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第二十話 ステラ

(視点がステラ=ラジアン准尉に変わります)



「納得いきません!」


 アタシは立体空中ホログラムの上官に向かって大声で怒鳴ってやった。

 

「お前の納得など知ったことか。とにかく、ハーランド准尉の詳細については一切、答えられない規則になっている。それで理解しろ」


「できません!」


「馬鹿が。ここでお前が泣こうが叫こうが、何も教えられないと言っている」


「それでも教えてくださいと私は言ってるんです!」


 にらみ合う。

 と、急にホログラムが消えた。

 

「あっ! 切った! 汚えー」


 通信を切るとか、ホント大人げない。

 

「いったい、何なのよ、もう……今度の休み、いつになるか、アリアに聞こうと思っただけなのに」


 駆逐艦ブルーハウンドで演習に出るというのは、アリアから二週間前にメールが入っていた。

 アリアは宇宙港を発進したら、もう戻るまで連絡はできないと言っていたが、たかが新兵のペーペーが演習に行くだけの話だ。 

 

「そんなの軍事機密じゃないだろ……、どう考えても!」


 壁を殴る。あ、ヒビが入った。まあ、使えれば大丈夫だよね?

 アタシ、知ーらないっと。


 ホログラムが展開したので、アタシは焦った。

 

「うひっ、すんませんしたっ!」


「何が?」


 おや、さっきとは別の人だ。

 

「いえ、なんでも、あはは……」


「ステラ=ラジアン准尉ですね。私は本星司令部参謀本部所属ミーシャ=オクテット中尉です」


 びっくりするような金髪美人の士官だ。ほえー、こんな人、アリアの他にもいるんだなぁ。


「はあ、参謀本部?が私に何かご用ですか?」


「ええ、さきほど、あなたはハーランド准尉の居場所を知りたがっていましたね?」


「あっ、何か知ってるんですか!?」


「ええ、知っていると言えば、知っているかしら。少なくとも、今の銀河宇宙同盟軍の中では、私が一番詳しいと思う」

 

「教えてください!」


「ええ。親友のあなたならきっとそう言うと思ったわ。では、こちらの契約書にサインしてもらえるかしら」


「んん? なんですかこれ」


「ああ、別に真面目に読まなくても良いわ。よくあるアレよ。細かい説明だから」


「はあ、アレですか、まあ、そういうことなら、はいっと」


 指でちょちょいっとサインする。

 

「ありがとう。これであなたはアリア=ハーランド准尉の捜索隊に加わることが決定したわ。以後、任務については極秘となるので注意してください」


「了解です! 捜索? ブルーハウンドが遭難しちゃったんですか?」


「ええ、その通りよ。運悪く……原因はまあいいとして、あなたなら上手くやれると確信しています」


「おお……えへへ、なんか私、そんな風に褒められたの、生まれて初めてです」


「そう。出発時刻はまだ未定ですが、近いうちに宇宙港から発進してもらいます。確認ですが、あなたは探査船の操縦ライセンスは持っていましたね」


「はい、操縦は得意です!」


「結構。では、あなたの端末に任務の詳細シミュレーションを送っておいたので、それを訓練しておいてください。また連絡します」


「あ――。あらら、切れちゃった。忙しい人だなあ」


 質問を色々したかったのに。まあ、また後で良いか。

 

 


 シミュレーターでもらったデータを転送してミッションをこなしてみたが、『虚数空間?』にワープしてそこからアリアの乗っている駆逐艦を探すようだった。

 特に操縦には問題が無さそうだったが、シミュレーターは雑に作ってあるのか、リセットする度に、違う場所に出る。

 

「うげ、今度はパルサーの真上! そんなん、どうやっても死ぬわ!」

 

 正面モニタには『あなたは死にました』という赤い文字。


「ふ、ふふふ……」

 

 やたら難易度が高いが、アタシはこういうのは燃えるんだよね。

 

 もう一回、と思ったところで、いきなり電源が切れた。

 

「なにそれぇ」


「すまんな」


 シミュレーターのハッチが外から開けられ、ぬっと見覚えのある坊主頭が覗き込んできた。


「うえ、は、ハートレー教官! お、お久しぶりですっ!」


 地獄の教官を見ると反射的に背筋が伸びる。

 

「ああ、久しぶりだが、もうオレは教官ではないんだ。そんなに堅苦しく挨拶せんでもいいぞ」


「はあ」


 絶対、罠だ。

 

「罠でも無い」


「うわ、なんで私の心が読めるのでありましょうか!?」


「どうせそんなことを疑ってるだろうと思ったまでだ。それより、アリア=ハーランドの捜索隊に加わったそうだな」


「はい。あっ、いえ、機密事項ですのでお答えできませんっ!」


「心配するな。オレもその捜索隊の一員だ。だから喋っても問題は無いぞ」


「そうでしたか」

 

「しかし、ステラ。オレはもうじき寿命になりそうだからいいが、お前はまだ若い。なぜ志願した?」


「それは――親友の捜索に理由がいるんですか?」


「ふむ……分かった。そうだな、お前はそういう友達想いの奴だったな」


「はい!」


「だが、任務はかなり過酷になるぞ。もうシミュレーターで訓練しているから理解できただろうが、どこに飛ぶか分からぬのでは、手の打ちようが無い。全部、運任せだ」


「ああ、これ、雑に作ってあるんじゃ無くて、え? ホントにこんな感じになるんですか」


「そうだ。やめるなら今のうちだぞ」


「いえっ、ステラが助けを必要としているのに、何もしないなんて私はできません!」


 ステラだって私が遭難していたら、危険があろうとも何かしてくれるはずだ。


「まあ、そうだろうな。よし、なら特訓だ! どんな状況下でも、生存率を上げる操縦をオレが教えてやる」 

 

「お願いします!」




 そうしていよいよ、私とハートレー教官が『虚数空間』に飛ぶ日がやってきた。

 

「準備は良いですね?」


 通信でミーシャ=オクテット中尉が確認してくる。


「構わんが、オレとステラが出ると言うことは、前の一人は失敗したわけか」


「まだ結果は出ていませんが、その可能性が高まりました」


「ふん、お前さんは嘘つきだ、オクテット中尉。そんなことで部下の士気が高まるもんか」


「失礼しました。前のパイロットは失敗です。死体は確認できていませんが、大規模な爆発の状況から(かんが)みて生存の可能性はほとんど無いと思われます」


「――だそうだ。ステラ、止めるなら今だぞ。オレ一人だけでも構わん」


「いえ、行きますっ」


「よかろう。じゃ、出るぞ」


「はい!」


 今助けに行くから、待っててアリア!

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