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私と神様(変態)はお友達  作者: いもすけ
7/12

7.体育祭の脚

 こんにちは!元気いっぱいな天官琴乃です!


 前回まで私は、逞しい肩幅を縮めてもらうべく、願いを叶えてくれるという廃神社にお供え物を持って神頼みしに行きました!


 そうしたら何と出てきたのは狐の耳と尻尾を生やした謎の少年!

 しかも好きな物は成人誌だとかで私お手製の油揚げは却下されました。

 けど無償で願いを叶えてくれると言ったので万々歳で日々を過ごしていると。


 全く肩幅は縮まず!!

 けどなぜか肩の重みだけが日に日に酷くなっていってしまいました!

 そしてなんと、願いを叶えてくれるというのは神様の嘘であり、色々あって私に取り憑いていた妖〝おばりよん〟を祓ってくれました。


 そしてまぁそこからも色々あって、私と神様は無事にお友達になれたのです!

 めでたしめでたし!



  ♢ ♢ ♢



 それから数日経ちまして。

 私は何をしているかというと。


「頑張れー!天官ぁ!」

「天官頼む!お前にかかってるんだぁぁあ!!」


(うぉぉおおおお!!)


 体育祭のリレーでアンカーを務めていました!


「すげぇ!2人抜いたぞ!もうすぐ3人だ!」

「さっすが天官!1年の時から速かったもんな!」


 時は夏直前。

 体育祭シーズン真っ只中だった事もあり、私は廃神社へと行かずに朝練と午後練に熱中していました。


 私はなぜか勝手にリレーのアンカーに決められていました。

 まぁ、小さい頃から運動だけはできたので別に良いですけど。

 それにしたって一言欲しかったですね。


 けどクラスの体育祭ガチ勢の皆さんが喜んでいるので、良しとします。


 そんなこんなで、気づけば私は1番にゴールのテープを切っていました。

 私のクラスが1位です。


「よっしゃぁぁぁぁぁあ」

「天官がやったぞぉぉぉー!!」

「俺達が1位だぁぁぁぁ!!」


(はぁ…はぁ…うわぁ、青春って感じがする!)


 私はというと、走りきった感動と皆の声援で感極まっています。

 友達に「よくやったね!」と叩かれたり、先生に「俺は信じてたぞ!」と号泣されたり。

 皆この日の為にがんばってましたもんね…!私も毎日頑張りました…!


「琴乃は他の競技でも頑張ったもんね!ゆっくり休んでなよ」

「うん、そうするー!」

「あ、おい!3年のリレー始まるぞ!」


 友達からの慈しみの言葉にじーんとしていると、あっという間に3年のリレーが始まりました。

 やっぱり3年生は迫力が違いますね。

 特にやっぱり男子は速いです。

 まぁ私はクラスの男子よりも速かったんですけどね。ははは。


 隅で休みながらリレーを見ていると、走っている人が一人転んでしまいました。

 おかげでその人のクラスは最下位です。

 可哀想に。


「あれ?今の人、なんか転び方不自然じゃなかった?」

「ん?そうか?普通に転んだだけだろ」

「――おい、また誰か転んだぞ」


 私からはよく見えませんけど、周りの人の話を聞いていると、何人もの人が転んでるっぽいです。

 ここの校庭、そんなに石ありましたっけ?


(ちょっと移動しよっと)


 別に転んでる人を見たいっていう悪趣味じゃないですよ?

 ただ皆が言うものですから、どうしてかなーと。それだけですから。


 ちらりと応援してる人の隙間からコースを覗いてみると。


(あっ)


 また人が転んでしまいました。

 これで3人目です。

 流石に転びすぎではないでしょうか。


「ねぇ。皆同じところで転んでない?変なの…」

「俺達が走った時は普通だったよな?」


「……」


 選手の人が転んだ時、私はわなわなと震えました。


(――まって。まってまってまって)


 待ってください皆さん?

 どうしてそんなに普通でいられるんですか?

 私だけですか?おかしいと思ってるのは。


 3年生の皆さんが次々に転ぶあの場所。

 あの場所――


(なんか居ません!?)


 そう。

 いるのです。

 というか見えるんですけど。


 上半身がない、下半身だけの……


(あ、脚がある……!!)


「ね、ねぇ美里!あれ何!?」

「え?あれって……どれ?」

「え!?み、見えないの!?」

「?なんのこと?」


 隣にいた友達の美里に聞いても、美里は「どれ?」としか言いません。

 この反応はおかしいです。


 ……いえ、この場でおかしいのは私だけです。

 他の皆には、あの脚は見えていないのですから。


(ど、どういう事!?あの脚は一体!?と、というか、何で私にだけ見えてるの!?皆は!?)


 顔からサーっと血の気が引いていくのがわかります。

 そんな私を見て美里は「大丈夫?」と言ってくれますが、もうそれどころではありません。


 しかもよく見ればあの脚、透けてるんですけど。


(もしかしてあれは、幽霊!?)


 だとしたらどうして見えるんでしょうか。

 私は自分の肩に乗っていたあの妖すら見えなかったというのに。

 一般人ですよ?常人。

 そんな私がなぜ、あの脚が見えるというのでしょう?


(ま、まさか皆が私にドッキリを仕掛けてるとか!?)


 それこそ本当に何故でしょう。

 それは無いと全力で頭を振りました。


「……ねぇ、ほんとうに大丈夫?競技にも沢山出たし、疲れたんじゃない?保健室までついてこーか?」

「え!?あ、いや!大丈夫だよ!」


 いけません。これでは私が変に見られてしまいます。

 そうしてる間にも、何人かの人があの脚がいる場所で転んでいます。

 転びすぎてどのクラスが1位になるのか、変動がありすぎてもうカオス状態です。


 3年生の皆さんも先生達もおかしいと気づいたのか、ざわざわしてきました。

 そりゃおかしいですよ。だって完全にあの脚のせいですもん。

 走ってる人の足、引っ掛けてますから。


(けど1年生と私達の時は何ともなかったのに…どうして3年生の時だけ?)


 それがわからずにうーんと唸っていると。


 つんつん。


「ん?」


 何かに袖を引っ張られた気がして、振り向くと。


『…コン』

「……え」


 私の足元に、小さな白い狐がいました。


「……はぃ!?」

「わっ、琴乃?どうしたの?」

「い、いや。狐が…」

「狐?どこに?」

「え!?」


 美里がまた変な目で私を見てきます。

 いや、私の足元にいるじゃないですか。

 …まさかこれも見えないんじゃ。


「…大丈夫?」

「……うん。大丈夫、…」

「具合悪くなったら言うんだよー」

「……」


 具合、ね。色んな意味で悪いですよ。

 もう頭痛と目眩で倒れそうです。


『コン』


 そんな私の気など知らず、謎の小狐は私の脚に擦り寄ってきます。

 …可愛いですけど、今はそれどころじゃないです。


「ていうかどうしてこんなところにいるんです?どこから来ちゃったんですか?」

『琴乃が会いに来てくれないから僕から会いに来たんだよ~』

「はいはーー…はい?」

『コン』


 いや、「コン」じゃなくて。

 今喋りませんでした?


「いやいや、まさか。私の空耳――」

『空耳じゃないよ?聞こえるでしょ?』

「………」


 私は狐をまじまじと見ました。

 白い狐。喋る。そんなの当てはまる人物一人しかいません。


「……まさか、神様ですか…?」

『そーでーす!!神様でーす!』


 にこーっと、狐の姿ですから顔の違いがわかりませんけど、きっと神様はすごく笑顔です。


「な、なんでここに……!?」

『だからぁー、琴乃が神社に来てくれないから僕から会いに来たんだって』

「そ、そんな理由で…?」


 そんな理由でわざわざ学校まで来たんですか、この神様は。


「てゆーか何ですか?その姿…やけに可愛いじゃないですか」

『狐の神様が狐の姿してたらおかし~ぃ?神社から離れるのにこの姿じゃないと変に疲れちゃうんだよね~』


 そう言って神様は後ろ足で頭を掻いています。

 小狐の姿でそれをやるのは反則です。とても可愛いです。


『まぁ僕は元から可愛いけどね~』

「はぁ。自分で言っちゃうあたり残念ですね神様」

『だって事実だもん!』


 ふふん!と、これはきっとドヤ顔ですね。


『琴乃以外に僕の姿は見えないようにしてるし、この姿なら神社の外に出放題ってわけ』


 そう言って神様は私の肩に乗ってきました。

 ああ、この姿だと母性が湧いてきますね。

 この姿なら、人の姿の時よりも無駄にドキドキしないで済みます。


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