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隊長、魔法が使えるのにワープ装置が作れません!  作者: まさな
第一章 軍人のなすべきこと
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第二十九話 襲撃

 ベッドで眠りについている中、俺はAIの警告で目が覚めた。

 

「警告、警告、急速接近中の熱源反応多数。『大発生』による敵の襲撃と推定されます」


「来たか。アリア!」


 飛び起きて、剣とリュックを持ち出す。


「ええ、行きましょう」


 俺達はコンバットスーツと布服を着たまま寝て、防具はそれだけで済むから、他の冒険者よりは行動が早く起こせる。


「シン様! アリア様!」

 

 ネリーも気がついて起きてきたようだ。

 

「ネリー、お前は部屋にいてくれ。誰かが来たら、必ず側に狼がいないかを質問してからドアを開けるんだぞ」


「分かりました。あの、傷薬は分けてあげてもいいでしょうか?」


「ああ、そうしてくれ。そのために作ったんだ」


「はい!」


 まだ深夜の二時。あたりは明かりも無く真っ暗だが、片眼スコープはもちろん暗視機能付きだ。

 

「最初に、鐘を鳴らそう」


「ええ」


 街には四方の中央部にそれぞれ門が設けられており、その門の近くに緊急警報用の鐘がそれぞれ設置されていた。俺達は一番近い東門へ向かい、縄を引っ張って鐘を激しく鳴らす。

 

「魔物の襲撃だ!」「魔物の襲撃よ!」


「ど、どこだ?!」


 眠りこけていた門番兵士が慌てて周りを見回すが、ちょうどその時、石垣を跳び越えてダイアウルフの一群が次々と街に入り込んできた。

 

「くそっ、これじゃ門を閉じていても意味が無い!」


 剣で狼を切り伏せながら俺は絶望の叫びを上げた。

 これでは封鎖も陣地防衛も極めて困難だ。

 戦術も分散して各個撃破しかなくなる。俺が士官学校の戦術教科で学んだことはまるで役に立ちそうに無かった。

 

「戦えない人は戸締まりをして下さい! 狼がもう街の中に入っています!」


 アリアも周りに警告しながら剣を振るう。

 

「シン! アリア! 遅れて済まん」


 ラドのパーティーが最初に駆けつけてきた。 


「いいや、早かったさ」


「明かりを設置するわ」


 ラドのパーティーの魔術師が呪文を唱え、鐘の近くに光源を設置してくれた。

 これで他の冒険者も戦いやすくなることだろう。明るくなっても俺達の暗視装置は自動で感度を調節してくれるので全く問題なしだ。

 

「しかし、お前ら、一番乗りか? 門の側で見張ってたのか?」


 ラドが聞いてくる。


「いいや。ちょっと気になって見回りに来ただけだ」


「大した運の持ち主だ。くっ、ラディッシュ! ジェシーの守りを頼む」


「ちぃ、ラド、人任せにするんじゃねえ、お前も囲め! 数が多すぎだ。壁を背にして戦うぞ」


 この会話の間にも次々と狼が石垣を跳び越えてやってくる。

 

「そんな。いったい、何匹いるの……?!」


「数えてるヒマなんてねーぞ、ジェシー! 一発、デカい魔法でやってくれ」


「無茶言わないで。街の中なのよ?」


「いいからやれって。このままじゃ、どうにもならん。数を減らさないとやられるぞ」


「分かった。なら、電撃を使う。巻き込んでも恨まないでね」


「おい、頼むぞ。こいつら、そんな余裕がある相手じゃねえし!」


 ラドが剣と盾でダイアウルフを押し返すが、同時に三匹となると彼でも厳しそうだ。

 俺やアリアは、スーツの防御力に任せて噛まれても平気なんだけど。


「シンとアリアが邪魔ね……そこ、どいて、下がってくれない? 呪文の効果範囲が取れないわ」


「構わない、俺とアリアごとやってくれ。電撃なら耐性がある」


「お守りがあるのね? なら遠慮無く行くわよ。――白き巨象に乗りし天帝インドラよ、その威光を矢となし、我が敵を滅ぼさん! サンダーボルト!」


 落雷が起こり、俺に直撃したのでちょっと焦ったが、すでにヘルメット状態にしてあったので問題は無い。


「うぉい、本気で直撃させる奴があるか! 大丈夫か、シン!」


「問題無いぞ。威力が思ったより強くて焦ったが」


 俺の周りのダイアウルフが十数匹すべて死体となって横たわっている。大した威力だ。

 

「良かった。私も焦ったわ。思ったよりもここの環境魔力が強まっているみたい」


 魔法の威力が上がっていると言うことか。なら、一度に倒せて便利だし、俺も使ってみよう。

 

「――白き巨象に乗りし天帝インドラよ、その威光を矢となし、我が敵を滅ぼさん! サンダーボルト!」


 誰もいない空間を狙ったつもりが、少しそれてアリアに直撃した。

 この呪文、落雷と同じで、高い物に誘導されるようだな。気をつけて使わないと味方を巻き込んでしまいそうだ。

 

「ああっ! 私のオリジナル上級呪文をパクった!?」


 おっと著作権があったのか? それはまずいことをした。

 

「何がオリジナルだ。ちょっと言霊を入れ替えていじっただけのカスタマイズ呪文だろうが」


 ラドが文句を言う。


「それでも苦労して見つけたのよ。まあでも、使いたいならご自由に。とにかく狼を倒してくれないと、私も生き残れるかどうか怪しいものだわ」


 許可をもらえたのでもう一度使う。

 と、視界に数字と文字が浮かんだ。


 

 MP 125 / 149

 

 

 なんだこれ?

 

「AI、右下のMPって何の表示だ?」


「もう一度言って下さい、質問の意味が理解できません」


「MPというのはマジックパワー、魔力量残量のことよ」


 ジェシーが聞こえたのか、教えてくれた。

 そういえば、ナノマシン・タイプXの翻訳機能のせいで、今は現地人にもこちらの会話が筒抜けなんだよな。AIの声は聞こえないみたいだが、ちょっと面倒だ。

 

 もう一度、雷撃呪文を使ったが、12ポイントの消費だった。

 そうすると使えるのはあと九回が限度だな。

 

 敵が集まったタイミングで使うとしよう。

 

「それより、シン! お前、今、噛まれただろう。平気なのか?」


「気にしなくていい。問題無い」


「けっ、化け物みたいな体をしやがって。布の服で戦う戦士なんざ、初めて見たぜ」


 戦っていると、他の冒険者もやってきて、一人当たりの狼の数は少し減った。

 だが、並の冒険者達には多すぎる狼はキツいようで、やられる者も何人か出てきてしまった。

 

「うわあっ、く、来るなあ」


「今、助ける!」


 スーツの人工筋肉を使って大きく跳躍し、冒険者を襲っている狼を『単分子高周波ブレードナイフ』で切り裂く。剣よりこちらの方が威力があるので確実だ。リーチの長さでは剣の方が上なので、使い分けている。

 

「た、助かった。礼を言う。いてて」


「ポーションだ。これを使え。建物の壁を背に戦うんだ」


 ラド達の戦い方を伝え、すぐに別の冒険者の援護に向かう。

 数を倒すことも大事だが、先に味方が減ってしまっては後が苦しい。


「おい、アーサーからの伝令だ! 西門が手薄になっている。援軍を寄越してくれ」


「馬鹿野郎! 見ての通り、こっちもいっぱいいっぱいだ」


 ラドが怒る。


「だが、向こうは家にまで入り込もうとしてるんだぞ」


 どうしたものか。

 

「私が西門に行くわ」


 アリアが一人行けば、大きな戦力になるだろう。

 

「分かった、ここは俺が持たせる。行ってくれ」


「ええ。無理はしないでね、シン」


「ああ、そっちもな」


 こんなことならレーザーライフルも持ってくるべきだったかと思ったが、貫通する武器はこの乱戦ではとてもじゃないが使えない。

 

 俺はひたすら剣とナイフを振るい続けた。

次話は明日19時投稿予定です。

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