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第二話 青き星の狼

 俺とアリア、それにネリーの三人パーティーで冒険者ギルドへやってきた。

 聖女とプラーク司祭も一緒だ。

 

 冒険者ギルドは、アリアやギルドマスターが守っていたおかげで、ほとんど破壊されていない。怪我人も神殿の方へ運ばれたのか、すっかり元通りになっていた。

 

「おいっ、『素手』の奴らが来たぞ!」


 俺達の顔を見るなり、冒険者の一人が奥に向かって叫ぶ。

 

「その呼び方やめて! 剣を持ってるでしょう」


 アリアも気に入らない様子で、自分の腰にぶら下げている剣を見せた。

 

「じゃあ、正式なパーティー名は何なんだ?」


 特に決めていないが、決めておいた方が良さそうだ。

 

「どうする?」


 アリアと二人で考え込む。

 

 ここはカッコイイ名前を付けたいところだが。

 

「銀河宇宙同盟軍じゃ……ダメよね」


 アリアが言うが、そのまんまだ。


「ダメだろう。だが、駆逐艦ブルーハウンドをこっち風に訳すと、青き猟犬だな」


「うーん、猟犬って呼ばれるのはちょっと私、抵抗があるんだけど」


「狼ならどうでしょう? お二人ともファラド村の出身と聞きましたが」


 ネリーが提案した。

 

「なるほど、ダイアウルフがいる場所だから狼か。青き狼…青狼……青い狼……」


「青き星の狼!」


 アリアがこれだ!と言わんばかりに鋭く言う。

 

「まあ、いいんじゃないか? 俺は賛成だ」


「私もです!」


「じゃ、決まりね。聞いた通りよ。私達のパーティーの正式名は『青き星の狼』だから覚えておいて」


「ああ? 青き星の狼だぁ? 『素手』の方がカッコイイのに」

「バリバリに強えって感じだよな、『素手』」

「『素手のアリア』って語呂が良いし、いかにもって感じじゃねえか」

「スーデ! スーデ! スーデ!」


「死にたいの?」


 アリアが冷ややかな顔で握りこぶしを作ると冒険者達が一斉に押し黙った。

 顔が整った美人が怒るとやっぱり怖い。


「ど、どうも、シンさん、アリアさん。ネリーさんも。ギルド長、三人が来てくれましたよ!」


 そのやりとりにやや引きつった顔を見せつつも、受付のリリアンがギルド長を呼ぶ。

 

「おう、二階で話そう」


 階段を降りてきたギルドマスターが上がってこいと手招きする。

 

「私たちはどうしましょうか」


「あ、プラーク司祭と聖女様もどうぞ、上がって下さい。後でお茶をお持ちしますので」


「そうですか、ではご一緒に」


 ニッコリと笑うプラーク司祭は一癖ありそうな感じもするが、俺が断って良い立場でもないからな。

 

 二階の応接間のソファーにそれぞれが座り、ギルド長がまずは頭を下げた。

 

「今回の一戦では、世話になった。礼を言う」


「頭を上げて下さい、ギルドマスター。軍――冒険者として当たり前のことをしただけですから」


 思わず軍人と言いかけてしまい、内心慌てつつも、しれっと言い直す俺。

 

「軍? どこかの騎士団に所属しているのか?」


「いえ、どこにも所属してませんから」


「そうか。……まあいいだろう。まさかボスがオーガ、それもかなりの上位種だとは、後から聞いてオレも肝を冷やしたぜ」


 ストーンゴーレムを一人で倒したと噂されるこの男にとっても、オーガは強敵だったのだろう。

 まあ実際、しゃれにならないくらい強かったな、あの魔物。

 

「オホン、ンンッ」


 おっと、プラーク司祭がわざとらしい咳をしてきたが、あの約束があったな。

 

「そこはここにおられる聖女様が魔法で」


 持ち上げておく。

 

「ほう? だが、オレが聞いた話では、お前とアリアが光の矢を使って、最後はナイフで仕留めたと聞いたぞ?」


 最後はレーザーライフルだったのだが、スタングレネードの使用直後では目撃者もそう見えてしまったのだろう。

 

「いえ、魔法ですから」


「分かった。オレとしちゃあ、細かい倒し方はどうだっていいんだ。また出たときのために弱点か何かをと思ったまででな」


「それなら、奴は筋力と素早さが尋常では無かったので、接近戦はやめた方がいいかもしれません」


「そうだろうな。ただでさえ、オーガは力が強い。鉄の鎧なんざ、すぐに潰されちまう厄介な相手だ。そいつに殴られてここに平気な顔して出てきやがるお前も、大したもんだがな」


「いえ、かすっただけなので。まともに殴られていたら、僕でも危なかったはずです」


「そうか、なら、自分の体を大事にするんだな。この街を守ってくれたのはありがたいが、死んじまったら、それまでだぞ?」


「ええ、気をつけます」


「さて、今度は聖女様に聞きたいんだが……アノン帝国の大物がなぜこんな辺鄙な街に?」

 

 ギルドマスターが質問すると、聖女は答えず、代わりにプラーク司祭が応じた。

 

「いえいえ、王都からそんなに離れている訳でもありませんし、たまたま巡礼中に……と申し上げたいところなのですが」


 プラークはそこで一度言葉を切って笑顔を消す。

 

「実のところ、天啓なのです。この街に災いが起こりそうだと、半年前に聖女様が仰せになられまして」


「ふん、神の声か。オレは日頃の行いが悪いせいか、そんな物は聞いたことが無いが」


「誰にでも聞こえるという物ではありません。ですが、我々がこうしてここに居合わせたのは神の(おぼ)し召しかと」


「じゃあ、神様にも礼を言っておいてくれ」


「承りました。後で神に祈りを捧げておきましょう」


 プラーク司祭が笑顔で頷いた。


「じゃあ、だいたいこんなところか。おっと、いけねえ、コイツを渡しておかねえとな」


 そう言ってギルドマスターが机の上にいくつか石のかけらを置いた。

 元は球体の形をしていたのか、ところどころ丸みを帯びたかけらだ。

 

「ほう、黒色ですか。これは残念、もしも、砕けぬままの魔石ならば、竜の宝玉にも匹敵する値がついたかもしれませんねえ」


 ニコニコしたままのプラーク司祭が意味ありげな目でこちらを見るが……。

 

「ああ、あのオーガの魔石か」


 俺はそれがオーガから取れた魔石だとようやく気づいた。


「そういえば、魔物にはこれがあるんだったわね。すっかり忘れていたわ」


 アリアもオーガとの一戦ではそんな事を考える余裕も無かったようだ。


「ったく、おめえら、二人そろって抜けたことを言いやがって。持ち逃げされた後で文句を言ったって遅いんだぞ? そこら辺はまだ駆け出しってところか」


「「 はあ、気をつけます 」」


「マックスの野郎が集めてくれてたんだが、あの野郎、かけらを一つ、くすねようと隠しててな。魔法使いに鑑定させたら案の定、懐に入れてやがったんだ。締め上げたら、それだけだって言うし、後は他の野郎が持っていったのかもしれん」


「いえ、かなり凄い爆発で散り散りになったはずなので全部集めるのは無理でしょう。これ、拾ってくれたお礼に、マックスさんに渡してやって下さい」


 俺はかけらの一つをギルドマスターに渡した。


「いいのか? これだけでもうちは金貨十枚の値を付けるぞ?」  

 

「まあ、拾い主が一割もらっていいよな?」


「ええ、それが良いと思うわ」


 銀河同盟のルールならば。


「けっ、好きにしろ。奇特な連中だ。ところで、実はもう一つお前達に伝えねえといけねえことがあってな」


 ギルドマスターの言葉に俺も思わず心構えをしてしまう。


「何でしょう……?」

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