浄化、維持できなくする光魔法を場に作る事で説明された状況を再現できる。

 効果は弱く、低級な霊的存在にしか通用しない。

 もちろん生きている人には効果が出ない程度。

 つまり、それが通用しない相手がいる。


 物理的に触れなかったとの情報から考えたら、強力な存在がいると考えられるが。

 地下墓地や、瘴気にまみれているような場所ならともかく。

 こんな平和そうな村の中で?

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