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私と神様(変態)はお友達  作者: いもすけ
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1.いざ廃神社へと

 私達が通う明宮(はるのみや)学院の校舎の裏には、誰も寄り付かなくなった古びた神社があるんだって。


 勿論誰も寄り付かなくなったから、私も怖くて近づけなかったんだけどね、遠目から見たんだ。

 そしたら噂通りのボロッボロの神社で!お化け屋敷のセットみたいだったの!


 そりゃあ誰も寄り付かなくなるよね~。いつから手入れしてなかったんだろ?夜とか絶ッ対何か出るよ!誰かしら肝試しとかで行きそうだよね~。


 ……あ!そう、それでね!そのオンボロ…廃神社!ただの古い神社だって言われて、いままでに何人もの人が取り壊そうとしたんだって。


 そしたらどうしてか、取り壊そうとした人達が次々に具合が悪くなって、取り壊しにもできないまま寝込んじゃって。そのまま死んじゃったんだって。


 噂では流行病で死んじゃったって言われてるけど……不思議な事に、その時流行病なんかなかったし、その人達は全員あの神社を壊そうとした人達。

 他の関係ない人達は全然何ともなかったんだって。すこぶる健康だったとか。


 その時からこの神社は「呪いの神社だ。誰も近づくな!」って言われ続けてきたんだって。

 まぁ、実際に壊そうとした人達が死んじゃったんだからそう言われても仕方ないよね~。私だってそんなの嫌だもん。


 それから誰も近づかなくなって、元から手入れもされてなかったからどんどんボロボロになっていって、今の姿に至る、と。


 今となっては誰も寄り付かないから、本当に呪われてるのかなって疑問に思うよね。

 なんせずーっと昔の話だから、半信半疑のまま。


 そんな呪われた廃神社が、この明宮学院の裏にあるんだよ。


 ……あ、呪われたっていうのが話題になっちゃったけど、違うんだよ!ここからが本題なんだよ!


 その呪われた神社って言われてたあの神社。実は最近、別の噂が流れてるの知ってた?


『呪いの神社――あの神社には、お供え物を供えれば何でも願いを叶えてくれる神様がいる…らしい』


 っていう!いかにもな噂が流れ始めてるんだよ!

 おかしくない?だって昔から呪われてるって言われて誰も近づかなくなってたのに、何で急にそんな噂が出始めたのかな?


 それとも、誰かが好奇心であの廃神社に近づいて、実際にお供え物をあげたとか?

 もしそうだったら、すっごい勇気いるよね~。


 しかも願いを叶えてくれるって…あの神社にそもそもそんな神様が居たんだって話じゃない?だって昔の人達を呪い殺した神様と同じ人物って事でしょ?

 どんな心境の変化なのかな……。


 うーん……難しい話は後で考えるとして、願いを叶えてくれるって凄くない!?


 あ、その条件であるお供え物だけど…神様が気に入ってくれるようなお供え物じゃないとダメらしいよ。

 それこそ呪われちゃうとか。

 本当に変な神様だよね。呪いで人を殺しちゃったり、お供え物さえあげれば願いを叶えてくれたり。なんなんだろうね?


 でも願いを叶えてくれるなら、ちょっと試してみたい気もするかも!あーでも、もしお供え物を気に入ってくれなかったらと思うと……


 あー怖い!やっぱり私には無理!誰かが代わりにやってくれないかなー!


 ――まぁ、どれもこれも噂には違いないけどね。実際にやってみないとわからないか。

 それにどんな神様かもわからないし。噂って本当にどこから流れてくるんだろうね?


 信じるか信じないかはあなた次第だけどね!




  ♢ ♢ ♢



 ――というのが、私が聞いた廃神社の噂。


(と、いうわけで――早速やって来ました廃神社!)


 私、天官琴乃(あまくらことの)はその噂の真偽を確かめるべく、学校帰りに廃神社にやって来ていました。


 噂を信じるなんてただの阿呆――とは言わないでいただきたい。

 好奇心旺盛だと言ってください。


 あ、勿論私は明宮学院の生徒です。明宮学院2年C組出席番号2番でバスケ部所属です。

 特徴としては腰まで伸びた桜色の髪を右サイドで1つに結んでいる事です!


 いかにも女の子っぽいでしょう!女の子ですからね!!髪には気を使っているんですからね!


 さてそんな私は好奇心に負けて呪われていると噂の廃神社にやって来ました。


 明宮学院に入ってからその噂は何度も耳にしたものの、どれもこれもあそこは呪われてるーというものばかり。

 しかし最近になって、なぜか別の噂が流れ始めました。


『神様がお供え物を気に入れば、その人の願いを叶えてくれる――らしい』


 最後の『らしい』が気になるところではありますが、私はその噂を耳にした途端、すぐに実行する事に決めました。

 だって願い、叶えて欲しいですもん!!


 まぁその願いが何なのかは後々わかるとして――


(噂に聞いた通り、確かにボロボロですね…)


 私の目の前に広がるは、超絶ボロッボロになった鳥居。

 元は赤かったのでしょうが、時間が経ちすぎているせいかその色もあまりわかりません。

 むしろ腐った木みたいな感じです。

 腐った木がどういう風なのかは知りませんが。


 境内も、辛うじて神社の形は保たれていますが、とても綺麗とは言えません。


 それはもう、本当にオンボロです。

 これは夜には何か出ますね。出てきたくなる雰囲気ですもん。


(そりゃあこんなんじゃ誰も近づきたくないですよねぇ)


 こんなオンボロ神社に用がある人間なんてそうそういないでしょうしね。私を除いて。

 神社には狐の置物があります。アレです、よく見るやつです。シーサーとかの。


 という事はあれでしょうか?やっぱり神様はお狐様なのでしょうか?


(ふふふ…そうだろうと思って用意してきました!これなら神様も喜んでくれるはずです!)


 そう――私は事前調査で、ここの置物が狐だということを知っていました。


 ならば神様はお狐様に違いありません!私の名推理です!ドヤァ……!


 それならば用意してくるお供え物など一つしかありません。


(その名も――秘技☆油揚げ!!)


 私はお皿に載せた揚げたての油揚げをそっとお賽銭箱の前に置いてみました。


(狐といえば油揚げ。狐の大好物は油揚げだって昔から決まってるんだから!)


 これでお供え物は完璧。あとは神様を呼び出すだけです。

 神様を呼び出すのにも、合言葉のようなものが必要なのです。


 まぁ、これもありきたりですよね。



「――神様。どうかお降り下さい」



 そう言った瞬間、辺りがしんと静まりかえったような気がしました。


 場所が場所だからですかね?まあボロッボロなんですけどね。


 兎にも角にも、これで神様が降りてくるはずです。噂通りであれば!


 ……でも、今更だけどちょっと緊張してきました。

 私これ、本当にやって良かったんでしょうか?

 お供え物を気に入っていただけなかったら、私は――


(い、いやいや!私特性味付けの油揚げなんだから、赤の他人でも気に入ってくれるはず!)


 これでも料理にも自信があるんですから!


 そう自画自賛しつつ、神様が降りてくるのを待ちました。



 そう、待ちました。それはもう、長い時間待ちました。


 そのうち夕方の鐘もなり始めました。カラスも鳴き始めました。


「………」


(いやいやいや……)



 降りてこないじゃん!!!


 嘘でしょ!?

 あんなに脳内シュミレーションもして、油揚げも最高級(手作り)を用意して、合言葉も言ったのに!?


 で結局!降りてこない!?わざわざ部活を休んでまでしたのに!?


「嘘ぉ……」


 全部、水の泡になったと……。


「ううう…やっぱり噂は噂だったのね…信じた私が馬鹿だったのかしらだから……」


 とほほ…と思いながら、せめて油揚げは神様のお供え物にしようと思い置き去りにしようと、神社の階段を降りようとした時でした。


「呼んだ?――僕のこと」


 するりと、私の肩を抱くように、後ろから白い手が伸びてきました。


 突然の事に声も出ませんでした。


 それに、その腕が、あまりにも白くて、冷たくて――


「ッ、きゃーー!!!」

「ぶっふぁ!?」


 思わず、その腕を掴んで背負い投げしてしまいました。


 いやいや、私は悪くないですよ?突然後ろから腕を回されて、びっくりして投げちゃうのは当然っちゃ当然じゃないですか?


 ……いや、普通なら背負い投げはできないですよね。うん。ははは。


「って、誰!?」


 敵を投げたのは良いものの、その犯人の顔を見るのを忘れてしまいました。

 これでは警察に突き出せません。


 私は急いで投げた方向――階段の下へと目を向けました。


 けど、そこには誰も居ません。


「あ、れ……?」


 気のせい、ではありません。絶対に。

 だってしっかり感触もありましたし、投げたんですから。


 どこへ行ったのかときょろきょろ探していると。


「急に投げるなんて酷くない?…というか、力持ちだねぇ~」

「っ!?」


 不意に後ろから、ふざけた様な、楽しそうな声が聞こえました。


 反射的に振り返ると。


「っ、……え」


 階段を見ていた私を、不思議そうに首をかしげながら見下ろす、金色の瞳をした少年が――


 浮いていました。

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