第二十三話 剣士の道
剣がまるで使えない俺達は、剣士ダインに教えを請うている。
だが、彼が不快そうに素振りは止めろと言ってきた。
「あの、ダイン先生、やる気はありますし、もっと真面目にやるので、せめて基本の型だけでも教えてください」
「分かってる。分かってるから敬語はやめろ」
「はあ」
それでも年上にタメ口ってのは話しにくい。
「お前らは剣士としてはド素人だし、なるほど、確かに剣は振ったことが無いようだ。だがな」
「んん?」
「冒険者としては長いのか? 前は何の武器を使っていた?」
「ああ……、この間、冒険者になったばかりなんですが、村でそれなりに鍛えていたので」
士官学校では毎日のように体力トレーニングをやらされたからなぁ。
「そうか。体もまだまだだが素人よりはずっとマシだ。それに背筋もきちんと伸びている。飲み込みも良さそうと来た。ちっ、もっと長く金をもらえるかと思ったんだが、あんまり教えることは無さそうだぞ?」
なるほど、報酬が少なくなるダイン先生としてはそこが不満か。
だが、早く剣が習得できるとなれば、俺達としてはありがたい。
「そうですか」
「同じ振り込みも筋肉がつくまでは、やり過ぎると腕を壊しちまうからな。だから今日は他の型を教えてやろう。素振りはまた明日だ」
「「 はい 」」
魔物用に、低いなぎ払いを教わった。
「犬や狼相手ならこれが一番役に立つ。一度に二匹三匹をやれるからな。ただし、連中が飛びかかってくるタイミングで出すんじゃないぞ?」
「はあ。そのタイミングが分かればいいんですが」
「それは慣れれば分かる。ああ、それと、ステータスの使い方は知ってるか?」
「ステータス?」
意味としては分かるのだが、現地人の言う意味はちょっと謎だ。
「分かって無さそうだな。ステータス、オープン! こう唱えてみろ」
「「 ステータス、オープン? あっ? 」」
空中に文字が浮かび上がり、レベルや筋力と言った文字や数字がずらずらと出てきた。
名前:シン=クラド
職業:兵士士官
年齢:17
レベル:12
状態:健康
能力値:
筋力 12
俊敏 14
耐久 13
知力 21
魔力 20
器用 18
経験値:1252
次のレベルまで:148
カルマ:
ライト A
ロウ B
「それがお前らの強さ、ステータスだ。レベルの低いうちは、犬っころ相手でも、数には気をつけろ。囲まれたら逃げるのも一苦労だぞ」
「「 分かりました 」」
どうやらナノマシン・タイプXの標準機能らしい。
いったい、何のために?
まるでゲームのようだが、単なる身分証明とは思えない。
兵士の訓練教導用……と考えてしまうのは、俺が兵士だからだろうか。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
昼時になると、ダイン先生は「疲れた。今日はもうやめだ。帰って良いぞ」と言い残して家の中に戻ってしまった。ちょっとダメな感じの大人だ。
まあ、それでも今日は色々教えてもらったので不満は無い。
「じゃ、これからどうしましょうか。自主練をする?」
アリアが聞いてくる。
「いや、自己流でやって変な癖がついても困るし、肩の筋肉がちょっと限界だからな。ギルドに行って金になる仕事を探した方がいいと思う」
「それもそうね」
昼飯を食べた後でギルドに寄り、リリアンにアドバイスを聞いて初心者向けの討伐依頼をこなすことにした。
ゴブリン狩りだ。
さすがに、まだ剣での実戦は自信がないので、スーツの格闘で片を付ける。
「こいつらは省エネモードでも余裕だな。オフでもいけるかもしれない」
「でも、あまり無理はしないで。救急キットはあるけど、致命傷だと危ないわ」
「そうだな」
リリアンの話では魔物の分布はだいたい決まっているそうで、この辺りにはダイアウルフも出てこない。狼の方が金にはなるが、スーツのエネルギー残量も考えると、この辺で大人しく狩りをやっていた方がいいだろう。
剣が使いこなせるようになれば、冒険者としても行動に幅が出てくるはずだ。
銀河宇宙同盟軍所属の兵士としては情報収集をすべきところなのだろうが、新しい街に行くにしても、ある程度の冒険者の技能を身につけておかないとこの先で詰む可能性もある。
それから、タイプXの解析もできればやっておきたいところだ。
誰が何のために創ったのか?というのは調査も難しそうだが、どのように使いこなせるのか?という部分については、現地人がよく知っているようだし、こちらでは魔法というものが一般的に使われているらしい。
「よし、戦闘終了っと」
ゴブリンを倒して、すぐにスーツのスイッチをオフにする。
「待ってシン! 右にも新手がいるわ!」
「んん? うおっ」
矢持ちのゴブリンだった。そちらを見たときにはもう矢を放っており、その鏃が頬をかすって顔を切ってしまった。ゴブリンの方はアリアがすぐに倒してくれたが、油断した。
「大丈夫?」
「ああ、かすり傷、と言うにはちょっと深いかな、いてて」
「手で押さえて、すぐに戻りましょう。救急キットで治療しないと」
「そうだな」
そのまま宿まで戻ると、ネリーが慌てて薬草を取り出した。
「シン様、これを塗ってください!」
「いやいや、薬はちゃんとあるから」
「いいから、早く」
「ええ? まあいいか」
気が済むのなら、ネリーに治療させてやろう。
「ちょっと……」
アリアが救急キットの箱を出して、それはどうなのという顔をしてくる。
「これで、後は包帯を」
「それは私がやるわ。でも、大丈夫? 滲みたりしない?」
「いや、大丈夫だ。思ったより痛みが引いたな」
「ええ? 念のため、測定器でも見ておきましょう」
アリアが簡易測定器を俺の傷にかざす。
「裂傷、殺菌をしてください。それと傷口にナノマシンが集中して増殖しています」
「ええ? おかしな事にならなきゃいいけど」
消毒をしてiPS絆創膏を貼っておいたが、微妙に不安だ。
「大丈夫です。それくらいの傷なら明日には治ってると思います」
「ネリー、これは三日以上はかかるわよ?」
俺もアリアの見立てに賛成だ。
「でも、薬草も塗っていますから」
「効くのかねえ?」
「効きます!」
ネリーがはっきりと断言したが、普段は大人しい感じの彼女にしては珍しく自信満々だな。
さすがに食事で口を動かすと痛むので、食べるのに苦労した。
さらに翌日、部屋の鏡を見ると、本当にすっかり傷が消えていたのでびっくりした。
「どうなってるんだ……?」
簡易測定器でもチェックする。
「傷口を大量のナノマシンが覆っています。治療用ナノマシンと推測。以後、同型は治療用……」
「待った。まだ効果は分からないから、タイプXにしておいてくれ」
「了解。以後、同型はタイプXと呼称します」
「それと、薬草の効果も詳しく調べた方がいいだろうな」
ネリーがどこからか持ってきて置いてくれている薬草。
それを拾い上げ俺はもう一度、測定器にかけてみることにした。
次話は明日19時投稿予定です。




