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隊長、魔法が使えるのにワープ装置が作れません!  作者: まさな
第一章 軍人のなすべきこと
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第二十二話 タイプX

 未知のナノマシンの体内増殖。

 体が熱く、うなされ、このまま死んでしまうのではと気が気ではなかったが、その日の夜になると熱も下がり楽になった。

 

「シン様、お水です」


「ああ、ネリー、ありがとう」


 頭にひんやりした布も置いてくれ、かいがいしく看病してくれた。ネリーがいてくれて助かった。

 水を飲むため、起き上がる。


「あっ、まだ休まれていた方が」


「いや、楽になってきた。たぶん、もう大丈夫だ」


 むしろ、体の調子が前より良くなった感じがする。

 

「アリア、そっちはどうだ? アリア?」


 呼びかけて応答がないので、疑問に思ったが、そういえば俺は今、スーツを着ていないし、スーツのスイッチも切ったままだった。

 

「あれ? じゃ、俺は今、どうやってネリーと話してるんだ?」


「?」


 ネリーはきょとんとしているが……。

 

 ノックがあった。

 

「私だけど、入っていい?」


 アリアだ。


「ああ、どうぞ」


「調子はどう? 私は熱も下がって動けるようになったわ」


「そうか。こっちも、元通りだ」


「じゃあ、やっぱり一時的な適応障害だったみたいね」


「だと良いんだがな。しかし、なんでナノマシンがここにあるんだ?」


「さあ? 共和連合の誰かが不時着してそれが広まったのかしら?」


「だが、種類が違ったみたいだぞ。こっちのは簡易測定器が見逃すほど小型だ。それに共和連合のナノマシンは健康維持しかできなかったはずだ。だからこそ連中だって戦闘には専用のパワースーツを使う」


「素手でブライさんやあのギルドマスターみたいに動かれたら、とても敵わないわね」


「ああ。だがどうも、妙だな。こちらのナノマシンの方が遙かに高性能のような気がするが、科学技術はどう見たって下だ」


「そうね。ひょっとしたら、どこかに宇宙船があるかも。ナノマシンを散布した張本人が」


「そうかもしれないな……」


「とにかく、情報を集めましょう」


「そうだな。空の上からやってきた人間が、俺達の他にもいるはずだ」


「ネリー、あなたは何か知ってる?」


「さあ、申し訳ありません、そんな話は聞いたことがないです」


「そう。あれっ? スーツの電源、入れているの?」


「いいや。このタイプXのナノマシンのおかげで、翻訳もしてくれるみたいだ」


 試作機はよくタイプXと呼ばれると聞いたことがあるので、このナノマシンは共和連合のナノマシンとは区別するため、タイプXと呼ぶことにする。


「へえ。凄く賢いマシンなのね。記憶領域は量子メモリーかしら? あっ、じゃあ、AI、型番を言いなさい。……ダメか」


 アリアが呼びかけてみたが応答は無い。


「自動翻訳できるくらいなら、応答しても良さそうなもんだが」


「きっと名前や交信手順(プロトコル)が違うのよ。まあ、またそれはヒマなときに試してみれば良いわ」


「そうだな。飯、行くか」


「ええ。でも、シン、先に着替えてね」


「当たり前だろ」


 俺も全裸で外を歩こうとは思わんわ。そんな趣味は無い。


「あれ? スーツが無い」


 ベッドの側に置いたはずだが。


「あ、シン様、あの下着は洗って干してあるので今、持ってきます」

 

 スーツはネリーが水洗いして干してくれていたようだ。

 勝手に持ち出されたのは不安になるが、彼女も悪気があってのことでは無い。

 認証があるから、銀河宇宙同盟の兵士しか使えないし。もちろん、水洗いOKの仕様だ。

 

「うっ。スーツって、こっちの人たちには下着に見えるのね……」


 アリアがそれを着ていた自分がどう見られたのかを想像したのか、顔を赤くする。


「いや、それは俺達が布の服の下に着込んでたからだと思うぞ」


「そうだと思いたい……」


 夕食は三人で普通に食べた。

 ナノマシンが肉の中に入っていようとも、一度『感染』したらもう気にすることもいらない。怖い物なしだ。




 翌日、冒険者ギルドのリリアンに武器屋を教えてもらい、剣を買うことにした。

 ナノマシン『タイプX』があれば、きっと凄いことができる、はずだ。

 

 宿代や食事代も考えて、まずは二百ゴールドの安物の剣を買ってみた。

 高い剣を買った後で、やっぱり使えませんでしたじゃ、無駄遣いだからな。

 

「おお、これが剣か……!」


 ヴァーチャルゲームで遊んだことはあるが、実物を持ったのは初めてだ。

 初心者でも扱いやすいとオススメされたショートソードだが、それでも結構な重さだ。

 測定器では1.2キログラムと出た。

 ま、レーザーライフルよりは軽いから、片手で振り回せる。

 

「よっ、ほっ、うっ! いって!」


 ちょっと試しに振り回してみたが、勢いが余って自分の体に当たってしまった。


「ちょっと、大丈夫!? シン」


「ああ、スーツがあるから大丈夫だ」


「いくらスーツでも電源が入ってない時は切れるかもしれないし、気をつけてよ」


「ああ」


「はっはっ、なんだ、Cランクと言うからもっと使えるのかと思ったが、まるきりド素人だな」


 武器屋の店主も苦笑する。

 

「あの、使い方を教えてくれませんか」


 アリアがお願いしてみたが。


「それなら、剣術道場へ通ってくれ。握りくらいならオレでも教えてやれるが、剣は基本からしっかりやっておいた方が生存率もいいぞ?」


「確かに、剣術は教えてもらわないと、さっぱりだな」


「そうね。コンバットスーツの格闘パターンにも入ってないでしょうし」


 この街にも一つだけ、小さな剣術道場があると聞いたので、そこに行ってみた。


 ただし、ネリーは剣士には向かないだろうと判断して、連れてきてはいない。

 彼女にはお小遣いを渡して、自由に遊んでいろとアリアが指示していたが、ネリーは「部屋の掃除をしています!」と言っていた。真面目な子だな。

 

 

「こんにちは。誰かいませんか?」


「おかしいな。道具屋の向かいの路地を真っ直ぐと言ったら、やっぱりここだよな」


「ええ。待って、奥に人がいるわ」


 アリアがスーツの電源を入れて赤外線熱分布画像(サーモグラフィー)で探したようで言う。

 奥を覗き込むと、ベッドに寝転がっている中年男がいた。

 

「ああ、いたいた、うっ、酒臭いな……」


「寝てるわね……どうしましょうか?」


「寝てるなら仕方ない。出直すか、他の人を紹介してもらおう」


「そうね。酒にだらしない人だと当てにならなそうだし。行きましょう」


「待て、確かにオレは酒にはだらしないが、剣の腕は確かだぞ」


 聞こえてしまったようだ。

 

「そうですか、それは失礼。それで、初心者向けの剣術道場をやっていると聞いてこちらにやってきたのですが……」


「ああ、教えてるぞ。まあ、道場って程のことは無いな。お前さん達みたいな、ひよっこ(・・・・)相手にたまーに稽古を付けて小遣い稼ぎしてる程度だ。オレも本業は冒険者だからな」


「そうですか。ちなみに、料金はどれくらいで?」


「二人で一日百ゴールド、それ以上は負けてやらんぞ」


「ああ、安いな」

「安いわね」


「何ぃ? 生意気なガキ共だ。ひょっとして貴族か?」


「いえ、違いますけど」


「なら、馬鹿丁寧な敬語なんて使うんじゃねえよ」


「ああ、なるほど、それでか……」


 ギルドの受付でも貴族と思われてしまったが、言葉遣いが原因だったようだ。

 

「で、教わるのか、教わらないのか? 前金で頼むぞ」


「じゃあ、お願いします」


「よし。じゃあ、裏に来い。剣の握り方は誰かに教わったか?」


「いいえ」


「なんだ、そこからか」


「ええ、まるきりの初心者なので」


「まあいい、その方が長く教えられるから、オレも金になるしな。いいぞ、握り方からちゃんと教えてやろう」


 広めの裏庭で、剣術を教わった。

 彼の名前はダインと言うそうだ。

 あごひげが伸び放題でいい加減な感じだが、とにかく剣を誰かに教えてもらわないとこちらは話にならないからな。

 

「剣は(つば)のすぐ下を利き手で握れ。間は開けるんじゃ無いぞ。そうすれば、こうやってすぐ両手に持ち替えができる」


「なるほど」


 実演してくれながら説明してくれるので分かりやすい。

 

「それと、初心者なら適当に振り回したりするのは止めろ。勢いがつきすぎて自分の体を切っちまうぞ」


「ええ、それはもうやりました」


「はは、初心者は必ず一回はやるからな。だから、まずは素振りだ。基本の正面叩き込みだけ、まともにできりゃ、あとはなんとかなる」


「はあ」


「疑ってるな? いいからやってみろ。こうだ」


 正面に剣を構えての振り下ろし。剣道で言えば、面!だろうな。

 

「肘を曲げるな! 肩で動かせ。遠心力があるから大きく振り回す方が威力が出るぞ」


「なるほど」


 学があるようにはとても見えないのだが、遠心力の概念を理解しているとは、意外と理論派のようだ。

 

 だが、繰り返し振っていると、すぐに腕が疲れてきた。

 

「ちっ、もういいぞ」


 不快そうにダイン先生が言う。

 見込みが無い、とか?

本日二話目です。次話は明日19時投稿予定です。

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