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第七話 賞金首

 司祭プラークが俺達との同行を希望しているが……


「テントが別々なら、俺は王都まで一緒でも構わないぞ」


 俺はどちらかと言えば賛成である。

 なぜなら道中、モンスターがやたら出てくるこの世界では、怪我をしたときを考えるとやはり回復魔法があった方が便利だ。ポーションもリュックの中に布に包んでたくさん入れてあるが、消耗品だからな。


「それ、女性陣のテントに入れろって暗に言ってるわよね?」


「いやいや、誤解しないでくれ。プラークが外で寝てくれれば、俺は文句は無い」


「それってあなたがテントを一人で独占すると言ってる訳ね?」


「むむ、それは……」


「シン様、それはよくないとネリーも思います」


 俺を慕ってくれている猫耳の妹分にそう言われてしまっては、こちらが折れるしかなさそうだ。

 

「分かったよ。ただし、夜中に変な事をしてきたら、容赦なく追い出すからな」


「ええ、ご安心を。こう見えても私は結婚しておりますので」


 プラーク司祭が左手の結婚指輪を見せてきたが、こういう風習は銀河同盟と全く同じようだ。


「じゃ、決まりね。それじゃ、今日はもう一泊この街に泊まることにして、ここの冒険者ギルドに寄ってみましょう」


「んん? 冒険者ギルドに? なぜだ?」


「情報収集よ」


「この街で『例の』情報が手に入るとは思えないんだが」


 俺達が集めているワイバーンについての情報は南方の国か王都で手に入ると予想している。本命は宇宙船なのだが、今、俺達が手に入れている手がかりはこれだけだ。

 

「でも、駄目元で良いから行ってみましょうよ」


「そうだな。まぁ、行ってみるか」


「では、私どもは神殿の方に立ち寄ってみますので、また宿で」


「ああ」


 司祭コンビと別れ、パデューヌの街の冒険者ギルドに顔を出してみた。


「あんまり人がいないわね」


 中に入ってみると、カンデラ街のギルドより広い造りなのだが、それだけに閑散としているのが目立つ。

 

「まずは掲示板を見てみるか」


「じゃ、私は受付の人に聞き込みしてみるわ」


「わ、私も掲示板を」


 三人で手分けして情報を集める。と言ってもネリーは何を集めるかさえ分かっていないからな。

 

「ネリー、空を飛ぶもの、ワイバーンなんかについての情報があれば教えてくれ」


「分かりました!」


 依頼票は結構な数が溜まっていた。

 俺は右手で右目を少し隠し、スーツを変形させて片眼スコープを出す。


「AI、翻訳は頼んだぞ」


「了解」


 会話と違い、まだ文字の読解については完全では無いのだが、冒険者ギルドの掲示板については、ネリーに協力してもらって、ある程度の解読ができるようになっている。

 

 一つ一つ眺めていると、ギルド職員がまた一つ新しい依頼票の板を掲示板の釘に引っかけた。


「ふうん、賞金首か。あれ? この依頼主は男爵になってるな」


「そうですね。……たぶん、男爵様が晩餐のお誘いの時に言おうとされていたのは、このことをシン様に頼みたかったのではないでしょうか?」


 ネリーが言う。


「そんな気がする」


 男爵も俺達に褒美を渡す場で依頼を頼むのは気が引けたのだろう。別にそこまで遠慮しなくても良かったのに。




「よう、お前ら、見ない顔だな」


 掲示板を見にやってきた他の冒険者が声をかけてきた。

 

「ああ。俺達は昨日、カンデラからやってきたばかりだ」


「そうか。じゃ新入り、先輩のアドバイスとして良いことを教えてやるが、その賞金首だけはやめた方がいいぜ?」


「なぜだ?」


「そりゃ、やっこさんの腕っ節がめっぽう強いからに決まってるだろ。ここの街の冒険者で敵う奴はいねえよ。Aランクの上に、奴は子供の頃から剣の腕の才を見込まれて、高名な剣士を師匠につけて特訓してたって話だ」


「Aランクの腕の立つ剣士か……」


 レーザーライフルを持ち出せば確実に勝てると思うが、ギルドマスターみたいな強者だと油断はできないな。


「もう一つ、理由はあるんだが……ま、『騎士ミーユ様』を見かけたら、大人しくしておいた方が身のためだぜ? 見てくれは良い女だが、融通のてんで利かねえ堅物だからな。ボコられた奴も一人や二人じゃねえ。触らぬ神に祟りなしって奴だ」


「誰が祟ると?」


 横から白い鎧を身につけた女騎士が声をかけた。


「うへっ!? こ、これはミーユ様!!! い、いえ、なんでもありませんぜ。さーて、今日はゴブリン退治、元気に行ってみよー!」


 慌てた様子の冒険者はへこへこしながら去って行ったが、この女騎士が賞金首か。

 見た目はフツー。

 いや、それどころか、綺麗な光沢をたたえた金色に輝く長髪に、翠玉を思わせる瞳。

 見とれるほどの美少女だ。

 

 なぜこんな子が賞金首になるのだろうか?

 

「私の顔に何かついているか? それとも、じろじろと他人様の顔を見るのはぶしつけ(・・・・)だと教わらなかったか?」


「ああいや、すまない。賞金首になるような人物には見えなくてな」


「当然だ。私はやましいことなど何もしていない。それどころか、この街を正そうと日々頑張ってきたのだ。それを、賞金首などと……!」


 怒りで腕をブルブルと震わせた彼女が本当の事を言っているとすれば、ポンスーレ男爵がこの騎士を邪魔に思って排除しようとしている構図なのか……。

 

「ねえ、シン。受付の人が言ってたんだけど、この街にはミーユって言う歩くトラブルメーカーがいるそうよ。凄く美人だそうだから、あなたも気をつけて」


 アリアが忠告にやってきてくれたが、ちょっと気になる部分があった。

 

「いや、アリア、なんで相手が美人だと俺が気をつけないといけないんだ?」


「そりゃあ……あなたって死ぬか生きるかの時に、別に親しくも無かった私とのデートを希望するような人でしょ? 面食いじゃない」


「ぐぐっ……」


 確かにその通りでございます。


 でもっ!

 

 前々からアリアは性格も含めて可愛いなと思っていたわけで、親しくも無いのに唐突にというつもりは無かった。あと、自分が美人だと臆面も無く自覚しているのがさすがだな、アリア君!

  

「はわわ、やっぱりお二人はデートをされるような仲なんですね……」


「あ、いいえ、ネリー、してないわよ。申し込まれたけど、きっちり断ったもの」


「いや、あれは申し込みしたというわけでも……」


 なんだか俺が非常にいたたまれなくなってきた。

 

「はっきりしない奴だな。私はそういう優柔不断な男が大嫌いだ。デートの申し込みをそんな軽い気持ちでするんじゃない。女性に対して失礼だと思わないのか」


 横から全く無関係なのに口を挟んで説教してくる騎士ミーユ様も、なるほど、これはトラブルメーカーだ。

 

「えっと、シン、誰なの、この人?」


 アリアも戸惑った様子で聞く。

 

「噂の歩くトラブルメーカー、賞金首のミーユだ。もちろん、俺とも今が初対面だがな」


「ええ?」


「おかしな紹介をしないでもらおう。あの受付の男は偏見があるのだ。以前、私にセクハラをしてきてな、一発殴ったのをずっと根に持っているのだ」


「うーん、そういうことなら別の人にも話を聞いた方がいいかしら?」


「いや、不要だぞ、アリア。さっきの冒険者もコイツが厄介者だと断言してたし、もう感じでなんとなく分かるだろう」


「ええ、まあ、それは分かるけど……」


「なんだと? 会って二言三言会話しただけで貴様に何が分かる!」

    

「「 まあまあ、落ち着いて 」」


 俺もアリアもどうどうの仕草になるが、その俺達二人の態度が余計かんに障ったらしく、いきり立つミーユ。

 

「いいだろう……そこまで私を厄介者扱いするなら、こちらにも考えがある。決闘だッ! 私と剣で勝負しろ!」


「「「 ええー? 」」」


 なぜそうなる……。

ストックが尽きました……。

ここからは不定期になります。

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