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第二十七話 間違った時間軸

 謎の未開惑星はすでに銀河同盟によって発見され『テラ』と名付けられていた。

 しかし、『テラ』のAIは3130年後の未来の時間を示している。

 俺のじっちゃんの子孫も十二代にわたって続いているという。

 

 だが、俺やアリアの時間はまだ一月くらいしか経っていない。

 ブラックホールを経由していないのに、だ。


「時間の進み方がおかしくなってるのはこの惑星の『過去』なんだ。『現在』じゃあないぞ」


 俺はその矛盾を踏まえてはっきりと言う。


「シン、どうしてそんなのが分かるの?」


 ステラが首をひねるのも無理はないが。

 

「よく考えてみろよ。俺達が三千年も未来に進んでいたら、君がアリアとここで会える訳ないだろ?」

 

「あっ! そうだよ! そう!」

「なるほど……!」


 ステラもアリアもすぐに理解したが、現在の『宇宙銀河同盟』と『テラ』の時刻は完全に一致しているのだ。

 では、どうして過去にそんなねじれが起きたのか?

 その詳しい理由は俺にもよく分からないが、ブラックホールが近くにあるせいで、この惑星も過去に何らかの影響を受けたのかもしれない。

 

 あるいは、全く別の、何かがあるのかも。

 いずれにせよ、原因は不明でも、理由と結果は明らかだ。

 

「だから、そう落ち込む必要なんかないぞ、アリア。ステラがここに来たってことは、まだ銀河同盟は健在だ」


「そ、そうよ! そうだったわ。ありがとう、シン。私、そんな簡単なことにも気づかないなんて」


 顔を赤くして恥ずかしそうにしたアリアだが、賢い奴が常に正解を出せるとは限らないからな。

 

「AI、『戦艦ファンデルマーク』の他にこの惑星に宇宙船はないのか?」


 俺は続けて質問してみる。


「戦艦に搭載されている護衛戦闘機が宇宙船として該当する他は、ありません」


「で、その護衛戦闘機の場所は……」


「機密情報になります」


 やっぱりね。


「んもう! あたしたち人間様が困ってるってのに、融通の利かないAIだなあ!」


 ステラが怒るが、機械は所詮、機械だからな。

 人間の良いところは、ループ問題を回避できるところだ。

 あちらを立てればこちらが立たず、で延々と問題解決を先送りにしても意味がない。

 

「よし、エアとの話はこれで終わりだ。ポンコツAIにかかわっても仕方ない」


「ええ? まあ、そうかもね、やーい、やーい、ポンコツ!」


「やめなさい、ステラ。小学生じゃないんだから。機械に怒っても仕方ないわ」


「そだね。じゃあ、もう行く?」


「ああ。通信終了だ、エア」


「了解。そのまま待機します」


「しなくていいんだが、勝手にしてくれ。入ってきていいぞ、プラーク!」


「や、お気づきでしたか」


 ドアを開けて司祭プラークが笑いながら入ってくるが、盗み聞きかよ。

 聖職者にはあるまじき行為だな。

 

「聖遺物を見せるよう、大司教に頼んでくれると言っていたな」


「ええ、もちろん。今、大司教様からも使いがきて、ぜひとも、勇者シン殿、勇者アリア殿、そして勇者ステラ殿も、大神殿へお招きしたいと。美味しい食事をご用意させていただいております」


「行こうよ!」


 ステラが真っ先に食い物に釣られるが、まあいいか。

 どちらにせよ、エアが使い物にならない以上、俺達の次の手がかりはやはり『聖遺物』なのだ。

 

 もし、これが『戦艦ファンデルマーク』と関連があるものだとすれば、あのポンコツAIに頼らずとも、戦艦を見つけてこの惑星を脱出できるかもしれない。

 

「そうね、私も賛成よ、ステラに」


 アリアもすぐにその事に気づいたようで、うなずいた。

 

「決まりだな」


「おお、これは喜ばしい! では、すぐに馬車を用意します」


 司祭プラークが馬車を呼びつけ、俺達一行は大神殿へと向かった。

 


 白亜の大神殿は幾重にも柱が並び立ち、見る者を圧倒する巨大な建造物であった。

  

「すご……」

「ううむ」

「へえ」


 俺達三人は高層ビルや軌道エレベーターなど、巨大建造物には見慣れているとは言え、それでも思わず感嘆の声を漏らしてしまった。

 

「いかがです? アノン帝国が誇るもっとも大きな神殿です。なかなか他にはないでしょうな」


「ふふ、そうだな」「そうね」「他にもあるよ」


 うっかり口を滑らせたステラを俺とアリアでサッと口を塞いだ。


「ほう? 皆さんの故郷に、ですかな? 銀河同盟とはそれほどの大国ですか」


「やれやれ……全部、聞いていたのか」


「申し訳ありません。ですが、『精霊エア』と話をするなど、我々にとっては一大事ですからな」


 宗教的な核の部分だろうから、プラーク達宗教家が必死になるのもしかたないか。

 

「分かった。だが、そういう地位があるのなら、『聖遺物』も配慮して欲しいな」


「分かっておりますとも。ささ、どうぞこちらへ」


 俺達は食堂へと案内され、肉や果物をふんだんに皿の上に盛り付け並べ立てた料理をご馳走になった。

 

「んまー。これ、イケるよ、アリア、こっちも、んまー!」


「ステラ、あんまりそんなに急いで食べないで。はしたないわよ」


「そんなこと言ってる場合じゃないよ。シン、それ食べないなら、アタシ、もーらいっと」


「オイ! 馬鹿。それは俺が最後に食べようと楽しみにとっておいたもんだぞ!」


「えー、好きなら一番最初に食いなよ」


「お前は何も分かってない。他人様の食べ方に口を挟むな」


「じゃー、アリアも私の食べ方に口を挟んじゃダメだよね」


「それとこれとは話が別だ」


「なぬー!?」


「ほら、シン、私のをあげるわ」


「いいのか?」


「ええ。私はあまり、この果物は好きじゃないから」


「そうか、悪いな」


 アリアがひとつくれたので、俺の機嫌もすぐに治った。

 

 三人ともお腹いっぱいになったところで、大司教の執務室へ案内された。


「ご苦労」


 一人の厳めしい老人が執務机の向こう側に座って待っていた。

 

「こちらが勇者シン殿、こちらが勇者アリア殿、そしてこちらが勇者ステラ殿です、大司教様」


「うむ。『聖遺物』を見たいそうだな」


「ええ、我々にとって重要な物かもしれないのです。見せていただきたい」


 まずははっきりと要求してみよう。

 

「貴殿らは『精霊エア』と会話できるそうだな?」


「ええ、まあ……」


「いいの? シン」


 アリアが気にするが、今更隠したところで意味がない。

 プラークにもしっかり裏取りされてしまっているからな。

 とにかく、こちらとしては『聖遺物』を見せてもらわないとどうにもならないという理由もある。

 

「おお……まさしく勇者。よもや、この時代に英雄ユーマ=クラッドのような人物が現れようとは……神よ、感謝いたします」


 やや感激した様子で天に祈りを捧げる大司教だが、彼はしかし、すぐに冷静さを取り戻した。

 

「では、この鍵を持って行くといい。地下室への入室を許可しよう」


「「「 ありがとうございます 」」」


「では、参りましょう、勇者様」


 プラークがニコニコ顔で鍵を持って、案内してくれるようだ。

 彼にくっついて神殿の長い通路を歩き、階段を下に下に降りていく。

 

 青白いライトが壁に設置されているが、魔道具だろうな。

 長い階段を下まで降りると、頑丈そうな鉄の扉がそこを塞いでいた。


「ふぬっ!」


 鍵を開け、プラークが力一杯という様子で押すが、重い扉はすぐに動きそうにない。

 

「手伝おう」


 戦闘服のスイッチを入れ、軽々と押し開ける。

 

「おお、さすが勇者」


「力さえあれば、アンタ達は勇者にしちゃうのか?」


 少し呆れて俺は問う。

 

「ええ、力とはすなわち、神の慈愛を示す証。何の疑いを抱くことがありましょうや?」


「その考えは危険だと思うわ」


 アリアが言うが、俺も同感だ。

 

「神を疑うは、未熟さの証。とはいえ、精霊エアと話せる御方に、説法を解くのは、いやはや、失礼しました」


「いいけどな。この奥だな?」


「ええ、どうぞ」


 プラークが先を譲ってくれたが、鉄の扉から覗いている向こう側は完全な闇だった。

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